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脳卒中センター

脳卒中センター

ご挨拶

山野 嘉久(教授)

センター長

山野 嘉久(教授)

脳卒中は日本人死因の上位を占め、一命をとりとめたとしても、しばしば重い後遺症を残し、要介護状態となることの多い病気です。脳卒中になっても後遺症を最小限に食い止めるためには、直ちに脳卒中センターに救急搬送してもらい、専門的治療を開始することが重要です。発症4.5時間以内の脳梗塞では、点滴で血栓を溶かす超急性期血栓溶解療法を、また血栓溶解療法だけでは溶けきれない大きな血栓による脳梗塞では、ステントを用いた機械的血栓回収療法(血管内治療)を行うことができます。
脳の血管が詰まった瞬間から、脳の細胞は時々刻々と死滅して行き、梗塞の範囲は広がっていきますので、これらの治療は1分を争って行う必要があります。迅速かつ的確な診断のもと、直ちに治療を開始する為には、高度に訓練された多職種チームによる診療体制の存在が不可欠です。
このような体制を24時間365日備えている施設は脳卒中センターとよばれ、更に複数の合併症を有する方や高難度の脳神経外科手術にも対応できる施設は包括的脳卒中センターと呼ばれています。聖マリアンナ医科大学病院脳卒中センターは、脳卒中治療に精通した医師、看護師、専任のリハビリテーションスタッフを擁する、脳卒中患者専用の治療室である「脳卒中ケアユニット(SCU)」、厳重なリスク管理のもとに急性期からリハビリテーションを開始することのできる「病棟リハビリテーション室」を有し、包括的脳卒中センターとして診療を行っております。

脳卒中とは?

脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるため脳の細胞が障害を受け機能障害を起こす病気です。現在、我が国での患者数は約150万人、毎年25万人以上が新たに発症していると推測され、死因の第3位、寝たきりの原因の第1位を占める疾患です。今後も急速な高齢化、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の増加により、脳卒中の患者は2020年には300万人を超すとされています。

脳卒中臨床病型の診断

この脳卒中ですが、脳の血管が破れて出血する病態を脳出血(出血性脳卒中)、脳の血管がつまる病態を脳梗塞(虚血性脳卒中)と大別されます。1960年代には脳出血が多かったですが、近年は脳梗塞が3/4を占め圧倒的に増加してきています。

また、脳出血は脳内出血とくも膜下出血に、脳梗塞は汎用されているTOAST(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment)分類により、詰まる血管の太さやその詰まり方により‟ラクナ梗塞”、‟アテローム血栓性脳梗塞”、‟心原性脳塞栓症”、‟他の確定した原因による脳梗塞”、更には十分な精査にもかかわらず塞栓源が見つからない‟潜因性脳梗塞”と更に細かく分類されます。特に潜因性脳梗塞については、大多数が従来の検査法で検出が困難な潜在性心房細動を原因とする脳塞栓症ではないかと注目されており、再発防止の治療方針を決定する上で、この潜在性心房細動を如何に検出するかが重要な問題となっています。

ラクナ梗塞 脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと分岐していきますが、この細い血管の狭小化により、詰まってしまうのがラクナ梗塞です。このラクナは小さな空洞という意味であり、高血圧が主な原因です。
アテローム血栓性脳梗塞 アテローム性動脈硬化で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を進展させる高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が主因です。
心原性脳塞栓症 心臓内で作られた血栓が、血流を介して脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。不整脈の1つである心房細動が主因であり、この心房細動は高齢化により増加してきています。

他の確定した原因による

脳梗塞

アテローム硬化以外の血管病変(非炎症性、炎症性)、血液凝固異常、悪性腫瘍、血管攣縮、経口避妊薬、片頭痛、脳静脈・静脈洞血栓症などが原因で起こる脳梗塞です。

潜因性脳梗塞

通常の検索では明らかな原因が同定できない脳梗塞ですが、2つ以上の原因が同定できない、不完全な検索で終わっている脳梗塞も、ここに分類されます。

脳卒中の検査

虚血性脳卒中に対する抗血栓療法は臨床病型により異なり、わが国の脳卒中治療ガイドラインにおいても心原性脳塞栓症は抗凝固療法が、非心原性脳梗塞は抗血小板療法が各々Grade Aで推奨され、脳梗塞の病型診断はきわめて重要です。このため臨床病型の確定診断のためには様々な検査が施行されます。

