年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
平成28年度に当院を退院された患者さんは21,189人で、27年度と比べると383人増えてますが、28年度がうるう年で1日多かったことの影響も多少あります。 1日あたりの平均でも27年度に比べると1名増えて、58人の患者さんが退院されています。当院は幅広い年齢層の患者さんが入院されておりますが、最も多い年齢層は70~79歳で5,001人(24%)でした。少子高齢化の時代といわれておりますが、60歳以上の患者さんの割合は57%と、この数年変わりありません。総合周産期母子医療センターを有する当院は小児医療も充実しており、0~9歳の患者さんは7.9%を占めます。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
呼吸器内科
1、3、4位は高齢化社会における肺がんの患者数の増加を反映した、検査および治療目的の入院によるものと考えます。様々な抗がん剤の導入による生命的予後の改善が治療期間の延長にもつながっていると思われます。2位の間質性肺炎の増加はニンテダニブ導入に伴う有害事象、特に肝機能障害の有無の観察のための入院によるものと考えます。
循環器内科
日本人の死因の第2位が循環器疾患であり、中でも虚血性心疾患は生活習慣病から進展することが多く、当科では早期診断を心がけております。冠動脈疾患に対しては、複雑な病変でなければカテーテルによる冠動脈治療を行います。冠動脈造影と治療はいずれも3日程度の入院で行っています。
また、高齢化に伴い心房細動という不整脈疾患が増加し、これが脳塞栓の原因となり得るため、当科では発作性心房細動を中心にカテーテル心筋焼灼術を積極的に行っています。入院期間は4日程度であり、術後は近隣の医療機関とパスによる連携に取り組んでおります。脈が遅くなるタイプの不整脈疾患に対する治療法は、ペースメーカの植え込みが必要となります。1回の植え込みで数年の間は電池寿命が保たれます。約1週間の入院期間を要します。 昨年より当院では重症な大動脈弁狭窄症に対して、経カテーテル的大動脈弁置換術が行えるようになりました。従来の心臓手術とは異なり、血管内から治療することが出来る画期的な方法です。通常の手術方法では治療困難な方に施されるため、後期高齢者が対象となることが多いです。 消化器・肝臓内科
当科に入院する患者さんのうち頻度の高い疾患は、胆管結石・胆管炎、肝がん(肝・肝内胆管の悪性腫瘍)、胃がん(胃の悪性腫瘍)、大腸憩室炎(腸炎の一種)です。当科では消化管班、肝臓班、胆膵班の3つの診療グループが、これら代表疾患をはじめ、各疾患に対して高い専門性をもった医療を提供しております。
腎臓・高血圧内科
日本人の高齢化により、慢性腎炎に加えて、高血圧・動脈硬化性疾患の最終像としての腎不全は年々増加しています。実際、最新の日本透析医学会の統計調査では、日本の透析患者は32万人を超えたことが報告されました。当科のDPC病名として最も多いのが腎不全や腎不全関連手術(動脈形成術、吻合術)であることもそれを示唆するものです。さらに、高齢化によるポリファーマシー、腎機能低下例の増加が急性腎障害(腎不全)の頻度をかなり増加させています。勿論、当科では従来の腎炎に対する診断(腎生検)や治療も多く行っていますが、加えて、腎不全の進行を抑制することを目的とした慢性腎臓病教育入院の実施、透析を行うために必須である透析アクセスの造設や維持(それぞれ内シャント設置術、内シャント血栓除去術)のための外科的アプローチ、急性腎不全の治療や予防など、多岐にわたる腎疾患に対応し、地域の腎不全患者さんの総合医・かかりつけ医としての役割を果たし、患者さんの利便性を高めるようにしております。
代謝・内分泌内科
糖尿病センターは健診で初めて指摘された糖尿病予備群から急激に糖代謝が悪化する劇症1型糖尿病に至るまですべての糖尿病患者さんを診療する体制が整っております。とりわけ糖尿病患者さんの教育に積極的に取り組んでおり、医師、看護師、薬剤師、栄養士で構成されたチーム医療で生活習慣の改善指導、合併症の治療を行っております。 また近年8人に1人の妊婦さんが妊娠糖尿病になる時代背景を見据え、病院内外の産婦人科と連携のもと安心した周産期、出産が行えるように食事療法の指導やインスリン療法による血糖管理を行っています。また他病棟に入院されておられる糖尿病患者さんに対しても周術期等における血糖管理を行うなど他科と連携医療を積極的に行い、入院加療における医療の質の向上に努めております。
内分泌疾患については近年、高血圧の患者さんにホルモンが関係をする副腎疾患の精査を行うことが増えております。短期間での検査入院で内分泌機能試験、画像検査(CT、MR、シンチグラフィ等)、副腎静脈・海綿静脈洞サンプリング等を実施して的確な診断に努めております。 神経内科
当科において最も多い疾患はパーキンソン病です。脳梗塞と同様に要介護となる可能性の高い疾患です。人口の高齢化とともにこれらの疾患は増加しつつありますが、進行期パーキンソン病であっても、抗パーキンソン病薬を直接腸内に持続注入する治療法でよい成績が得られるようになっています。次に多い疾患は発症3日以内の急性期脳梗塞です。血栓溶解療法や血栓をカテーテルで取り除く超急性期治療を行えば、後遺症を少なくすることができます。行った治療と転帰のデータを常に明らかにし、PDCAサイクルの実行を継続的に実施し質の向上に努めております。
血液内科
当科では悪性リンパ腫を、診断時の病理組織標本に加えフローサイトメトリー法・染色体検査・FISH・遺伝子検査を用い総合的に診断しております。病理医と密に連携し、各々の患者さんに最適な治療法を選択しております。急性白血病の患者さんには、バイオクリーンルームを利用して、標準的な化学療法を施行しております。
リウマチ・膠原病・アレルギー内科
膠原病などの全身性臓器障害を伴う自己免疫性疾患は、診断、病勢・重症度の把握、これに続く寛解導入療法のために入院を要することがあります。当科では、迅速な診断、ステロイド減量を視野においた適切な免疫抑制薬併用の使用、並びに合併症予防策を行うことにより、入院期間を短縮するようにしております。関節リウマチは、生物製剤導入目的や、感染症、間質性肺炎、皮膚潰瘍などの合併症による入院が多くみられています。また、膠原病の代表的合併症の一つである間質性肺炎に対しては、シクロホスファミド点滴療法も積極的に行っております。
腫瘍内科
