年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
平成29年度に当院を退院された患者さんは21,596人で、28年度と比べると407人増えています。28年度がうるう年で1日多かったこともあり、1日あたりの平均は28年度と比べると1.3名増えて、59.2人の患者さんが退院されています。当院は幅広い年齢層の患者さんが入院されておりますが、最も多い年齢層は70~79歳で5,206人(24.1%)でした。少子高齢化の時代といわれておりますが、60歳以上の患者さんの割合は57.4%と、この数年変わりはありませんが、超高齢者の患者さん(80歳以上)は28年度と比べて308人も増えて、3,572人(16.5%)でした。また総合周産期母子医療センターを有する当院は小児医療も充実しており、0~9歳の患者さんは1,917人と28年度と比べると239人増え、その割合も7.9%から8.9%と増加しています。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
呼吸器内科
肺がんの患者さんは増加しつつあり、その中で75歳以上の患者さんが半分以上を占めています。高齢であっても全身状態が良ければ治療の対象になるため、診断のための気管支鏡検査やCTガイド下生検などの検査をお勧めしています。また例え進行がんであっても、最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、従来の抗がん剤とは異なる作用機序のお薬が導入されており、効果が期待できる方には積極的に治療介入を行っております。病名トップからの1、2、4位は肺がんの患者数の増加を反映した、検査および治療目的の入院によるものと考えます。また治療方法の進歩による生命的予後の改善が治療期間の延長にもつながっていると思われます。3位の間質性肺炎の増加はピルフェニドンやニンテダニブ等の抗線維化薬導入に伴う入院や、急性増悪治療のための入院によるものです。5位の慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙により肺気腫や慢性気管支炎を発症し、息切れや咳、痰の症状を呈する病気であり、当院ではリハビリテーション、吸入薬使用方法、療養、及び栄養等の指導を目的とした教育入院を行っています。また感冒等を契機としたCOPDの病状悪化も場合により入院加療が必要となります。
循環器内科
日本人の死因の第2位が循環器疾患であり、中でも虚血性心疾患は生活習慣病から進展することが多く、当科では早期診断を心がけております。冠動脈疾患に対しては、複雑な病変でなければカテーテルによる冠動脈治療を行います。冠動脈造影と治療はいずれも3日程度の入院で行っています。
また、高齢化に伴い心房細動という不整脈疾患が増加し、これが脳塞栓の原因となり得るため、当科では発作性心房細動を中心にカテーテル心筋焼灼術を積極的に行っています。入院期間は4日程度であり、術後は近隣の医療機関とパスによる連携に取り組んでおります。脈が遅くなるタイプの不整脈疾患に対する治療法は、ペースメーカーの植え込みが必要となります。1回の植え込みで数年の間は電池寿命が保たれます。約1週間の入院期間を要します。 一昨年より当院では重症な大動脈弁狭窄症に対して、経カテーテル的大動脈弁置換術が行えるようになりました。従来の心臓手術とは異なり、血管内から治療することが出来る画期的な方法です。通常の手術方法では治療困難な方に施されるため、後期高齢者が対象となることが多いです。 消化器・肝臓内科
当科に入院する患者さんのうち頻度の高い疾患は、胆管結石・胆管炎、肝がん(肝・肝内胆管の悪性腫瘍)、胃がん(胃の悪性腫瘍)、大腸憩室炎(腸炎の一種)です。当科では消化管班、肝臓班、胆膵班の3つの診療グループが、これら代表疾患をはじめ、各疾患に対して高い専門性をもった医療を提供しております。
腎臓・高血圧内科
日本人の高齢化により、慢性腎炎に加えて、高血圧・動脈硬化性疾患の最終像としての腎不全は年々増加しています。実際、最新の日本透析医学会の統計調査では、日本の透析患者は32万人を超えたことが報告されました。当科のDPC病名として最も多いのが腎不全や腎不全関連手術(動脈形成術、吻合術)であることもそれを示唆するものです。さらに、高齢化によるポリファーマシー、腎機能低下例の増加が急性腎障害(腎不全)の頻度もかなり増加させています。勿論、当科では従来の腎炎に対する診断(腎生検)や治療も多く行っていますが、加えて、腎不全の進行を抑制することを目的とした慢性腎臓病教育入院の実施、透析を行うために必須である透析アクセスの造設や維持(それぞれ内シャント設置術、内シャント血栓除去術)のための外科的アプローチ、急性腎不全の治療や予防など、多岐に亘る腎疾患に対応し、地域の腎不全患者さんの総合医・かかりつけ医としての役割を果たし、患者さんの利便性を高めるようにしております。
代謝・内分泌内科
糖尿病センターは健診で初めて指摘された糖尿病予備群から急激に糖代謝が悪化する劇症1型糖尿病に至るまですべての糖尿病患者さんを診療する体制が整っております。とりわけ糖尿病患者さんの教育に積極的に取り組んでおり、医師、看護師、薬剤師、栄養士で構成されたチーム医療で生活習慣の改善指導、合併症の治療を行っております。また近年8人に1人の妊婦さんが妊娠糖尿病になる時代背景を見据え、病院内外の産婦人科と連携のもと安心した周産期、出産が行えるように栄養士による食事療法の指導やインスリン療法による血糖管理を行っています。他病棟に入院されておられる糖尿病患者さんに対しても周術期等における血糖管理を行うなど他科と連携医療を積極的に行い、入院加療における医療の質の向上に努めております。
内分泌疾患については近年、高血圧の患者さんにホルモンが関係をする副腎疾患の精査を行うことが増えております。短期間での検査入院で内分泌機能試験、画像検査(CT、MR、シンチグラフィ等)、副腎静脈・海綿静脈洞サンプリング等を実施して的確な診断に努めております。 脳神経内科
上位5位DPC分類のうち、一過性脳虚血発作、急性期脳梗塞で、計117例を占め、虚血性脳血管障害急性期例が最も多い疾患となっています。ついでパーキンソン病並びにその類縁疾患86例となっております。脳血管障害の急性期治療は、脳卒中ケアユニットによる多職種治療、超急性期血栓溶解療法、機械的血栓回収療法の3つの治療を迅速かつ適切に行うことが重要です。当院では、これまでも脳卒中ケアユニットを中心に多職種治療を行ってきましたが、更に連携を深め包括的脳卒中医療を提供することを目的として、平成30年度より脳卒中センターを開設しました。パーキンソン病も脳梗塞と同様に要介護となる可能性の高い疾患で、人口の高齢化とともにこれらの疾患は増加しつつあります。近年進行期パーキンソン病であっても抗パーキンソン病薬を直接腸内に持続注入する治療法でよい成績が得られるようになっています。私たちは、行った治療と転帰のデータを常に明らかにし、PDCAサイクルの実行を継続的に実施し質の向上に努めております。