脳卒中が疑われ受診された場合、まずは脳出血と脳梗塞との大別のために頭部単純CT検査が行われます。特に、これで脳梗塞が疑われた場合には、禁忌事項がなければ2005年10月から承認された超急性期虚血性脳卒中に対する経静脈的血栓溶解療法や脳血管内治療法を1分でも早く迅速に施行することになります。

これらの血行再建術を行うとともに、主に塞栓源検索の目的に胸部単純X線、心電図、ホルター心電図(24時間、14日間)、非侵襲的前胸部貼付型テレメトリー式心電送信機Duranta®、頭部MRI、頭部MRA、頭部CTA、頭部血管造影、脳SPECT、頸動脈超音波、経胸壁/経食道心臓超音波、下肢静脈超音波、経頭蓋超音波、経口腔超音波、大動脈CT/MRA、皮下植込型心臓モニタReveal LINQTMなどの各種検査を行います。

  • 超音波検査の紹介
  • 経口腔頸動脈超音波検査Transoral carotid ultrasound; TOCU
  • 非侵襲的前胸部貼付型テレメトリー式心電送信機Duranta®
    皮下植込型心臓モニタReveal LINQTM
    ➡塞栓源が不明な潜因性脳梗塞の大多数は未検出の塞栓性疾患、特に高齢者では潜在性心房細動からの脳塞栓と考えられています。この潜在性心房細動を検出するために従来の短時間ホルター心電図では検出率が低く、近年、欧米を中心に皮下植込み型心電計(イベントレコーダー)を用いられるようになっています。この心電図モニタリング期間が長い程、脳梗塞後の潜在性心房細動の検出率が高くなることがCRYSTAL-AF試験、EMBRACE試験などで明らかとなっています。これらの結果を受け2016年9月1日より本邦でも皮下植込み型心電計Reveal LINQTM(日本メドトロニック社)が潜因性脳梗塞例に対して保険適用となりました。また皮下に植込む必要のない体表貼付式あるいはベルト巻付式の体外装着型長時間心電図記録装置も開発され、潜在性心房細動検出が試みられ、適切な脳卒中再発防止策がとられるようになっています。
    Duranta®はこの潜在性心房細動を非侵襲的に検出するための超小型(縦3.51cm×横7.84cm×幅1.47cm)の軽量(35g)テレメトリー式心電送信機です。詳細はホームページをご覧ください。

脳卒中の急性期治療

脳梗塞の急性期治療は、内科的な治療が中心となります。具体的には血栓を溶解する薬(経静脈的血栓溶解療法)、脳を保護する薬(脳保護療法)、脳のむくみを抑える薬(脳浮腫改善療法)、血栓形成を抑える薬(抗血小板療法、抗凝固療法)が投与されます。また外科的治療法として脳血管内治療法が行われます。

経静脈的血栓溶解療法 脳梗塞になり脳の細胞が完全に死んでしまう前に、できる限り早く(現在は発症から4.5時間以内)アルテプラーゼ(recombinant tissue-type plasminogen activator;rt-PA)という薬剤を静脈内投与することで、詰まった脳の血管内の血栓を溶解させることで血流を再開させ、脳細胞を救済する治療法が経静脈的血栓溶解療法です。血流再開が早ければ早いほど、症状が回復し後遺症も軽くなる可能性が高くなります。
脳血管内治療法 発症から4.5時間以降でrt-PA静注療法ができない場合、rt-PA静注療法で出血の危険性が高い場合、rt-PA治療を行っても効果がない場合は、発症より約8時間以内にカテーテルという細い管を足の付け根の血管から挿入、頭の中の血管へ進め詰まった血管の再開通を試みる脳血管内治療法があります。

脳卒中の慢性期治療

経皮的卵円孔開存閉鎖術 卵円孔開存症を要因とする奇異性脳塞栓患者の再発予防には、これまで抗凝固薬、抗血小板薬の永続投与が行われてきましたが、RESPECT STUDYを含む3つの無作為臨床研究により経皮的卵円孔開存閉鎖術の有効性が示され、2016年10月に米国で認可され、2019年12月より本邦においても治療可能となりました。原則として60歳未満の卵円孔開存の関与が疑われる潜因性脳梗塞患者の再発予防に対して行われます。当センターでは脳神経内科、循環器内科からなる“ブレインハートチーム”を結成し、神奈川県では唯一の施行可能施設として、2020年2月より治療を開始しています。

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