当科では消化器がんを中心に、化学(放射線)療法、緩和治療を行っていますが、昨今、ほとんどの治療が外来で施行可能となっております。従って、シスプラチンなどの長時間補液を必要とする治療のみが入院の対象となり、食道がん、胃がんの入院が多くなっております。平成27年度は、胃がんに対して、シスプラチンと同系統で外来投与可能なオキサリプラチンの使用が増えたため、入院での治療を受けた胃がんの患者さんは減っています。一方、膵がんでは、強力な多剤併用療法を選択する場合に限り、初回のみ入院で治療を開始しています。当科では、患者さんの生活の質(QOL)をなるべく下げることなくがんの治療を継続することを目標とし、入院期間は患者さんの要望になるべく沿う形で短期間の場合が多くなっております。
小児科
小児科、新生児科において出生体重2,500g以上では重度の呼吸障害、染色体異常症などが増加傾向にあり近隣施設での受け入れが減っていることが予想されます。出生体重1,500g以上 2,500g未満では呼吸障害、低血糖などが多く、対応に苦慮する症例も多くみられました。肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎に関しては、季節性もありますが、RSウィルス感染によるものが増加傾向にあり、乳幼児ではより重症化する症例がみられました。てんかん患者は受診数が増加傾向にあり、発作後の入院、診断確定のための入院が増加したと考えられます。
【新生児科】 当院は総合周産期母子医療センターであり、合併症や胎児の発育不良で紹介される母体が多くなります。その結果として、早産児や低出生体重児といった入院管理を要する新生児が増加します。低出生体重児が多い事については、近年全国的な傾向でもあり、当院での症例数が多い事もその反映であると考えます。 消化器・一般外科
消化器・一般外科が対象となる疾患は、消化器系(食道、胃、小腸、大腸、肝臓胆道、膵臓)の良性および悪性疾患、成人の各種ヘルニア、内・外痔核、痔瘻などの肛門疾患です。予定手術のほか救命救急センターと連携し、緊急手術についても対応しております。平成28年度の病名として多かったのは1位結腸の悪性腫瘍切除、2位虫垂切除、3位虫垂炎保存的治療、4位腹腔鏡下胆嚢摘出術、5位胆嚢炎に対する胆嚢摘出術という結果でした。消化器・一般外科の癌の手術から緊急手術まで幅広く取り組んでいる結果を表していると思われます。
心臓血管外科
当科が対象とする疾患は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)、心臓弁膜症、大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症、静脈瘤など)です。冠動脈バイパス術は9割以上、心臓を止めないオフポンプバイパス術を行っております。傷んだ心臓の弁に対しては、弁形成術や弁置換術を行っておりますが、条件が合う患者さんには術後の早い回復が望める低侵襲心臓弁膜症手術を行っております。また新たに建設したハイブリット手術室において、高齢者やハイリスクな患者さんにカテーテル的大動脈弁置換術を積極的に行っております。大動脈疾患に対しては、人工血管置換術やカテーテルで人工血管を留置するステントグラフト内挿入術を積極的に行い、良好な結果を得ています。
呼吸器外科
当科の治療対象疾患は原発性肺がんが最も多く、手術適応と診断される場合は根治を目指した外科手術をおこなっております。進行例に対しては適切な治療を選択し、まず、術前化学療法、放射線療法などの導入療法を行い、腫瘍を退縮させてから切除を行うこともあります。転移性肺腫瘍にはさまざまな種類があり、多くは他科からの依頼によって手術適応を判断することになります。肺がんは他のがんと比較して手術成績が不良で、術後の再発が多いという特徴があります。術後は外来で定期的検査を行い、再発症例に対しては保存的治療を行います。最近は、分子標的治療の成績が優れていることがわかっており、切除例では必ず肺がんの遺伝子異常を検索し、再発の際に適切な薬剤選択が迅速にできるようにしております。気胸は10代、20代の若年男性に突然発症することの多い疾患です。肺の虚脱によって呼吸困難となることがあり、早急な対応が必要です。
当科では近隣の診療所からの紹介を常時受け付けており、緊急手術にも対応しています。 小児外科
当科で最も症例数が多いのは、鼠径ヘルニアの手術患者さんです。これは平成26年度からDPCの対象から除外されたために表には表れていませんが、106人の患者さんに2泊3日もしくは1泊2日の入院で鼠径ヘルニア手術を行っています(平成28年度診療科別主要手術別患者トップ5参照)。
次いで多い入院患者さんは「その他の消化管の障害 手術なし」で、これは消化吸収を担っている小腸が極端に短いために、口からの食事では十分な栄養が摂取できず入院して点滴治療を受けています。 次に多い入院患者さんは、「虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 定義副傷病なし」で、腹腔鏡下虫垂切除術を行っています。平均在院日数は6.1日間です。「停留精巣 手術あり」も、20人入院しており、2泊3日の入院で精巣固定術を行っています。 「その他の呼吸器障害」とは、出生後間もなくの障害によって気管切開が必要になったお子さんや気管の手術を行なった患者さんたちの検査入院です。全身麻酔で気管支鏡の検査を行っています。 乳腺・内分泌外科
乳がんは現在本邦女性が最も罹りやすいがんで、壮年期(30 代後半から60 代)の女性がん死亡1位の重大な疾患です。当科では診断・治療・ターミナルケアまで一貫した乳がん診療を実践しております。最新の乳がん診療のキーワードは個別化医療とチーム医療です。ステージ(病期)、サブタイプ(乳がんの種類)、患者さんの背景によって治療方法は異なります。それらの評価を正確に行い、手術、化学療法(抗がん剤、分子標的薬)、放射線療法、ホルモン療法、などの集学的治療をチームで実践することによって乳がん克服を目指しております。
脳神経外科
頭蓋・頭蓋内損傷は交通事故が減少しているものの、高齢人口の増加で高齢者の家庭内事故が急増しており、当科は24時間体制で緊急治療に対応しております。脳血管障害には脳出血や脳梗塞があります。当科は開頭手術並びに、血管内治療の専門医が随時緊急の治療に対応しています。特に血管内治療すなわち、カテーテルを用いた治療の件数が増加しています。未破裂脳動脈瘤の治療はくも膜下出血の予防として必須の手術です。世界で最も多く使われる脳動脈瘤クリップは杉田クリップですが、当科の部長は故杉田教授の直弟子で完璧な治療の体制が整っています。脳腫瘍は手術で摘出する治療がすべてでなく、化学療法や放射線治療との複合治療が必要です。当科では化学療法の専門医がおり、放射線科との緊密な連携ができています。