血液内科
当科では悪性リンパ腫を、診断時の病理組織標本に加えフローサイトメトリー法・染色体検査・FISH・遺伝子検査を用い総合的に診断しております。病理医と密に連携し、各々の患者さんに最適な治療法を選択しております。急性白血病の患者さんには、バイオクリーンルームを利用して、標準的な化学療法を施行しております。多発性骨髄腫に関しては、最新のエビデンスに基づいた化学療法並びに若年患者さんに対しては積極的な自家造血幹細胞移植を行なっております。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 リウマチ・膠原・アレルギー内科
膠原病などの全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患は、診断、病勢・重症度の把握、これに続く寛解導入療法・または外来治療経過中の再発のために入院を要することがあります。当科では、迅速な診断、ステロイド減量を視野においた適切な免疫抑制薬の併用、並びに合併症予防策を行うことにより、入院期間を短縮するようにしております。関節リウマチは、生物製剤導入目的や、感染症、間質性肺炎、皮膚潰瘍などの合併症による入院が多くみられています。また、膠原病の代表的合併症の一つである間質性肺炎に対しては、シクロホスファミド点滴療法も積極的に行っております。
腫瘍内科
当科では消化器がんを中心に化学(放射線)療法、緩和治療を行っていますが、昨今、ほとんどの治療が外来で施行可能となっております。従って、シスプラチンなどの長時間補液を必要とする治療のみが入院の対象となり、食道がん、胃がんの入院が多くなっております。平成27年度以降は、胃がんに対してシスプラチンと同系統で外来投与可能なオキサリプラチンの使用が増えたため、入院での治療を受けた胃がんの患者さんは減っています。一方、膵がんでは強力な多剤併用療法を選択する場合に限り、初回のみ入院で治療を開始する場合もあります。当科では、患者さんの生活の質(QOL)をなるべく下げることなくがんの治療を継続することを目標とし、入院期間は患者さんの要望になるべく沿う形で短期間の場合が多くなっております。
小児科
【小児科】
小児科、新生児科において出生体重2500g以上では重度の呼吸障害、染色体異常症などが増加傾向にあり近隣施設での受け入れが減っていると考えられます。出生体重1500g以上2500g未満では呼吸障害、低血糖などが多く、対応に苦慮する症例も多くみられました。肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎に関しては、季節性もありますが、RSウィルス感染によるものが増加しており、乳幼児ではより重症化する症例がみられました。てんかん患者は受診数が増加傾向にあり、発作後の入院、診断確定、てんかん外科手術のためのビデオ脳波検査入院が増加したと考えられます。 【新生児科】 当院は総合周産期母子医療センターであり、合併症や胎児の発育不良で紹介される母体が多くなります。その結果として、早産児や低出生体重児といった入院管理を要する新生児が増加します。低出生体重児が多い事については、近年全国的な傾向でもあり、当院での症例数が多い事もその反映であると考えます。2500g以上の新生児の平均在院日数は全国平均と変わりありませんが、1500g以上2500g未満の新生児の在院日数は全国平均より短く、転院率は低いことから、順調な経過で退院している新生児が多いと考えられます。 消化器・一般外科
消化器・一般外科が対象となる疾患は、消化器系(食道、胃、小腸、大腸、肝臓胆道、膵臓)の良性および悪性疾患、成人の各種ヘルニア、内・外痔核、痔瘻などの肛門疾患です。予定手術のほか救命救急センターと連携し、緊急手術についても対応しております。平成29年度の病名として多かったのは1位結腸の悪性腫瘍切除、2位腹腔鏡下胆嚢摘出術、3位虫垂炎保存的治療、4位虫垂切除、5位保存的腸閉塞という結果でした。消化器・一般外科のがんの手術から緊急手術まで幅広く取り組んでいる結果を表していると思われます。
心臓血管外科
当科が対象とする疾患は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)、心臓弁膜症、大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症、静脈瘤など)です。冠動脈バイパス術は9割以上、心臓を止めないオフポンプバイパス術を行っております。傷んだ心臓の弁に対しては、弁形成術や弁置換術を行っておりますが、条件が合う患者さんには術後の早い回復が望める低侵襲心臓弁膜症手術を行っております。また新たに建設したハイブリット手術室において、高齢者やハイリスクな患者さんにカテーテル的大動脈弁置換術を積極的に行っております。大動脈瘤疾患に対しては、人工血管置換術やカテーテルで人工血管を留置するステントグラフト内挿入術を積極的に行い、良好な結果を得ています。
呼吸器外科
当科の治療対象疾患は原発性肺がんが最も多く、多職種カンファランス(Cancer Board)での検討に基づき治療方針を決定しております。手術適応と診断される場合には根治を目指した外科手術を行っております。主に低侵襲機能温存を目的とした胸腔鏡手術を行っております。進行例に対しては適切な治療を選択し、術前に化学療法、放射線療法などの導入療法を行い、腫瘍を縮小させてから根治切除を行うこともあります。また転移性肺悪性腫瘍にはさまざまな種類があり、多くは他科からの依頼によって手術適応を判断することになります。肺がん同様に低侵襲機能温存を目的とした胸腔鏡手術を行っております。
肺がんは他のがんと比較して予後不良であり、術後の再発リスクが高いという特徴があります。進行例では再発を予防する目的で術後に補助的抗がん剤治療を行うこともあります。また術後外来での定期的検査を行い、再発症例に対しては積極的に薬物治療を行います。最近では、分子標的治療薬や免疫治療薬の開発が進み、その成績も向上しており、切除例では肺がんの各種遺伝子異常やタンパク質発現を検索し、再発の際に適切な薬剤選択が迅速にできるようにしております。 気胸は10代、20代の若年男性や肺気腫のある人に突然発症することの多い疾患です。肺の虚脱によって呼吸困難となることがあり、早急な対応が必要です。当科では近隣の診療所からの紹介を常時受け付けており、緊急手術にも対応しています。 小児外科
当科で最も症例数が多いのは、鼠径ヘルニアの手術患者さんです。これは平成26年度からDPCの対象から除外されたために表には表れていませんが、94人の患者さんに2泊3日もしくは1泊2日の入院で鼠径ヘルニア手術を行っています(平成29年度診療科別主要手術別患者トップ5参照)。
