主病棟 | 心房中隔欠損は先天性心疾患の中では頻度が高く、出生児の約1500人に一人の割合で発症します。 |
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心房中隔とは心臓の部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)のうち、右心房と左心房の間を隔てる心筋の壁のことです。心房中隔欠損は、生まれたときから、この壁に孔が開いている状態です。先天性心疾患の中では頻度が高く、出生児の約1500人に一人の割合で発症します。胎児の時には、胎盤から取り込んだ酸素を含んだ血液を循環させるために、誰もが心房中隔には孔(卵円孔)があいておりますが、出生直後に閉鎖し、ただのくぼみ(卵円窩)になってしまうのですが、心房中隔欠損の患者さんでは生まれたあともこの孔が残っている状態です。 心房中隔欠損は卵円窩以外の場所に孔があいている場合もあり、場所によって4つに分類されています。最も頻度が高いのは、心房中隔の壁の真ん中である卵円孔の位置に空いているもの(二次孔欠損)で、孔の大きさが38㎜未満のものは、カテーテルで閉鎖することができます。
正常な場合は、体循環(心臓から動脈を介して全身に血液を送る循環)の血流量と肺循環(全身から静脈を介して心臓に戻り肺に向かう循環)の血流量は等しいのですが、心房中隔欠損が存在すると左心房から右心房に血液が流れてしまい、右心房や右心室、そして、肺の血流量が増えて慢性的な負担が生じてしまいます(下図参照)。心房中隔欠損は生まれつきの疾患ですが、通常、乳幼児期にはほとんど症状は無く、心雑音も弱く、気がつかない事があります。幼児期や学童期の検診などで発見される事が多く、30~40歳代以降になってから、心不全症状が出現したりします。心不全の症状として、疲れやすい、運動すると息切れしやすい、風邪や肺炎等の呼吸器系の疾患になりやすいなどが挙げられます。また、心房に過度の負担がかかることによって心房細動などの不整脈が生じやすくなったり、下肢の静脈に生じた血栓が心房中隔欠損を通じて体循環へ流入し脳梗塞などの塞栓症を起こしたりします。
このため、心房中隔欠損があり心臓への負荷を伴う症例では閉鎖術が必要です。
心房中隔欠損を通じて、左心房から右心房へ血液が流入する。右心房、右心室、肺動脈の血液量は増加し慢性的な負荷となる。
カテーテル治療に用いる閉鎖栓
イラスト提供:Abbott社
イラスト提供:Abbott社
病室に戻ってから、6-7時間ベッドで安静にした後、カテーテルを挿入した大腿部の止血を確認後、起き上がって歩くことができます。
経過が順調であれば、治療2日後に退院となります。治療前より血液のかたまり(血栓)ができることを予防する薬(アスピリン、クロピドグレル、リバーロキサバンなど)を内服していただきますが、治療後も最低6ヵ月間は服用が必要です。
最初の2-3日間は、閉鎖栓の脱落のリスクが高い時期ですので、胸に圧力が加わる動作(せき込み、いきむ、嘔吐など)はなるべくしないようにして下さい。また、退院後も、 閉鎖栓が心臓内で安定するまでの約1ヶ月間は、激しい運動は避けてください。胸部を強打したり、転んだり、ボディーコンタクトのあるスポーツを行ったりした場合、閉鎖栓が心房中隔からはずれ、外科手術によって取り出すことが必要となることがあります。
また、カテーテル治療特有の合併症として、閉鎖栓による心穿孔(頻度0.05-0.28%)があります。これは、心臓の拍動に伴い閉鎖栓により心臓の壁に負担がかかり、心臓に傷がつき、それがひどいと孔を生じてしまう現象で、カテーテル術後数か月以内に起こることが多いと報告されています。これが生じると致死的となることがあるため、頻度は低いものの注意が必要な合併症です。
可能性のある有害事象は以下の通りです。
