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令和6年度 聖マリアンナ医科大学 病院指標

令和6年度 聖マリアンナ医科大学病院  病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
  4. 転倒・転落発生率
  5. 転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
  6. 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
  7. d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率
  8. 65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合
  9. 身体的拘束の実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 1,710 766 731 837 1,673 3,014 3,438 5,381 4,106 746
 令和6年度における当院の退院患者数の合計は22,402名で、令和5年度に比べ553名増加となり2年連続で増加となりました。
 新入院棟への移転から院内の医療提供体制も整ってきたため、患者数の回復、増加につながったと思われます。平均すると1日当たり約60名の患者さんが退院しています。
 当院は幅広い年齢層の患者さんが入院しており、最も多い年齢層は70~79歳で5,381名(24.02%)です。急速な少子高齢化の進行に伴い、60歳以上の患者割合は全体の6割を占めており、患者数は前年と比べ718名の増加となっております。
 当院では60歳以上の罹患率が高い脳卒中(脳血管疾患)、急性心筋梗塞などの循環器疾患(3大疾患)の診療に積極的に取り組んでいることが影響していると考えられます。
 一方で、当院は地域がん診療連携拠点病院としてがん治療も積極的に行っていることから、40~59歳の患者数は4,687名(20.9%)となっております。
 さらに、総合周産期母子医療センターを有する当院は小児医療も充実しており、0~9歳の患者数は1,710名(7.6%)となりました。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
小児科・新生児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2なし 142 5.86 6.11 9.86% 0.00
040100xxxxx00x 喘息 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 75 6.55 6.38 9.33% 3.19
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 72 7.07 6.22 11.11% 2.28
0400801199x0xx 肺炎等(1歳以上15歳未満) 手術なし 手術・処置等2なし 62 5.94 5.61 3.23% 6.11
140010x299x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(1500g以上2500g未満) 手術なし 手術・処置等2なし 59 8.61 11.83 5.08% 0.02
【小児科】
 小児喘息の多くはハウスダストやダニ等のアレルギー反応が原因で引き起こされます。多くは成人になるとともに良くなりますが、症状が重い患者さんの場合等は成人になっても続くことがあります。
 肺炎や急性気管支炎、急性細気管支炎はRSウイルス感染症によるものが多く、乳幼児に多く見られます。
 未熟児・新生児症例の応需は下記(新生児科解説)の通りですが、退院前の移行期や、様々な合併症等の診療継続のため、小児科と新生児科の連携を強化しております。

【新生児科】
当院は総合周産期母子医療センターであり、合併症や胎児の発育不良で紹介される母体が多く、その結果として、早産児や低出生体重児といった入院管理を要する新生児が増加します。早産児や低出生体重児は呼吸障害など合併する問題を多く抱えるため新生児集中治療室での管理が必要なことが多くなります。低出生体重児が多い事については、近年全国的な傾向でもあり、当院での症例数が多い事もその反映であると考えます。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 118 22.12 18.76 5.93% 67.47
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 102 21.03 21.38 12.75% 73.27
070343xx01x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む。) 腰部骨盤、不安定椎 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 前方椎体固定等 手術・処置等2なし 71 23.90 19.60 9.86% 69.56
070085xx97xx0x 滑膜炎、腱鞘炎、軟骨などの炎症(上肢以外) 手術あり 定義副傷病なし 70 24.40 13.17 4.29% 61.73
160620xx01xxxx 肘、膝の外傷(スポーツ障害等を含む。) 腱縫合術等 52 9.62 12.71 1.92% 38.13
 整形外科では、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手、外傷)に専門性を有しており、変性疾患やスポーツ障害、外傷など近隣地域よりご紹介を多数いただいています。
 令和6年度の患者数が多かった疾患は、1位 股関節骨頭壊死、股関節症、2位 膝関節症 、3位 脊柱管狭窄症、4位 滑膜炎、腱鞘炎、軟骨などの炎症、5位 肘・膝の外傷(スポーツ障害等を含む)でした。
 整形外科では、前腕や股関節の骨折や外傷疾患に対しては緊急手術を含めた早期対応を行い、変性疾患はエビデンスに基づいた治療を行い早期機能回復に努めています。
形成外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx03xxxx 乳房の悪性腫瘍 動脈(皮)弁及び筋(皮)弁を用いた乳房再建術(乳房切除後) 二次的に行うもの 72 17.76 15.54 0.00% 49.43
070010xx970xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。) 手術あり 手術・処置等1なし 18 5.17 4.65 0.00% 55.22
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1なし 18 22.28 9.77 0.00% 47.44