「その他の消化管の障害 手術なし」は消化吸収を担っている小腸が極端に短いために、口からの食事では十分な栄養が摂取できないため入院して点滴治療を受けています。また、急性胃腸炎などのお腹の風邪で、食事を取れないお子さんが入院治療を受けます。 「虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 定義副傷病なし」は、腹腔鏡下虫垂切除術を行っています。平均在院日数は6.5日間です。「停留精巣 手術あり」も、16人入院しており、2泊3日の入院で精巣固定術を行っています。 「閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等」とは、いわゆる『でべそ』のことです。ほとんどが自然治癒しますが、5%のお子さんは手術が必要になります。 「肝硬変(胆汁性肝硬変を含む。) 手術なし 手術・処置等2-1あり」とは、生まれつき肝臓が悪く点滴治療を受けるために入院している患者さんです。 乳腺・内分泌外科
乳がんは現在本邦女性が最も罹りやすいがんで、壮年期(30 代後半から60 代)の女性がん死亡1位の重大な疾患です。当科では診断・治療・ターミナルケアまで一貫した乳がん診療を実践しております。最新の乳がん診療のキーワードは個別化医療とチーム医療です。ステージ(病期)、サブタイプ(乳がんの種類)、患者さんの背景によって治療方法は異なります。それらの評価を正確に行い、手術、化学療法(抗がん剤、分子標的薬)、放射線療法、ホルモン療法、などの集学的治療をチームで実践することによって乳がん克服を目指しております。
脳神経外科
頭蓋・頭蓋内損傷は交通事故が減少しているものの、高齢人口の増加で高齢者の家庭内事故が急増しており、当科は24時間体制で緊急治療に対応しております。脳血管障害には脳出血や脳梗塞があります。当科は開頭手術並びに、血管内治療の専門医が随時緊急の治療に対応しています。特に血管内治療すなわち、カテーテルを用いた治療の件数が増加しています。未破裂脳動脈瘤の治療はくも膜下出血の予防として必須の手術です。世界で最も多く使われる脳動脈瘤クリップは杉田クリップですが、当科の部長は故杉田教授の直弟子で完璧な治療の体制が整っています。 脳腫瘍は手術で摘出する治療がすべてでなく、化学療法や放射線治療との複合治療が必要です。当科では化学療法の専門医がおり、放射線科との緊密な連携ができています。術中モニタリングやナビゲーションシステムなど最先端の装備が整っています。
整形外科
当科は、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手)に専門性を有し、変性疾患やスポーツ障害、外傷など近隣地域による紹介を多数いただいております。また、救命救急センターを併設しているため、救急外傷の患者さんも数多く搬送されてきます。医療の進歩により高齢者が年々増加しており、それに伴い、大腿骨頸部骨折や橈骨遠位端骨折(前腕骨折)を呈した患者さんも多くなっております。また、変性疾患である、変形性膝関節症に対する人工関節置換術を必要とする患者さんも年々増えております。当科では、外傷疾患では緊急手術を含む早期対応をおこない、変性疾患ではエビデンスに基づく治療を心がけ、早期機能回復に努めており、ADL(日常生活動作)の獲得、QOL(生活の質)の向上を目指しております。
形成外科
当科では顔面をはじめとして体表面のあらゆる変形を扱っており、先天性の変形から病気や外傷の手術後の後天性変形まで広く再建、形成手術を行っています。特に乳癌切除後の乳房再建では、自家組織と人工乳房の両方の手術を行っており、乳頭乳輪形成に至るまで独自の手術で、術前にできるだけ近い乳房の再建を目指しています。また、当科では長年、培養表皮移植や多血小板血漿(PRP)治療などの先進医療に取り組んで来ており、皮膚の良性・悪性腫瘍に対して、単に腫瘍を切除するだけでなく、できるだけ目立たない傷痕になるように努力しています。その他、高齢者を中心に眼瞼下垂の症例が増加しており、症状に応じて種々の術式を駆使し、良好な結果を得ています。
皮膚科
1位の急性膿皮症は具体的には蜂窩織炎や丹毒であり、外来治療では不十分な重症患者さんを入院治療しております。大半の病院の皮膚科でも入院患者さんの多くを占めている疾患です。通常、1週間から2週間の入院を要します。2位の帯状疱疹も、よく見られる疾患です。抗ウィルス薬を連日点滴し、1週間程度の入院治療を行います。3位の皮膚悪性腫瘍切除はいわゆる皮膚癌の手術で、当科には近隣より多くの患者さんが紹介されてきます。4位の薬疹・中毒疹は、重症薬疹ないしそれに進展する可能性があると思われる患者さんで、入院治療が必要な患者さんを治療しています。5位の自己免疫性疾患とは血管炎や膠原病であり、当科ではこれらの治療にも力を入れております。
腎泌尿器外科
平成29年度において、当科で最も症例数が多かったのは何らかの原因で尿路の通過障害を起こしている水腎症の症例でした。水腎症の原因には、尿路結石、尿路のがんや他の悪性腫瘍の尿管周囲への転移・浸潤、長期間にわたる排尿障害などがあります。水腎症は放置すると腎機能低下の原因となりうるので、通過障害の部位を的確に診断し、それを解除することが重要です。当科では悪性腫瘍の尿管周囲への転移・浸潤と、高齢者の尿路結石が多くみられます。特に後者は緊急手術として行われることが多くなっています。次に多いのは膀胱腫瘍で、膀胱内視鏡手術を行うものでした。膀胱腫瘍は再発性が強く、内視鏡手術を繰り返し行う症例も多数見られます。内視鏡手術を含む泌尿器科的な処置の必要がない尿路感染症は、平成28年度は4位でしたが本年度は3位となり、また、昨年度は上位5位に入らなかった前立腺肥大症の経尿道手術が4位になりました。これは悪性疾患のみならず、泌尿器科疾患全般に対応している当科の特徴の一つを表しているものと考えられます。また、5位の腎腫瘍については根治的腎摘除術・腎部分切除術・分子標的薬治療・免疫チェックポイント治療薬などの治療を行っています。
産婦人科