脳梗塞は脳の血管が詰まったり狭くなったりすることで血流が悪くなって起こります。脳梗塞は、原因に応じて主に以下の4つに分類されます。
心臓は肺と全身に血液を送り出すポンプのような働きをしています。上の部屋を心房、下の部屋を心室といい、それぞれ左右にわかれています。右心房と左心房の間は心房中隔という壁で分けられています。生まれる前の胎児の時には、胎盤から取り込んだ酸素を含んだ血液を循環させるために、誰もが心房中隔に孔(これを卵円孔といいます)が空いています。この卵円孔は、通常は出生後数週間から数ヶ月以内に自然に閉鎖しますが、4人に1人は卵円孔が開いたままの状態であり、これを卵円孔開存といいます。卵円孔開存は非常に頻度が高いのですが、卵円孔開存があっても身体に悪影響を及ぼしていない患者さんでは治療は不要です。しかし、卵円孔開存を有する患者さんの中には、運動や咳、排便などで静脈圧が高まると、右心房から左心房に血液が直接流れ込み、静脈にできた血栓が卵円孔を通過し脳に達することで脳梗塞や一過性脳虚血発作を引き起こすと考えられており、これを奇異性塞栓といいます。その他に、卵円孔開存は片頭痛、潜水病などとの関連も認められています。
イラスト提供:Abbott社
卵円孔開存とは出生後も卵円孔が閉鎖せずに右心房と左心房の間に交通がある状態である。卵円孔を通じて、静脈にできた血栓が動脈に入り脳梗塞などを引き起こすことがある。
入院期間は通常3泊4日です。治療は血管カテーテル室もしくはハイブリッド手術室(カテーテル治療のための手術室)で、全身麻酔または局所麻酔+鎮静剤を用いて行います。カテーテル台の上に仰向けになっていただき、消毒を行った後に、足の付け根の血管(大腿静脈)からカテーテルを入れます。卵円孔開存の詳細な評価のため、経食道心エコー(胃カメラのように喉から食道に挿入し心臓を観察できるエコー)や心腔内心エコー(大腿静脈から心房、心室に挿入し心臓を観察できるエコー)を用います。その後、図のように閉鎖栓とデリバリーシステムを用いて、卵円孔開存を閉鎖します。麻酔を含めた手術の所用時間は2〜3時間です。
AMPLATZER PFO Occluder
(閉鎖栓)
イラスト提供:Abbott社
閉鎖栓を大腿静脈より挿入し卵円孔を通して心房中隔を挟み込むように留置し、閉鎖します。
病室に戻ってから、6-7時間ベッドで安静にした後、カテーテルを挿入した大腿部の止血を確認後、起き上がって歩くことができます。
経過が順調であれば、術2日後に退院できます。治療前より血液のかたまり(血栓)ができることを予防する薬(アスピリン、クロピドグレル、リバーロキサバンなど)を内服していただきますが、治療後も最低12ヵ月間は服用が必要です。12か月以降に抗血栓薬を継続するかどうかは循環器内科、脳神経内科医で構成されるブレインハートチームで個々の症例を判断いたします。
留置してから最初の2-3日間は、閉鎖栓の脱落のリスクが高い時期ですので、胸に圧力が加わる動作(せき込み、いきむ、嘔吐など)はなるべくしないようにして下さい。また、退院後も、閉鎖栓が心臓内で安定するまでの約1ヶ月間は、激しい運動は避けてください。胸部を強打したり、転んだり、ボディーコンタクトのあるスポーツを行ったりした場合、閉鎖栓が心房中隔からはずれ、外科手術によって取り出すことが必要となることがあります。
また、カテーテル治療特有の合併症として、閉鎖栓による心穿孔(頻度0.1%未満)があります。これは、心臓の拍動に伴い閉鎖栓により心臓の壁に負担がかかり、心臓に傷がつき、それがひどいと孔を生じてしまう現象で、極めてまれですが、これが生じると致死的となることがあるため、頻度は低いものの注意が必要な合併症です。
可能性のある有害事象は以下の通りです。
左から、
脳神経内科秋山教授、循環器内科田邉准教授、出雲准教授、麻酔科坂本教授、脳神経内科伊佐早講師。
それぞれの専門家が一致団結して治療しています!