整形外科
当科は、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手)に専門性を有し、変性疾患やスポーツ障害、外傷など近隣地域よりの紹介を多数いただいております。また、救命救急センターを併設しているため、救急外傷も数多く搬送されてきます。医療の進歩により高齢者が年々増加しており、それに伴い、大腿骨頸部骨折や橈骨遠位端骨折(前腕骨折)を呈した患者様も多くなっております。当科では、外傷疾患では緊急手術を含む、早期対応をおこない、変性疾患ではエビデンスに基づく治療を心がけ、早期機能回復に努め、ADL(日常生活動作)の獲得、QOL(生活の質)の向上を目指しています。
形成外科
当科では顔面をはじめとして体表面のあらゆる変形を扱っており、先天性の変形から病気や外傷の手術後の後天性変形まで広く再建、形成手術を行っています。特に乳癌切除後の乳房再建では、自家組織と人工乳房の両方の手術を行っており、乳頭乳輪形成に至るまで独自の手術で、術前にできるだけ近い乳房の再建を目指しています。また、当科では長年、培養表皮移植や多血小板血漿(PRP)治療などの先進医療に取り組んで来ており、皮膚の良性・悪性腫瘍に対して、単に腫瘍を切除するだけでなく、できるだけきれいな傷痕になるように努力しています。その他、高齢者を中心に眼瞼下垂の症例が増加しており、症状に応じて種々の術式を駆使し、良好な結果を得ています。
皮膚科
1位の帯状疱疹は、どこの病院の皮膚科でも入院患者さんの多くを占めている疾患です。抗ウィルス薬を連日点滴し1週間程度の入院治療を行います。同じく1位の急性膿皮症は具体的には蜂窩織炎や丹毒であり、外来治療では不十分な重症患者さんを入院治療しております。通常、1週間から2週間の入院を要します。3位の皮膚悪性腫瘍切除はいわゆる皮膚癌の手術で、当科には近隣より多くの患者さんが紹介されてきます。4位の薬疹・中毒疹は、重症薬疹ないしそれに進展する可能性があると思われる患者さんで、入院治療が必要な患者さんを治療しています。5位の自己免疫性疾患とは血管炎や膠原病であり、当科ではこれらの治療に力を入れているため、患者数が多くなっております。
腎泌尿器外科
平成28年度において、当科で最も症例数が多かったのは何らかの原因で尿路の通過障害を起こしている水腎症の症例でした。水腎症の原因には、尿路結石、尿路のがんや他の悪性腫瘍の尿管周囲への転移・浸潤、長期間にわたる排尿障害などがあります。水腎症は放置すると腎機能低下の原因となりうるので、通過障害の部位を的確に診断し、それを解除することが重要です。次に多いのは膀胱腫瘍で、膀胱内視鏡手術を行うものでした。膀胱腫瘍は再発性が強く、内視鏡手術を繰り返し行う症例も多数見られます。また、超音波やCTなどの画像診断の普及により、偶然発見される腎がんも多数見られます。腎がんの治療は患者の年齢や期待余命、がんの大きさや位置などによって総合的に決定されます。腎臓の感染症の多くは腎盂腎炎です。腎盂腎炎自体に対する手術の必要はなく、抗生物質の投与、補液などを行います。
産婦人科
聖マリアンナ医科大学病院産婦人科は産婦人科診療の4本柱である「周産期」「生殖」「婦人科」「女性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡手術」「遺伝子診療」の全てに対応することが可能なスタッフを有しています。特に川崎市の周産期医療における最後の砦の施設であることから、平成28年度の病名トップ5に周産期関連の疾患がランクインしています(胎児及び胎児付属物の異常 子宮全摘術等、ならびに早産、切迫早産 手術なし 手術・処置等2なし)。また、当院は日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医が複数在籍しており、婦人科悪性腫瘍を中心とした婦人科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しております。その為、平成28年度は婦人科悪性疾患が病名トップ5にランクインしています(子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2-4あり 定義副傷病なし)。また、婦人科良性疾患に対する診療も同様に積極的に行っているため、良性疾患(子宮の良性腫瘍 子宮全摘術等)も平成28年度の病名トップ5にランクインしています。さらに、日本産科婦人科内視鏡学会内視鏡技術専門医も複数有していることから、昨今婦人科疾患の中でも良性疾患に対する腹腔鏡手術による手術数も増加しています(卵巣の良性腫瘍 卵巣部分切除術(腟式を含む。)腹腔鏡によるもの等)。
眼科
白内障手術は、平成26年度からDPCの対象から除外されたために上記のDPCのトップ5には入っておりませんが、当科では、年間 1,100 件以上の白内障手術を施行しております。全身に合併症がある方でも対応できるように1~2 泊の入院で行っており、高度先進医療である多焦点眼内レンズを用いた白内障手術にも対応しております。また、眼科的に高度な技術を要する網膜硝子体手術は年間600 件以上、最新のチューブシャント手術を含む緑内障に対する手術も年間150件以上施行しております。また、これらの疾患がいくつか併発しているような難しい症例に対する併用手術なども積極的に行っております。また、近年増加傾向にある加齢黄斑変性に対しては最新型の光干渉網膜断層撮影装置、フルオレセイン蛍光眼底造影による正確な診断のもと、抗VEGF 治療薬を中心とした治療を行っております。
耳鼻咽喉科
急性扁桃炎や急性咽喉頭炎は外来治療で改善が乏しい方や経口摂取が困難な方に入院での治療を行い、扁桃周囲膿瘍はほぼ全ての方に対し入院をおすすめしています。
慢性副鼻腔炎の手術は入院日数を約5日間程度と入院期間短縮を心がけております。 突発性難聴は軽症例を除き基本的に9日間のスケジュールで入院点滴治療を行っております。改善が乏しい場合に追加の点滴治療や鼓室内にステロイド注入を6日間行ことがあります。 慢性扁桃炎の手術は術後出血の合併症を早期に発見し対応するため術後日数が7日間としております。また、子供に対して手術することも多いため、平均年齢も他と比べると低くなっています。 鼓室形成術(慢性中耳炎の手術など)は可能であれば内視鏡を用いて外耳道経由で手術を行い、より低侵襲かつ入院期間短縮(約5日間程度)を心がけております。 放射線科