聖マリアンナ医科大学病院産婦人科は産婦人科診療の4本柱である「周産期」「生殖」「婦人科」「女性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡手術」「遺伝子診療」の 6領域全てに対応することが可能なスタッフを有しています。当院は日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医が複数在籍しており、婦人科悪性腫瘍を中心とした婦人科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しております。その為、平成29年度は婦人科悪性疾患が病名トップ5にランクインしています(子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2-4あり 定義副傷病なし)。また、特に川崎市の周産期医療における最後の砦の施設であることから、平成29年度の病名トップ5に周産期関連の疾患がランクインしています(胎児及び胎児付属物の異常 子宮全摘術等、ならびに早産、切迫早産 手術なし 手術・処置等2なし)。また、日本産科婦人科内視鏡学会内視鏡技術専門医も複数有しており、積極的に低侵襲手術を取り入れていることから、婦人科疾患の中でも良性疾患に対する腹腔鏡手術による手術数が増加しています(卵巣の良性腫瘍 卵巣部分切除術(腟式を含む。) 腹腔鏡によるもの等、子宮の良性腫瘍 腹腔鏡下腟式子宮全摘術等)。同様に悪性腫瘍手術に対しても適応を見極めた上で、低侵襲手術を取り入れています。
眼科
白内障手術は、平成26年度からDPCの対象から除外されたために上記のDPCのトップ5には入っておりませんが、当科では、年間 1,100 件以上の白内障手術を施行しております。全身に合併症がある方でも対応できるように1~2 泊の入院で行っており、高度先進医療である多焦点眼内レンズを用いた白内障手術にも対応しております。また、眼科的に高度な技術を要する網膜硝子体手術は年間600 件以上、最新のチューブシャント手術を含む緑内障に対する手術も年間150件以上施行しております。また、これらの疾患がいくつか併発しているような難しい症例に対する併用手術なども積極的に行っております。また、近年増加傾向にある加齢黄斑変性に対しては最新型の光干渉網膜断層撮影装置(OCT)、造影剤を使用せずに脈絡膜の血流を評価できるOCT angiographyによる正確な診断のもと、抗VEGF 治療薬を中心とした治療を行っております。
耳鼻咽喉科
急性扁桃炎や急性咽喉頭炎は外来治療で改善が乏しい方や経口摂取が困難な方に入院での治療を行い、扁桃周囲膿瘍はほぼ全ての方に対し入院をおすすめしています。
慢性副鼻腔炎の手術は入院日数を約5日間程度と入院期間短縮を心がけております。 突発性難聴は軽症例を除き基本的に9日間のスケジュールで入院点滴治療を行っております。改善が乏しい場合に追加の点滴治療を6日間行うことがあります。 慢性扁桃炎の手術は術後出血の合併症を早期に発見し対応するため術後日数が7日間としております。また、子供に対して手術することも多いため、平均年齢も他と比べると低くなっています。 鼻、口腔、咽頭の腫瘍の手術は主にヒトパピローマウイルスによる感染により発生する乳頭腫です。CO2レーザーやマイクロデブリッターを用いて手術を行っております。 放射線科
対象疾患は血管奇形です。放射線科が担当する血管奇形には主に肺動静脈奇形(瘻)、四肢・軟部の血管奇形などがあります。肺動静脈奇形は、毛細血管を介さず肺動脈から肺静脈へ直接交通をもつ先天的な血管形成異常です。自覚症状に乏しく、健診で偶然発見される場合も多いですが、脳膿瘍、脳梗塞や低酸素血症による労作時息切れ、チアノーゼなどが問題となります。四肢・軟部の血管奇形にはさまざまなタイプがありますが、血管の拡張・血栓形成・虚血などにより、疼痛・腫脹・出血・潰瘍などの症状をきたします。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
【胃癌・大腸癌・肝癌】
胃癌の総数は前年度236例から260例と増加しております。Stage別に見るとStageⅠが過半数をしめ早期に発見治療されております。大腸癌においても前年度245例から279例と増加しております。Stage別に見ると前年度はStageⅡが27%と最も高い割合でしたが、今年度はStageⅠ、stageⅡ共に27%を占めております。早期に発見、治療されている傾向ですが、胃癌に比較するとStageⅡ以上が7割強を占めております。肝臓癌は前年度97例に比較して69例と減少しております。B型、C型肝炎ウィルスの治療法の進歩の影響と考えられます。Stage別に見るとStageⅠが8%から20%と増加しており、早期に発見治療が行われていると判断できます。 【肺癌】 原発性肺がんは5大がんの一角を占め、本邦における全がん死亡患者数の第1位を占めています。肝臓がんや膵臓がんなどと共に治りにくいがんのひとつに数えられています。病期別にみると最も治療成績がよいのは完全切除が期待できるStageⅠAで、完全切除後の5年生存率は90%前後です。病期の進行とともに術後再発率が高まり、生命予後が悪くなります。診断時の病期がStageⅢA以上になると手術適応から外れ、手術以外の治療に頼ることが多くなります。最近では抗がん剤治療だけではなく、様々な分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの標的治療薬や個別化治療の開発が進み、進行肺がんに対する治療成績も確実に向上しております。 当院の症例でもStageⅢやすでに遠隔臓器への転移を認めるStageⅣが多いことからわかるように、診断時にはすでに進行例が多いことが治療成績を悪くする大きな原因になっています。症状がなくても健康診断を受け、胸部エックス線写真や、胸部CTで早期の肺がんを発見し、迅速に診断、治療を行うことが治療成績向上の鍵となります。 【乳癌】 乳がんの自覚症状で最も多いのは乳房内の腫瘤(しこり)です。乳房は体表面に位置するため、患者さんご自身でしこりを触知して発見される頻度が高くなっています。また、乳がん検診(マンモグラフィなど)の普及により、自覚症状が無く発見される症例も増えてきております。その結果、Stage I, IIと比較的早期に発見される乳がんが大半を占める状況となっています。一方、当院では、他施設で治療(手術など)を受けられた後に再発した乳がん患者さんも受け入れ、薬物療法始め集学的治療を積極的に行っております。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
近年の高齢化を背景に高齢者~超高齢者の肺炎が増加しています。特に80歳を超えるような高齢の方には、肺炎による入院中に筋力や意欲の低下を来し、なかなか元の生活に戻れない方も多くみられます。入院され、抗菌剤等の治療により炎症が軽快したら、できるだけ速やかにリハビリをすすめ御自宅や施設にお返しし、日常生活に戻れるような院内外を含めたネットワークづくりが必要と感じています。また在宅で安心して肺炎治療が受けることができるような環境整備も必要かと考えています。
肺炎予防方法としてのインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種や口腔衛生の管理も普及が必要と思われます。 重症・超重症肺炎患者は肺炎の治療のみならず、併存症の治療を必要とすることが多く、入院期間が長期に及ぶことがあります。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
