室長
縄田 寛(主任教授)
臓器移植医療とは、元気な方から臓器を提供していただきおこなう「生体移植」ではなく、亡くなられた方からの善意の臓器提供によりおこなわれるのが本来の姿であると考えております。
歴史的には、日本では臓器提供に関する法律として1997年に臓器移植法が施行されました。この臓器移植法では、心停止下臓器提供は家族の承諾のみで可能でしたが、脳死下臓器提供には本人の書面による意思表示と家族の承諾の両方が必要でした。
2010年になり改正臓器移植法が施行され、本人の意思が不明な場合でも、家族の承諾があれば脳死下臓器提供が可能となり、それに伴って15歳未満の脳死下臓器提供も可能となりました。改正臓器移植法の施行後には臓器提供が増加するものと予想されていましたが、実際には脳死下臓器提供数は増加したものの心停止下提供が激減し、2010年には113件(心停止下81件、脳死下32件)あった提供は、2014年には77件(心停止下27件、脳死下50例)と改正後最低となりました。
その後、臓器提供数は増減を繰り返しながらも2019年には125件(心停止下28件、脳死下97件)に達し、過去最多の脳死下臓器提供数となりましたが、2020年はCOVID-19感染症蔓延により臓器提供数は77件(心停止下9件、脳死下68件)と大きく減少しました。例えば心臓移植は待機患者数約900人に対して2020年の移植実施数が54件、すなわち、いま移植登録する患者さんの待機期間は5年を超えるとも言われています。
この絶望的なまでの臓器不足は、肺・肝臓・膵臓・腎臓・小腸等の他の移植領域でも同様です。
当院では2007年4月に移植医療支援委員会を立ち上げました。2008年7月からは移植医療支援室として活動を開始し、終末期の最期の選択の一つとして、臓器提供を希望される患者さんやご家族の提供意思を生かすために、臓器・組織提供が発生した際に迅速に対応できる院内のシステム構築や、院外、特に教育機関等での普及啓発活動も積極的に行っております。
また当院は、腎移植施設でもありますので、腎臓移植に関する対応も行っております。
移植医療に関してご相談、ご質問等ありましたら、いつでも移植医療支援室にご連絡ください。
移植医療支援室は移植医療における提供側および移植側の両方の立場に立ち、特に臓器・組織提供について「提供を希望する・希望しない」、もしくは「臓器・組織提供、移植医療について知りたい」などの意思を生かせる院内体制を整えております。スタッフは7名ですが、院内には医師や看護師、臨床検査技師など、各専門分野の院内コーディネーターが在籍しており患者さんやご家族のご希望に応じて対応しています。
腎移植は血液透析、腹膜透析と並び、腎不全の治療の一つとしてすでに確立された治療法です。日本では年間約1,600件前後もの腎移植を行っており、当院では2022年3月までに257件の腎移植を行いました。当院腎臓病センターでは、腎泌尿器外科、腎臓・高血圧内科、移植コーディネーター、外来・病棟・透析室看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、透析・検査技師、移植医療支援室スタッフなど様々な職種が協力し、患者さんにとってベストな治療となるように対応しています。
院内には、常時ポスターの掲示や意思表示カードの設置を行っております。総合受付案内や、本館4階売店エレベーターホール、本館3階眼科受付、救命救急センター受付など数カ所に設置してありますので、お手にとってみてください。わからないことやお知りになりたいことがありましたらご連絡・ご質問ください。院外での地域啓発活動として、2009年より「宮前区民祭」へ参加を始めました。臓器提供意思表示カードの配布や医療相談コーナーを設け、より多くの方々へ移植医療への理解を深めていく活動を行っております。ご質問等あればお気軽に声をかけていただければ幸いです。
お問い合わせ先 044-977-8111(平日8:30~16:30)
臓器・組織提供、腎移植に関するご相談やお問い合わせ
(入院患者様は病棟の担当医師または看護師へご相談ください。)
移植医療支援室が中心となり関連病院での臓器・組織提供や移植医療に関しても迅速に対応できるように連携を図っております。
また、日本臓器移植ネットワークなどの関連機関とも連携を図っており、安全かつ適切な移植医療の提供に努めています。
一般の方々への移植医療の正しい知識を提供する講演会や、医療従事者を対象としたセミナーや講演会を随時開催しています。
診療科・部門のご案内
診療科
部門
センター
認知症(老年精神疾患)治療研究センター