対象疾患は血管奇形です。放射線科が担当する血管奇形には主に肺動静脈奇形(瘻)、四肢・軟部の血管奇形などがあります。肺動静脈奇形は、毛細血管を介さず肺動脈から肺静脈へ直接交通をもつ先天的な血管形成異常です。自覚症状に乏しく、健診で偶然発見される場合も多いですが、脳膿瘍、脳梗塞や低酸素血症による労作時息切れ、チアノーゼなどが問題となります。四肢・軟部の血管奇形にはさまざまなタイプがありますが、血管の拡張・血栓形成・虚血などにより、疼痛・腫脹・出血・潰瘍などの症状をきたします。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 麻酔科
パーキンソン病は、ふるえ、身体が固まる、動きが遅くなる、転びやすくなる、という症状を主とする脳神経の変性疾患です。身体が固まることで背骨の変形が進み、腰や背中に強い痛みが発生することがあります。これにはまず内服治療を行いますが、症状が非常に頑固な場合、神経ブロックや入院加療を行うことが、まれながらあります。
遺伝性ニューロパチーは、症状の特徴と遺伝形式で分類される神経疾患で、運動神経と感覚神経両方の障害、運動神経のみの障害、感覚神経と自律神経の障害など様々な病像の疾患が含まれています。遺伝子の異常で生じ、その原因遺伝子が特定されているものもありますが、同じ遺伝子の異常でも病型が異なることが知られています。どの部位のどの種類の神経が障害されているかでも症状は異なります。感覚神経の障害で痛みやしびれが強い場合、まれなことですが、入院治療を行うことがあります。 閉塞性動脈疾患は、動脈が狭くなることや閉塞することで、それよりも先の部分に血液が十分に行き渡らなくなる病気で、血流が不十分になった部分には痛みが生じます。痛みの治療は、根本的な解決である血流の改善と症状に対する治療の鎮痛薬投与があります。治療を段階的に進めていくなかで、他の治療の効果が奏功しない場合や薬剤の副作用などで治療が難しい場合には、麻酔科医が神経ブロックを行って血流改善と鎮痛を図ることがあります。このとき、入院して治療を行う場合があります。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
【胃がん、大腸・結腸がん、肝がん】
胃癌はStageⅠでの治療が最も多く、内視鏡での検診が広まっていることが早期発見早期治療につながっている可能性が高いと思われます。しかし次に多いのはStageⅣとかなり進行した状態での治療となっています。大腸癌は胃癌に比較してStageⅠでの早期の治療は少ない現状です。検診のさらなる啓蒙、普及が必要です。肝臓癌はC型肝炎ウィルスの治療技術の進歩により、原発性肝癌(肝細胞癌)は減少し、転移性肝癌特に大腸癌肝転移が増加傾向にあります。したがって肝癌の総数は昨年とほぼ同じ結果でした。 【乳がん】 乳がんの自覚症状で最も多いのは乳房内の腫瘤(しこり)です。乳房は体表面に位置するため、患者さんご自身でしこりを触知して発見される頻度が高くなっています。また、乳がん検診(マンモグラフィなど)の普及により、自覚症状が無く発見される症例も増えてきております。その結果、Stage I, Ⅱと比較的早期に発見される乳がんが大半を占める状況となっています。一方、当院では、他施設で治療(手術など)を受けられた後に再発した乳がん患者さんも受け入れ、薬物療法始め積極的に集学的治療を行っております。 【肺がん】 原発性肺がんは5大がんの一角を占め、本邦における全がん死亡患者数の第1位を占めています。肝臓がんや膵臓がんなどと共に治りにくいがんのひとつに数えられています。病期別にみると最も治療成績がよいのは完全切除が期待できるStageⅠAで、完全切除後の5年生存率は90%前後です。病期の進行とともに術後再発率が高まり、生命予後が悪くなります。診断時の病期がStageⅢA以上になると手術適応から外れ、手術以外の治療に頼ることが多くなります。当院の症例でもStageⅢやすでに遠隔臓器への転移を認めるStageⅣが多いことからわかるように、診断時にはすでに進行例が多いことが治療成績を悪くする大きな原因になっています。症状がなくても健康診断を受け、胸部エックス線写真や、胸部CTで早期の肺がんを発見し、迅速に診断、治療を行うことが治療成績向上の鍵となります。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
近年の高齢化を背景に高齢者~超高齢者の肺炎が増加しています。特に誤嚥性肺炎は再燃を繰り返し、その治療中に筋力や意欲の低下を来し、もとの生活に戻るまでに日にちを要する方も多くみられます。中等症レベルの肺炎でも入院期間が比較的長いのはその理由もあるように考えております。重症・超重症の肺炎患者さんは肺炎の治療のみならず、併存症の治療を必要とすることが多く、入院期間が長期に及ぶことが多いと考えられます。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 A-DROPの指標 Age(年齢):男性70歳以上、女性75歳以上 Dehydration(脱水):BUN 21mg/dL 以上または脱水あり Respiration:Sp02<=90%(PaO2 60Torr以下) Orientation(意識障害):意識障害あり Pressure(収縮期血圧):収縮期血圧90 mmHg 以下 ※5点満点で、1項目該当すれば1点、2項目該当すれば2点 軽症:0点の場合。 中等症:1~2点の場合。 重症:3点の場合。 超重症:4~5点の場合。ただし、ショックがあれば1項目でも超重症とする。 不明:重症度分類の各因子が1つでも不明な場合。 脳梗塞のICD10別患者数等ファイルをダウンロード
一過性脳虚血発作は、脳梗塞が切迫していることを示す発作です。これを見過ごすと、高率に脳梗塞に移行しますので、当科(神経内科)が作成したトリアージ基準に基づいて24時間いつでも、直ちに診断・治療を行っています。当院は、脳卒中集中治療室(SCU)を設置し、超急性期血栓溶解療法、カテーテルによる血栓回収療法には24時間365日対応し、高度の合併症を有する脳卒中にも対応可能です。病状が安定し次第、急性期リハビリテーションをおこなうべく病棟内にリハ訓練室を備えています。先進の診断技術により迅速に脳卒中診断を行い、多職種によるチーム医療により、治療効果を上げています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