脳卒中の治療は時間との勝負です。川崎市、横浜市では、私たちが作成した初期評価尺度(MPSS)を用いて、救急隊員が直ちに脳卒中患者であることを判定し、定められた搬送基準に従って病院選定と搬送を行っています。この取り組みは日本で最も早く行われ、同時に全ての搬送患者さんの治療とその成績をもれなく定期的に総覧してPDCAサイクルを回す事後検証作業の活動を10年以上にわたり続けています。当院の脳卒中センターは脳卒中集中治療室(SCU)を有し、多職種からなる脳卒中診療チームが早期からリハビリテーションを含む治療を行うこと、全ての適応のある方に対して超急性期血栓溶解療法、カテーテルによる血栓回収療法を24時間365日対応することが可能な、包括的脳卒中センターの機能を有しています。また特定機能病院として、高度の合併症を有する脳卒中にも対応可能であり、病状が安定し次第、急性期リハビリテーションをおこなうことのできる病棟内にリハ訓練室を備えています。先進の診断技術により迅速に脳卒中診断を行い、多職種によるチーム医療により、治療効果を挙げています。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
呼吸器内科
悪性腫瘍や結核などの良性疾患による中枢気道狭窄は呼吸困難を生じ、病状の進展速度によっては救命のための緊急的な処置を必要とすることもある病変です。当科は中枢気道狭窄に対する気管支鏡的治療をこれまで数多く実施しており、また多くの医療機関より症例の紹介を頂いております。気管支喘息に対する気管支サーモプラスティも含めて、気管支鏡を使用した治療的介入は今後も引き続き力を入れていきたいと思います。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 循環器内科
K5493 虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞がありますが、どちらも詰まっているもしくは詰まりかけた冠動脈を広げることが必要です。当院では外来の検査で必要と判断された方のみにカテーテル検査を行い、狭い血管がどこにあるのかを診断し、狭い部分を風船で広げた後にステントという薄い金網を内張りします。ステントは狭くなりにくい薬剤溶出性ステントを使用することが多く、2泊3日程度で退院出来ます。
K5951 不整脈の中で最も多い心房細動に対しては、心房細動が起きていると思われる4本の肺静脈と左心房の間に心臓の内側から高周波もしくは冷却焼灼を行い、根本的な治療を目指しています。どちらの治療も体に目立った傷が残りません。 K555-22 年齢と共に固くなった大動脈弁に対して、開心手術という方法では無く、通常のカテーテル検査や治療と同じやり方で、動脈血の流れに逆行させながら風船の上にたたまれた生体弁を適切な場所へ持っていき、留置する治療法です。外科的手術のような大きな傷が残りませんので1週間ほどで退院出来ます。 K616 下腿や下肢、その他の末梢動脈の細くなった場所に対して、冠動脈と同じように血管内形成術を行います。2泊3日で行います。 K5952 心臓の中に通常のリズムとは異なる発電箇所や電気の通り道に対して、心筋の内側からもしくは心臓の外側から高周波カテーテルを用いて焼灼する治療です。3〜4日の入院が必要です。 消化器・肝臓内科
当科で高頻度に行っている手術は、大腸腺腫症に対する内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術や、胆管結石や悪性胆道狭窄に対する内視鏡的胆道ステント留置術、胃潰瘍などによる消化管出血に対する内視鏡的消化管止血術、肝がんに対する肝動脈化学塞栓術、胃や十二指腸の悪性腫瘍に対する内視鏡的切除術です。内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術は、原則拡大内視鏡を用いて治療適応を正確に判断した後に切除を行っております。内視鏡的胆道ステント留置術は、悪性胆道狭窄や胆管結石、胆管に対する内視鏡的治療です。内視鏡的消化管止血術は昼夜問わず、緊急で行う内視鏡的治療です。ESDといわれる内視鏡的粘膜切除術は胃や十二指腸などの悪性腫瘍に対する内視鏡的手術です。これら内視鏡的治療は消化管班、胆膵班によって専門性の高い治療が行われます。肝動脈化学塞栓術は肝がんに対する治療の一つです。消化器一般外科、放射線科といった複数の診療科と連携を取り各患者さんの病状にあった適切な治療を合議し各診療科と協力し肝動脈化学塞栓術をはじめとする肝がん治療を行っております。
腎臓・高血圧内科
当科は透析患者さんの利便性向上および、かかりつけ医としての役割を果たすため、透析血管アクセス関連手術(経皮的シャント拡張術・血栓除去術、内シャント設置術、血管移植術、連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術、上腕動脈表在化法、内シャント血栓除去術など)を内科でありながら積極的に行うようにしています。透析血管アクセスは、十分な透析を負担なく行うための患者さんにとって命綱のような大切なものです。特に、高齢化により良好な透析アクセスが得られない、あるいはアクセスの開通にトラブルを起こす患者さんが多く、近隣の透析施設が大学病院に期待する治療として、これらの手術が重要な意味を持っています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示ししています。 代謝・内分泌内科
糖尿病は血管合併症の病態であり、長期にわたり糖尿病を患うことで細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)、大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)などを起こします。糖尿病センターでは、入院された患者さんの細小血管障害や大血管障害の進展の状況を把握するようにしております。
このため手術・処置においては糖尿病を基礎疾患にある患者さんが他の疾患を併発した場合に行われることがあります。平成29年度は手術トップ5に乳腺悪性腫瘍手術(乳頭乳輪温存乳房切除術(腋窩郭清を伴わないもの))が挙げられておりますが、手術を目的に入院される糖尿病患者さんに対しても周術期等における血糖管理を行うなど他科との連携医療を積極的に行い、入院加療における医療の質の向上に努めております。 また、糖尿病患者さんが緊急の重症な併発疾患を伴った状況において、救命救急処置として気管切開術(気管内挿管が長期に及んだ場合)、中心静脈注射植え込み型カテーテル設置を行う場合があります。 糖尿病網膜症につきましては、入院時に眼科との連携のもと網膜症の評価を行います。網膜症がみられた場合には、当科で血糖値の改善を図るとともに、網膜光凝固術などの眼科的処置による治療を行うことで網膜症の進展を予防いたします。また、糖尿病、高血圧、脂質異常症を基点とした動脈硬化性の進行により生じた血管病変については循環器内科と連携のもと、カテーテルを用いて経皮的に血管拡張術を行うことで血流の改善を図る治療を行っております。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 脳神経内科
脳神経内科で行われる主な手術療法は、入院患者数の多い脳卒中とパーキンソン病に対する手術で占められます。脳卒中の患者さんや神経難病の患者さんの中には、高度の障害のため気管切開術を要する方や嚥下障害のため喉頭気管分離術を行う方もおられます。薬物注入用胃瘻造設によるデュオドーパの腸内持続注入療法は、特定機能病院である大学病院で他科、多職種のチームワークの下に行うことのできる医療であり、進行期パーキンソン病の患者さんの運動障害改善に効果をあげています。経皮的血栓回収術、経皮的脳血管形成術は、脳梗塞の急性期治療として日常的に行われています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 血液内科
当科の観血的手技・処置では、化学療法と高カロリー輸液のための中心静脈カテーテル挿入・留置が最多です。易感染性宿主の感染源とならぬ様、抗菌性皮膚貼付用テープを採用し、固定法を工夫しております。消化管出血にて緊急処置を要する症例に内視鏡的消化管止血術を施行しています。同様に鼻腔粘膜からの出血が通常の圧迫止血などでは困難な場合に鼻腔粘膜焼灼術を施行しています。悪性リンパ腫・骨髄腫の患者で65歳以下の症例では必要に応じて自家末梢血幹細胞移植を施行しております。脳出血などでは必要に応じて血管塞栓術を施行しています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
当科では、呼吸管理のために行われた気管切開術が最も多い手術となりました。膠原病は、時に重篤な呼吸器合併症を呈することが有り、長期の人工呼吸器管理が必要な状況では、気管切開術を施行することがあります。
また、血管病変やステロイド使用にともなった消化管病変のよる出血も当科では多く経験しております。このため内視鏡的消化管止血術が2番目に多い手術となりました。 経口での栄養摂取が困難な方には中心静脈注射用植込型カテーテル設置が行われることもあります。また、血小板減少や鼻粘膜病変に伴った鼻出血に対して鼻腔粘膜焼灼術も行われました。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 腫瘍内科
腫瘍内科では消化器がんを中心に、化学(放射線)療法、緩和療法を行っていますが、手術手技として行われるものとしては、腫瘍による胆道閉塞や尿路閉塞に対するステント留置術や、食事摂取不良に対する中心静脈栄養用植込型カテーテル設置や胃瘻造設術、胸水や腹水を濾過して濃縮したのちに再度体内に戻す処置などが多く行われています。緊急で行う手技は術前の入院日数は短いですが、多くは緩和治療の一つとして行う場合が多いので、全身状態をしっかり評価してその必要性を見極めるために、術前の入院日数が長めになっています。また、外科や放射線科と連携し、当科入院中に手術や肝動注療法を行うこともあります。いずれも全身状態の回復を待って、在宅で安心して過ごせるように体制を整えてから退院するようにしていますので、術後の入院日数は長めになっています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 小児科
【小児科】
合併症のある新生児の入院が増えたことにより新生児仮死に対する対応も増加していると考えられました。新生児仮死蘇生術はそれにより増加傾向にあります。小児の先天奇形の中では、先天性心疾患が多く心臓カテーテル検査は重要であり、近隣からの紹介も増え、それに伴って手術症例も増加しております。乳幼児では、より重症例が多く、人工心肺を使用する症例がみられました。動脈管開存閉鎖術は他施設での施行例が減少しているため、症例数が増加傾向にあります。また、低出生体重児においては未熟児網膜症に対する網膜光凝固術も増加傾向にありました。 【新生児科】 新生児仮死は、分娩前・中に状態が悪くなるために発生する病態です。当院は総合周産期母子医療センターで、より重症な妊婦、新生児を管理していることを反映している結果と考えています。仮死第1度と仮死第2度は重症度の違いによる分類で、第2度はより重症な仮死である事を示します。在院日数が長期である事もより重症である児が多い事を示唆しています。 動脈管は通常出生後速やかに閉鎖しますが、早産児や先天性心疾患で閉鎖しないことがあります。心不全を来す場合には直視下閉鎖術を行う必要があります。当院は総合周産期母子医療センターであり、早産児や先天性心疾患を有する新生児が数多く入院しているため、同手術が多くなります。 網膜光凝固術は、未熟児網膜症に対して、状態を安定させるために行う手術です。未熟児網膜症は過剰な酸素投与によって発症しやすいと言われています。早産児では酸素化が不安定で、その調整のため酸素投与量が多くなる傾向にあります。同治療が多い事は、より重症な児を管理していることを反映している結果であると言えます。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示ししています。 消化器・一般外科
消化器・一般外科における手術は消化器系(食道、胃、小腸、大腸、肝臓胆道、膵臓)の良性および悪性疾患、成人の各種ヘルニア、内・外痔核、痔瘻などの肛門疾患です。平成29年度に行なわれた手術で件数別に見ると昨年度同様、1位腹腔鏡下胆嚢摘出術。2位鼠径ヘルニア、3位腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術、4位内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除、5位腹腔鏡下虫垂切除術という結果でした。消化器・一般外科は地域の中核病院としてがんの手術から緊急手術まで幅広く取り組んでいる結果を表していると思われます。
心臓血管外科
下肢静脈瘤に対しては、ラジオ波を用いたカテーテル治療の下肢静脈瘤血管内焼灼術を行っています。従来の下肢静脈瘤抜去術と入院日数は変わりませんが、術後の回復が早いのが特徴です。
腹部大動脈瘤や胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術も積極的に行っています。大動脈瘤に対して、小さな皮膚切開からカテーテルを使って血管内に人工血管を置く手術で、体への負担が少なく、高齢者など体力のない患者さんに適しています。 傷んだ心臓の弁を生体弁や人工弁へ取り換える弁置換手術、傷んだ弁を直す弁形成術、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術などは人工心肺を使用して行っています。 冠動脈バイパス術は9割以上、心臓を止めないオフポンプバイパス術を行っております。 呼吸器外科