呼吸器内科
平成27年度から気管支喘息に対する気管支鏡的治療である気管支熱形成術が保険適応となり、当院でも平成27年6月より開始し、順調に件数を伸ばしております。中枢気道狭窄病変に対する気管支鏡的治療はこれまでも多くの医療機関より症例の御紹介を頂いております。気管支鏡を使用した治療的介入は今後も引き続き力を入れていきたいと思います。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 循環器内科
K5951 不整脈の中で最も多い心房細動に対しては、心房細動が起きていると思われる4本の肺静脈と左心房の間に心臓の内側から高周波もしくは冷却焼灼を行い、根本的な治療を目指しています。どちらの治療も体に目立った傷が残りません。
K5493 虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞がありますが、どちらも詰まっているもしくは詰まりかけた冠動脈を広げることが必要です。当院では外来の検査で必要と判断された方のみにカテーテル検査を行い、狭い血管がどこにあるのかを診断し、狭い部分を風船で広げた後にステントという薄い金網を内張りします。ステントは狭くなりにくい薬剤溶出性ステントを使用することが多く、2泊3日程度で退院出来ます。 K555-22 年齢と共に固くなった大動脈弁に対して、開心手術という方法では無く、通常のカテーテル検査や治療と同じやり方で、動脈血の流れに逆行させながら風船の上にたたまれた生体弁を適切な場所へ持っていき、留置する治療法です。外科的手術のような大きな傷が残りませんので1週間ほどで退院出来ます。 K616 下腿や下肢、その他の末梢動脈の細くなった場所に対して、冠動脈と同じように血管内形成術を行います。2泊3日で行います。 K5952 心臓の中に通常のリズムとは異なる発電箇所や電気の通り道に対して、心筋の内側からもしくは心臓の外側から高周波カテーテルを用いて焼灼する治療です。3〜4日の入院が必要です。 消化器・肝臓内科
当科で高頻度に行っている手術は、大腸腺腫症に対する内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術や、胆管結石や悪性胆道狭窄に対する内視鏡的胆道ステント留置術、胃潰瘍などによる消化管出血に対する内視鏡的消化管止血術、肝がんに対する肝動脈化学塞栓術、胃や十二指腸の悪性腫瘍に対する内視鏡的切除術です。内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術は、原則拡大内視鏡を用いて治療適応を正確に判断した後に切除を行っております。内視鏡的胆道ステント留置術は、悪性胆道狭窄や胆管結石、胆管に対する内視鏡的治療です。内視鏡的消化管止血術は昼夜問わず、緊急で行う内視鏡的治療です。ESDといわれる内視鏡的粘膜切除術は胃や十二指腸などの悪性腫瘍に対する内視鏡的手術です。これら内視鏡的治療は消化管班、胆膵班によって専門性の高い治療が行われます。肝動脈化学塞栓術は肝がんに対する治療の一つです。消化器一般外科、放射線科といった複数の診療科と連携を取り各患者さんの病状にあった適切な治療を合議し各診療科と協力し肝動脈化学塞栓術をはじめとする肝がん治療を行っております。
腎臓・高血圧内科
当科は患者さんの利便性向上のため、又、透析患者さんのかかりつけ医としての役割を果たすため、透析アクセス関連手術(経皮的シャント拡張術・血栓除去術、内シャント設置術、連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術、上腕動脈表在化法、内シャント血栓除去術など)を内科でありながら積極的に行うようにしています。透析アクセスは、十分な透析を負担なく行うための患者さんにとって命綱のような大切なものです。特に、高齢化により良好な透析アクセスが得られない、あるいはアクセスの開通にトラブルを起こす患者さんが多く、近隣の透析施設が大学病院に期待する治療として、これらの手術が重要な意味を持っています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 代謝・内分泌内科
糖尿病は血管合併症の病態であり、長期にわたり糖尿病を患うことで細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)、大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)などを起こします。糖尿病センターでは、入院された患者さんの細小血管障害や大血管障害の進展の状況を把握するようにしております。
このため手術・処置においては糖尿病を基礎疾患にある患者さんが他の疾患を併発した場合に行われることがあります。糖尿病患者さんが緊急の重症な併発疾患を伴った状況において、救命救急処置として気管切開術(気管内挿管が長期に及んだ場合)、中心静脈注射植え込み型カテーテル設置を行われる場合があります。糖尿病網膜症につきましては、入院時に眼科との連携のもと網膜症の評価を行います。網膜症がみられた場合には、当科で血糖値の改善を図るとともに、網膜光凝固術などの眼科的処置による治療を行うことで網膜症の進展を予防いたします。また、糖尿病、高血圧、脂質異常症を基点とした動脈硬化性の進行により生じた血管病変については循環器内科と連携のもと、大動脈バルーンパンピング等での循環動態の管理や、カテーテルを用いて経皮的に血管拡張術を行うことで血流の改善を図る治療を行っております。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 神経内科
進行期のパーキンソン病では高率に嚥下障害を伴うようになり、服用していたパーキンソン病の薬を飲むことができなくなる場合があります。パーキンソン病患者さんにとって経口治療薬は、動くことができる状態に保つ上で不可欠ですから、お薬が飲めない方の中には、胃瘻造設によって服薬を続け、運動障害を克服する選択を行う必要のある方がおられます。神経疾患で呼吸ができなくなると、気道に管を入れて呼吸を助ける場合があります。しかし口から管を入れておける期間には限界があり、気管切開術を要する方もおられます。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 血液内科