当科で最も多い手術は原発性肺がんに対するもので、これに転移性肺腫瘍を加えた肺の悪性腫瘍に対し、腫瘍進行度と悪性度及び患者さんの耐術能を考慮した最適な手術術式の選択を心掛けています。すなわち、原発性肺がんで、肺機能をはじめとした全身状態に問題がない患者さんに対しては、標準手術としての肺葉切除とリンパ節郭清術が行われます。一方、高齢者や肺機能をはじめ全身状態に問題のある患者さんに対しては、次善の策として肺の切除範囲を縮小した肺区域切除や肺楔状部分切除を行っています。これら手術は胸腔鏡を使用して皮膚の切開創を小さくして行うことが多くなり、かつ手術の安全性を第一に考えて術式選択をしています。また、若年男性や肺気腫患者さんに突発的に生じることが多い気胸に対する根治手術として、原因となる肺嚢胞を切除する胸腔鏡下肺切除を行っています。入院期間の短縮を心掛けていますが、肺がんは高齢者に発症することが多く、術後の回復が遅れやすかったり、ひとり暮らしの方も少なくないため、術後の在院日数が予定より長くなることもあります。
小児外科
当科では、鼠径ヘルニア、陰のう水腫、停留睾丸、臍ヘルニア(でべそ)など小児外科の一般的な手術だけでなく、急性虫垂炎や腸重積症などの救急疾患、新生児外科疾患、小児呼吸器外科疾患、小児悪性腫瘍に対しても、積極的に手術を行っています。また手術の傷が目立たないように腹腔鏡下手術や小切開手術に積極的に取り組んでいます。
最も多い手術は鼠径ヘルニアで、K6335とK634を合わせたもので平成29年度は94人です。女児は傷の目立たない腹腔鏡手術を行っています。男児は、従来の小切開で行っています。 次いで腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの)57症例で、小児の虫垂炎を行っている施設は少ないので、一施設でのこの手術数はトップクラスです。 臍ヘルニア手術15症例、停留精巣固定術15症例行いました。 乳腺・内分泌外科
乳がん(乳腺悪性腫瘍)に対する手術の入院日は通常合併症等がなければ、前日入院で行っています。乳房部分切除術(乳房温存手術)は術後入院期間も2.2日と短く、低侵襲な手術といえます。乳房切除術の場合は、皮下に排液用のドレナージ・チューブが入り抜去後退院ということで、1週間程度の入院が必要です。腋窩リンパ節郭清が加わった場合や乳頭乳輪を温存する乳房切除の場合には、ケアが若干増えるためか、入院日数が1〜2日間程度長くなる傾向があります。また、同時に乳房再建術を行うことで4〜5日間程度入院期間が長くなります。
脳神経外科
脳腫瘍や脳動脈瘤などの頭蓋内病変は高度な医療技術が要求されます。当科は高度医療機関病院として各種の先端医療機器の使用だけでなく、複数の診療部門から構成される包括的チーム医療を提供しています。術中の脳神経機能保護に重点を置いた術前検査を重視しており、高度な術前準備を行うことで良好な治療成績が得られております。また機能障害を有する症例では術後の療養を要することも多く、周術期からのリハビリテーションを実施して中長期的な病状回復に努めております。
慢性硬膜下血腫は低侵襲な治療が可能な疾患です。当科は地域の中核病院として多くの紹介患者さんを受け入れています。術後早期からの症状回復が期待できるため短期間の入院で治療が完了します。ただし昨今は超高齢者の難治例も増えており、血管内治療の併用が必要な例が増加しています。 血管内治療は切らずに脳の病気を治療できる画期的な治療法です。常に複数の指導医や専門医が在籍しており、年々実績が増加しています。 水頭症は手術で治る認知症の一つです。シャント管を体内に埋め込む方法と内視鏡で治す方法があります。当科ではいずれの治療にも長けた専門医が複数在籍しています。 臨機応変に穿頭脳室ドレナージ術で対処することもあります。 整形外科
当科では、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手)の疾患に対し、各専門班が手術を担当しております。H29年度の最多手術となった人工関節置換術も年々増加しており、上位5位手術以外でも、脊椎手術、関節鏡手術も積極的に行っております。大学病院という特性上、近隣病院では対応困難な重篤な合併症をもっている患者さんを受け入れている関係で、平均術前、術後日数がやや長くなっております。地域回復期リハビリ病院との連携のもと、術前のADL(日常生活動作)に近づけるように努力しております。
形成外科
当科では顔面の先天性、後天性変形に対する手術や、皮膚腫瘍、皮膚欠損に対する手術を多く行っています。特に乳癌切除後の乳房再建では、人工乳房(インプラント)と自家組織移植の両方の再建術を行っており、再建数とその仕上がりの美しさは日本でトップクラスの成績を誇ります。当院で行う乳房再建では、人工乳房と自家組織による再建のいずれでもパッチワーク状瘢痕を作らず、再建したことが分からない美しい乳房を再建することを目指しています。この他、顔面の骨折・けが・傷あとの修整でも多くの手術を行っており、いずれも良好な結果を得ています。
皮膚科
1位の皮膚悪性腫瘍切除術は悪性黒色腫、基底細胞がん、有棘細胞がんなどの皮膚がんであり、原則として手術前日に入院となります。単純切除や小さい皮弁や植皮の場合は平均術後日数も7日前後と短いですが、4位の全層植皮術(25㎠以上100㎠未満)のように、再建に広範囲の植皮を要するような大きな腫瘍では15日前後とやや長くなります。また、5位の皮膚,皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径6㎝以上,12㎝未満)のように良性の腫瘍でも大型のものは手術の適応があります。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示ししています。 腎泌尿器外科
1位の尿管ステント留置術とは、何らかの理由(結石・がん・その他)で尿管の通過障害を起こしている場合に、緊急処置として尿管の通過障害を解除するため、ステントと呼ばれる管を腎臓と膀胱の間に挿入することを言います。通過障害を放置すると腎機能の悪化を招くので、通過障害の解除は大変重要な処置です。