当科の観血的手技・処置では、化学療法と高カロリー輸液のための中心静脈カテーテル挿入・留置が最多です。易感染性宿主の感染源とならぬ様、抗菌性皮膚貼付用テープを採用し、固定法を工夫しております。リンパ節摘出術は主に悪性リンパ腫の診断目的にて行われています。悪性リンパ腫・骨髄腫の患者で65歳以下の症例では必要に応じて自家末梢血幹細胞移植を施行しております。長期の人工呼吸が必要となった症例には気管切開術が行われています。消化管出血にて緊急の止血処置が必要な場合には内視鏡的消化管止血術が行われます。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
当科では、呼吸管理のために行われた気管切開術が最も多い手術となります。膠原病は、時に重篤な呼吸器合併症を呈することが有り、長期の人工呼吸器管理が必要な状況では、気管切開術を施行することがあります。
経口での栄養摂取が困難な方には胃瘻造設術が行われることがあり、二番目に多い手術となります。そのほか、上部消化管内視鏡での異物摘出や、ポリープ切除も行われています。腹腔膿瘍を認めた患者さんでは、経皮的にドレナージも行われています。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 腫瘍内科
腫瘍内科では消化器がんを中心に、化学(放射線)療法、緩和療法を行っていますが、手術手技として行われるものとしては、腫瘍による胆道閉塞や尿路閉塞に対するステント留置術や、食事摂取不良に対する中心静脈栄養用植込型カテーテル設置が多く行われています。前者は緊急で行うことが多いので術前の入院日数は短いですが、後者は緩和治療として行う場合が多いので、全身状態をしっかり評価してその必要性を見極めるために、術前の入院日数が長めになっています。また、外科や放射線科と連携し、当科入院中に手術や肝動注療法を行うこともあります。全身状態の回復を待って、在宅で安心して過ごせるように体制を整えてから退院するようにしていますので、術後の入院日数は長めになっています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 小児科
合併症のある新生児の入院が増えたことにより新生児仮死に対する対応も増加していると考えられます。新生児仮死蘇生術はそれにより増加傾向にありました。小児の先天奇形の中では、先天性心疾患が多く心臓カテーテル検査は診断にとって重要であり、近隣からの紹介も増え、それに伴って手術症例も増加しております。乳幼児では、より重症例が多く、人工心肺を使用する症例がみられました。肺動脈絞扼術は他施設での施行例が減少しているため、症例数が増加傾向にあります。また、受け入れの多い低出生体重児においては酸素を使用することが多く、それに伴い発症する未熟児網膜症に対する網膜光凝固術も増加傾向にあります。
【新生児科】 新生児仮死は、分娩前・中に状態が悪くなるために発生する病態です。当院は総合周産期母子医療センターで、より重症な妊婦、新生児を管理していることを反映している結果と考えています。仮死第1度と仮死第2度は重症度の違いによる分類で、第2度はより重症な仮死である事を示します。 肺動脈絞扼術は、肺うっ血を来す先天性心疾患に対して肺に血液が流れにくいように肺動脈を絞める姑息的な手術です。新生児期に根治手術を行う事が難しい場合に選択されます。総合周産期母子医療センターであり、先天性心疾患を有する新生児が数多く入院しているため、同手術が多くなります。 網膜光凝固術は、未熟児網膜症に対して、状態を安定させるために行う手術です。未熟児網膜症は過剰な酸素投与によって発症しやすいと言われています。早産児では酸素化が不安定で、その調整のため酸素投与量が多くなる傾向にあります。同治療が多い事は、より重症な児を管理していることを反映している結果であると言えます。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 消化器・一般外科
消化器・一般外科が対象となる疾患は、消化器系(食道、胃、小腸、大腸、肝臓胆道、膵臓)の良性および悪性疾患、成人の各種ヘルニア、内・外痔核、痔瘻などの肛門疾患です。予定手術のほか救命救急センターと連携し、緊急手術についても対応しております。平成28年度の手術として多かったのは1位腹腔鏡下胆嚢摘出術。2位鼠径ヘルニア、3位腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術、4位内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除、5位腹腔鏡下虫垂切除術という結果でした。消化器・一般外科の癌の手術から緊急手術まで幅広く取り組んでいる結果を表していると思われます。
心臓血管外科
傷んだ心臓の弁を生体弁や人工弁へ取り換える弁置換手術、傷んだ弁を直す弁形成術、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術などは人工心肺を使用して行っています。
下肢静脈瘤に対しては、ラジオ波を用いたカテーテル治療の下肢静脈瘤血管内焼灼術を行っています。従来の下肢静脈瘤抜去術と入院日数は変わりませんが、術後の回復が早いのが特徴です。 腹部大動脈瘤や胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術も積極的に行っています。大動脈瘤に対して、小さな皮膚切開からカテーテルを使って血管内に人工血管を置く手術で、体への負担が少なく、高齢者など体力のない患者さんに適しています。 冠動脈バイパス術は9割以上、心臓を止めないオフポンプバイパス術を行っております。 呼吸器外科
当科で最も多い手術は原発性肺がんに対するもので、これに転移性肺腫瘍を加えた肺の悪性腫瘍に対し、腫瘍進行度と悪性度及び患者さんの耐術能を吟味した最適な術式選択を心掛けています。すなわち、原発性肺がんで、肺機能に問題がない患者さんに対しては、標準手術としての肺葉切除とリンパ節郭清術が行われます。一方、高齢者や肺機能の悪い患者さんに対しては、次善の策として肺の切除範囲を縮小した肺区域切除や肺楔状(部分)切除を行っています。これら手術は胸腔鏡を使用して皮膚切開創を小さくして行うことが多くなりましたが、手術の安全性を第一に考えて術式を選択しています。また、若年男性に突発的に生じることが多い自然気胸に対する根治手術として、原因となる嚢胞の胸腔鏡下切除を行っています。入院期間の短縮を心掛けていますが、肺がんは高齢者に発症することが多く、術後の回復が遅れやすかったり、ひとり暮らしの方も少なくないため、やや術後の在院日数が長くなる傾向にあります。