2位および4位の膀胱腫瘍に対する経尿道的手術は、診断と治療を兼ねて行われます。膀胱腫瘍は再発傾向が大変強いので、一旦膀胱腫瘍と診断された患者さんは、症状がなくても定期的に内視鏡を行い、腫瘍の再発があれば内視鏡手術で切除します。経尿道的手術で用いられる内視鏡手術装置(電気メス)には、モノポーラとバイポーラの2種類があります。経尿道的内視鏡手術では、灌流液と言う液体を用いて視野を確保しますが、モノポーラでは、電解質を含まない灌流液、バイポーラでは電解質を含んだ灌流液を使用します。電解質溶液利用とは、バイポーラ手術装置を用いた手術を表しています。当科では、それぞれの装置の特性と患者さんの状態を考慮して最も適した装置を選択しています。 3位の腎および腎尿管の悪性腫瘍に対する手術では、腹腔鏡下小切開手術が標準的治療法として行われています。この手術は従来の開放手術の安全性と、腹腔鏡手術の低侵襲性の両者を取り入れた手術方法です。手術関連機材や術式は常に改良・発展がつづいており、当科ではこれらの進歩が患者さんの安全性の向上や侵襲性の低減につながっていくように考慮しつつ手術にあたっています。 5位の経尿道的前立腺手術は、前立腺肥大症による排尿障害を改善させるために行われる手術です。この手術では、前述の電解質を含まないかん流液が静脈内に入って低ナトリウム血症という合併症を起こしやすいため、それを予防するために電解質を含んだかん流液を用いることが多くなり、これによって手術の安全性が向上しました。 産婦人科
聖マリアンナ医科大学病院産婦人科は産婦人科診療の4本柱である「周産期」「生殖」「婦人科」「女性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡手術」「遺伝子診療」の6領域全てに対応することが可能なスタッフを有しています。特に川崎市の周産期医療における最後の砦の施設であることから、平成29年度の手術トップ5に周産期関連の手術がランクインしています(帝王切開術(選択帝王切開)、帝王切開術(緊急帝王切開))。また、日本産科婦人科内視鏡学会内視鏡技術専門医も複数有しており、積極的に低侵襲手術を患者さんに適応するべく良性腫瘍のみならず悪性腫瘍に対する内視鏡手術も行っています。そのため、子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡によるもの)が上位にランクインしています。また、適応によっては開腹手術を選択する必要性もあることから、子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(開腹によるもの)がランクインしています。当院は日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医が複数在籍しており、婦人科悪性腫瘍を中心とした婦人科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しております。その為、平成29年度の手術トップ5に婦人科手術がランクインしています(子宮頸部(腟部)切除術)。
眼科
当科で行われる網膜硝子体手術は糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前膜、黄斑変性、網膜剥離、硝子体出血などを始めとして、網膜硝子体疾患全般に渡っております。ほぼ全例で世界最小27Gの手術を得意としており、論文作成などにより世界の潮流をリードしていると自負しています。
緑内障に関しては、複数回の手術をされている難治性緑内障の患者さんを多数ご紹介頂き、広い地域のラストホープとして機能していると考えています。 耳鼻咽喉科
内視鏡下鼻・副鼻腔手術(慢性副鼻腔炎の手術など)は入院日数を約5日間程度と入院期間短縮を心がけております。また、合併症リスクが高い症例などはナビゲーションシステムを用いて手術を行っております。
口蓋扁桃摘出術(慢性扁桃炎の手術など)は術後出血の合併症を早期に発見し対応するため術後日数が7日間としております。また、子供に対して手術することも多いため、平均年齢も他と比べると低くなっています。 鼓室形成術(慢性中耳炎の手術など)は可能であれば内視鏡を用いて外耳道経由で手術を行い、より低侵襲かつ入院期間短縮(約5日間程度)を心がけております。 声帯ポリープや喉頭乳頭腫などの喉頭微細手術は約3日間の入院としております。 頭頸部がんでは、喉頭全摘術や再建を必要とする手術では1か月以上の入院となることがあります。咽頭の表在がんに対し、消化器内科と協力して経口腔手術をおこなっております。 放射線科
塞栓物質を挿入し、血管を詰める治療を血管塞栓術といいます。肺動静脈奇形の塞栓術では鼠径部の静脈から2㎜径程度のカテーテルを挿入し、肺動脈と肺静脈との交通の部分にコイルやプラグなどを留置し、交通を閉鎖します。治療の1日前、あるいは当日に入院し、術後1~2日程度の入院で治療を施行します。体の表面に傷はほぼ残らず、合併症も少なく、体に優しい治療です。その他に四肢・軟部の動静脈奇形に対しても塞栓術を施行し、同様に動静脈の交通を塞栓物質で閉鎖します。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
肝損傷などの重篤な外傷や、肝臓がんや膵がん、肺がんあるいは心臓血管外科疾患などの大手術後に血液の凝固に異常をきたす播種性血管内凝固症候群がおこることがあります。また、色々な感染症などから血液中に病原菌が入り敗血症になり、これが原因で播種性血管内凝固症候群がおこることもあります。当院は数多くの併存症を持った患者さんの手術を行っています。このためこれら手術後等に播種性血管内凝固症候群を合併することもあります。また当院は重篤な患者さんを主に受け入れる救命救急センター(3次救急)があり、他の病院で播種性血管内凝固症候群を合併した患者さんの治療目的で紹介され入院する場合も多くあります。
「入院契機と同一」とは、入院時すでに播種性血管内凝固症候群と診断された患者数さんで、10名未満でした。一方、「入院契機と異なる」とは、入院した時には別の病気で入院しましたが、入院中に播種性血管内凝固症候群をおこし、この治療の方に時間・医療費が必要であった場合で17名の患者さんがいました。平成28年度と比べると若干増加している傾向です。 敗血症の患者数は、入院した時から敗血症と診断された患者さんが46名、入院した時には別の病気で入院したが、その後に敗血症をおこした患者さんが71名で、その発生率は0.33%でした。 入院した時から真菌感染症と診断された患者さんは10名未満、入院した時には別の病気で入院したが、その後に真菌感染症をおこした患者さんは10名未満でした。 「手術・処置等の合併症」では434名が入院していますが、これは腎臓・高血圧内科の入院治療で、透析を行うために必要なシャントが血栓などで閉塞し使用できなくなり、その治療(経皮的シャント拡張術・血栓除去術)を行う患者さんが多いためです。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」で示しています。 更新履歴
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