小児外科
当科では、鼠径ヘルニア、陰のう水腫、停留睾丸、臍ヘルニア(でべそ)など小児外科の一般的な手術だけでなく、急性虫垂炎や腸重積症などの救急疾患、新生児外科疾患、小児呼吸器外科疾患、小児悪性腫瘍に対しても、積極的に手術を行っています。また手術の傷が目立たないように腹腔鏡下手術や小切開手術に積極的に取り組んでいます。
最も多い手術は鼠径ヘルニアで平成28年度は84例です。次いで腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの)53例、停留精巣固定術20例と続きます。 乳児の腸重積症の多くは、高圧浣腸という手術ではない方法で整復しますが、治らない場合はそのまま手術が必要になる病気です。手術による整復も当院で行うことができます。 食道や気管の手術の後で、食道や気管が細くなってしまうことがあります。当院では全身麻酔による安全な拡張術を行っております。 乳腺・内分泌外科
乳がん(乳腺悪性腫瘍)に対する手術の入院日は通常合併症等がなければ、前日入院で行っています。乳房部分切除術(乳房温存手術)は術後入院期間も2.4 日と短く、低侵襲な手術といえます。乳房切除術の場合は、皮下に排液用のドレナージ・チューブが入り抜去後退院ということで、1週間程度の入院が必要です。腋窩リンパ節郭清が加わった場合や乳頭乳輪を温存する乳房切除の場合には、ケアが若干増えるためか、入院日数が2日間程度長くなる傾向があります。また、同時に乳房再建術を行うことで5日間程度入院期間が長くなります。
脳神経外科
慢性硬膜下血腫は低侵襲な治療が可能な疾患です。当科は地域の中核病院として多くの紹介患者さんを受け入れています。術後早期からの症状回復が期待できるため短期間の入院で治療が完了します。ただし昨今は超高齢者の難治例も増えており、血管内治療の併用が必要な例が増加しています。
脳腫瘍や脳動脈瘤などの頭蓋内病変は高度な医療技術が要求されます。当科は高度医療機関病院として各種の先端医療機器の使用だけでなく、複数の診療部門から構成される包括的チーム医療を提供しています。術中の脳神経機能保護に重点を置いた術前検査を重視しており、高度な術前準備を行うことで良好な治療成績が得られております。また機能障害を有する症例では術後の療養を要することも多く、周術期からのリハビリテーションを実施して中長期的な病状回復に努めております。 水頭症は手術で治る認知症の一つです。シャント管を体内に埋め込む方法と内視鏡で治す方法があります。当科ではいずれの治療にも長けた専門医が複数在籍しています。 整形外科
当科では、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手)の疾患に対し、各専門班が手術を担当しております。上位5位手術以外でも、人工関節置換術や脊椎手術、関節鏡手術も積極的におこなっております。大学病院という特性上、近隣病院では対応困難な重篤な合併症をもっている患者様を受け入れている関係で、平均術前、術後日数がやや長くなっております。地域回復期リハビリ病院との連携のもと、術前のADL(日常生活動作)に近づけるように努力しております。
形成外科
当科では顔面の先天性、後天性変形に対する手術や、皮膚腫瘍、皮膚欠損に対する手術を多く行っています。特に乳癌切除後の乳房再建は、人工乳房(インプラント)と自家組織移植の両方の再建術を行っており、再建数とその仕上がりの美しさは日本でトップクラスの成績を誇ります。当院で行う乳房再建は、人工乳房と自家組織による再建のいずれでもパッチワーク状瘢痕を作らず、再建したことが分からない美しい乳房を再建します。この他、顔面の骨折・けがや傷あとの修整でも多くの手術を行っており、良好な結果を得ています。
皮膚科
1位の皮膚悪性腫瘍切除術は悪性黒色腫、基底細胞癌、有棘細胞癌などの皮膚がんであり、原則として手術前日に入院となります。単純切除可能なものは平均術後日数も7日と短いですが、3位の全層植皮術(25㎠未満)や5位の全層植皮術(25㎠以上100㎠未満)のように、再建に植皮を要するような大きな腫瘍では10日前後とやや長くなります。2位の皮弁形成術は、腫瘍切除後の再建に局所皮弁を用いる手術で、植皮より入院日数が短くできる利点がありますが、比較的小さい腫瘍に限られます。4位のリンパ節摘出術は、術後の安静を要するため入院で行うことの多いものですが、術後は平均4日で退院となっています。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 腎泌尿器外科
尿管ステント留置術とは、何らかの理由(結石・がん・その他)で尿管の通過障害を起こしている場合に、緊急処置として尿管の通過障害を解除するため、ステントと呼ばれる管を腎臓と膀胱の間に挿入することを言います。通過障害を放置すると腎機能の悪化を招くので、通過障害の解除は大変重要な処置です。膀胱腫瘍に対する経尿道的手術は、診断と治療を兼ねて行われます。膀胱腫瘍は再発傾向が大変強いので、いったん膀胱腫瘍と診断された患者さんは、症状がなくても定期的に内視鏡を行い、腫瘍の再発があれば内視鏡手術で切除します。経尿道的手術で用いられる内視鏡手術装置には、モノポーラとバイポーラの2種類があります。経尿道的内視鏡手術では、かん流液と言う液体を用いて視野を確保しますが、モノポーラでは、電解質を含まないかん流液、バイポーラでは電解質を含んだかん流液を使用します。電解質溶液利用とは、バイポーラ手術装置を用いた手術を表しています。当科では、それぞれの装置の特性と患者さんの状態を考慮して最も適した装置を選択しています。腎および腎尿管の悪性腫瘍、前立腺がんに対する手術では、腹腔鏡下小切開手術が標準的治療法として行われています。この手術は従来の開放手術の安全性と、腹腔鏡手術の低侵襲性の両者を取り入れた手術方法です。手術関連機材や術式は常に改良・発展がつづいており、当科ではこれらの進歩が患者さんの安全性の向上や侵襲性の低減につながっていくように考慮しつつ手術にあたっています。
産婦人科
聖マリアンナ医科大学病院産婦人科は産婦人科診療の4本柱である「周産期」「生殖」「婦人科」「女性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡手術」「遺伝子診療」の全てに対応することが可能なスタッフを有しています。特に川崎市の周産期医療における最後の砦の施設であることから、平成28年度の手術トップ5に周産期関連の手術がランクインしています(帝王切開術(選択帝王切開)、帝王切開術(緊急帝王切開))。また、当院は日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医が複数在籍しており、婦人科悪性腫瘍を中心とした婦人科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しております。その為、平成28年度の手術トップ5に婦人科手術がランクインしています(子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(開腹によるもの)、子宮全摘術)。さらに、日本産科婦人科内視鏡学会内視鏡技術専門医も複数有しており、腹腔鏡手術による手術(子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡によるもの))もランクインしています。
眼科
当科で行われる網膜硝子体手術は糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前膜、黄斑変性、網膜剥離、硝子体出血などを始めとして、網膜硝子体疾患全般に渡っております。特に、視力にとって最も大切な黄斑部網膜の疾患に対する硝子体手術では小切開手術により、低侵襲、短時間手術により早期視力回復、社会復帰が可能となっております。
耳鼻咽喉科
内視鏡下鼻・副鼻腔手術(慢性副鼻腔炎の手術など)は入院日数を約5日間程度と入院期間短縮を心がけております。また、合併症リスクが高い症例などはナビゲーションシステムを用いて手術を行っております。
口蓋扁桃摘出術(慢性扁桃炎の手術など)は術後出血の合併症を早期に発見し対応するため術後日数が7日間としております。また、子供に対して手術することも多いため、平均年齢も他と比べると低くなっています。 鼓室形成術(慢性中耳炎の手術など)は可能であれば内視鏡を用いて外耳道経由で手術を行い、より低侵襲かつ入院期間短縮(約5日間程度)を心がけております。 声帯ポリープや喉頭乳頭腫などの喉頭微細手術は約3日間の入院としております。 頭頸部がんでは、喉頭全摘術や再建を必要とする手術では1か月以上の入院となることがあります。咽頭の表在がんに対し、消化器・肝臓内科と協力して経口腔手術をおこなっております。 放射線科
塞栓物質を挿入し、血管を詰める治療を血管塞栓術といいます。肺動静脈奇形の塞栓術では鼠径部の静脈から2mm径程度のカテーテルを挿入し、肺動脈と肺静脈との交通の部分にコイルやプラグなどを留置し、交通を閉鎖します。治療の1日前、あるいは当日に入院し、術後1~2日程度の入院で治療を施行します。体の表面に傷はほぼ残らず、合併症も少なく、体に優しい治療です。その他に四肢・軟部の動静脈奇形に対しても塞栓術を施行し、同様に動静脈の交通を塞栓物質で閉鎖します。
※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 麻酔科
痛みの信号は、身体の隅々から末梢神経、脊髄を経て脳に伝わり、私たちは痛みを認識します。その経路である脊髄に弱い電流を流すと、痛みの信号が脳に伝わりにくくなり、その結果、痛みの感覚が緩和されることが知られています。脊髄刺激装置植込術による治療は、この理論を用いて痛みの治療を行うものです。
この治療の対象は、薬物、手術、神経ブロックによっても痛みが十分に緩和されない難治性の痛み、例えば末梢神経損傷や脊髄損傷による頑固な痛みなどです。 治療は通常2段階で行います。まず、脊髄に刺激を与えるための導線を、注射針を用いて脊椎骨の中で脊髄を囲んでいる硬膜という膜の外側に留置してから注射針を抜き、導線のみが身体に挿入されている状態とします。そして、この導線を神経刺激装置に接続することで、硬膜の外側から脊髄に電気刺激を与えることができるようになります。 これで痛みが緩和されれば次の段階に進み、神経刺激装置を体内に植込む手術をします。この植込用の刺激装置は、医師が設定した範囲のなかで患者さん自身がリモコン装置を使って刺激を調整できるものです。 この処置は体内に異物を植込むため、装置の周囲に病原菌が付着する感染症が生じるなど、健康状態に影響を与えうる合併症が起こる可能性があります。そこで、治療経過と内容をよく吟味し、十分に相談を重ねた上で実施を判断していくものとなります。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率) ファイルをダウンロード
肝損傷などの重篤な外傷や、肝臓がんや膵がん、肺がんあるいは心臓血管外科疾患などの大手術後に血液の凝固に異常をきたす播種性血管内凝固症候群がおこることがあります。また、色々な感染症などから血液中に病原菌が入り敗血症になり、これが原因で播種性血管内凝固症候群がおこることもあります。
当院は数多くの併存症を持った患者さんの手術を行っています。このためこれら手術後等に播種性血管内凝固症候群を合併することもあります。また当院は重篤な患者さんを主に受け入れる救命救急センター(3次救急)があり、他の病院で播種性血管内凝固症候群を合併した患者さんの治療目的で紹介され入院する場合も多くあります。 ここに示している「入院契機と同一」とは、入院した時に播種性血管内凝固症候群と診断されている患者数で、10名未満です。一方、「入院契機と異なる」とは、入院した時には別の病気で入院したが、入院中に播種性血管内凝固症候群をおこし、もともとの病気の治療よりも播種性血管内凝固症候群の治療に時間・医療費を要した場合で12名の患者さんがおり、その発生率は0.06%です。 敗血症の患者数は、入院した時から敗血症と診断された患者さんは33名、入院した時には別の病気で入院したが、その後に敗血症をおこした患者さんは42名で、その発生率は0.20%です。 主病名が「その他の真菌感染症」の患者さんは10名未満です。 「手術・処置等の合併症」では380名が入院していますが、これは腎臓・高血圧内科の入院治療で、透析を行うために必要なシャントが血栓などで閉塞し使用できなくなり、その治療(経皮的シャント拡張術・血栓除去術)を行う患者さんが多いためです。 ※上記一覧表では10名未満の場合には患者さんが特定される可能性があるため、人数を記載せず「-」でお示ししています。 更新履歴
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