090010xx05xxxx 乳房の悪性腫瘍 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後) 16 9.06 7.26 0.00% 50.44
090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし 14 7.21 6.48 0.00% 56.07
 形成外科では顔⾯をはじめとして体表⾯のあらゆる変形を扱っており、先天性の変形から病気や外傷の⼿術後の後天性変形まで幅広く再建、形成⼿術を⾏っています。
 特に力を入れている分野の一つが乳がん切除後の乳房再建です。⾃家組織と⼈⼯乳房の両⽅の⼿術を⾏っており、乳頭乳輪形成に⾄るまで独⾃の⼿術で、再建したと分からない美しい乳房の再建を⽬指して治療を⾏っています。
 また形成外科では⽪膚の良性・悪性腫瘍の治療も行っています。単に腫瘍を切除するだけではなく、できるだけ⽬⽴たない傷痕になる治療を⾏っています。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 33 5.94 9.83 12.12% 78.30
010030xx991xxx 未破裂脳動脈瘤 手術なし 手術・処置等1あり 32 2.06 2.86 0.00% 63.50
010010xx03x00x 脳腫瘍 頭蓋内腫瘍摘出術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 28 17.43 19.89 10.71% 53.71
010230xx99x4xx てんかん 手術なし 処置2-4等あり 21 7.67 5.90 0.00% 36.33
010010xx991xxx 脳腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 19 4.26 4.83 5.26% 53.58
1) 頭部外傷
 頭部外傷は交通事故や転倒などで生じ、軽症から重症まで幅広い病態を含みます。脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血などが代表で、意識障害や神経症状を呈する場合は緊急治療を要します。当院は救命センターを備え、脳神経外科・救急科が連携して24時間対応し、集中治療を行っています。
2) 未破裂脳動脈瘤
 未破裂脳動脈瘤は、くも膜下出血の予防目的で治療が検討されます。特に5mm以上や不整形動脈瘤は破裂リスクが高く、外科的クリッピング術または血管内コイル塞栓術を選択します。治療方針は瘤の部位や形状、全身状態を総合的に判断して決定されます。
3) 脳腫瘍
 脳腫瘍は良性と悪性に大別され、髄膜腫や聴神経腫瘍、下垂体腺腫は摘出術で根治可能です。一方、悪性脳腫瘍では摘出に加え、放射線治療や化学療法を併用する集学的治療が必須です。近年は内視鏡や頭蓋底外科の進歩により、安全で低侵襲な治療が可能になっています。
4) てんかん
 てんかんは脳の異常な電気活動による発作性疾患です。難治例に対しては手術治療が有効で、発作焦点切除や脳梁離断術などが行われます。当院は2017年にてんかんセンターを設立し、長時間脳波ビデオモニタリングを用いた精密診断に基づき、根治術・緩和術を実施しています。
呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx02x0xx 肺の悪性腫瘍 肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの等 手術・処置等2なし 128 11.25 9.82 0.00% 68.98
040200xx01x00x 気胸 肺切除術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 43 7.81 9.59 0.00% 34.14
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 処置等2-4あり 定義副傷病なし 14 11.71 8.16 0.00% 65.57
040200xx99x00x 気胸 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 14 8.93 9.28 0.00% 48.79
040010xx01x0xx 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍 縦隔悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし 13 10.31 8.41 0.00% 60.00
 呼吸器外科の治療対象疾患は原発性肺がんが最も多く、呼吸器内科医・呼吸器外科医・放射線科医等が参加する多職種カンファランス(Cancer Board)での検討に基づき治療⽅針を決定しています。⼿術適応ありと判断される場合には根治を⽬指した外科⼿術を行います。主に低侵襲機能温存(区域切除など)を⽬的とした胸腔鏡⼿術(単孔式も含む)を行います。進⾏例に対しては適切な治療方針を検討し、術前に化学療法、免疫療法、放射線療法などを併用した導⼊療法を⾏い、腫瘍を縮⼩させてから根治切除を⾏うこともあります。さらに症例によっては先端医療を導⼊した臨床治験にご参加いただき、最近では周術期に治験薬を含む分⼦標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤を加え、⼿術を⾏う集学的治療も積極的に⾏っています。また転移性肺悪性腫瘍には様々な癌腫からの肺内転移があり、多くは他科からの依頼によって⼿術適応を判断することになります。原発性肺がん同様に低侵襲機能温存を⽬的とした胸腔鏡⼿術を行います。
 肺がんは他のがんと⽐較して予後不良であり、術後の再発リスクが⾼いという特徴があります。進⾏例では再発を予防する⽬的で術後に補助的抗がん剤治療や分⼦標的薬、免疫チェックポイント阻害剤を加えることもあります。また術後外来では定期的検査を⾏い、再発症例に対しては呼吸器内科とも連携して臨床治験も含めて積極的に新規薬物治療も⾏います。最近では、分⼦標的治療薬や免疫治療薬の開発が進み、その成績も向上しており、切除例では肺がんの各種遺伝⼦異常やタンパク質発現を検索し、再発の際に適切な薬剤選択が迅速にできるようにしています。
 気胸は10代、20代の若年男性や肺気腫のある⼈に突然発症することの多い疾患です。肺の虚脱によって呼吸困難となることがあり、早急な対応が必要です。呼吸器外科では近隣の診療所からの紹介を常時受け付けており、緊急⼿術にも対応しています。
 手術を必要とする縦隔悪性腫瘍には胸腺腫、胸腺癌、胚細胞性腫瘍などがあります。小型の腫瘍であれば胸腔鏡下にて、比較的大きくなると胸骨正中切開をして腫瘍とその周辺組織を含めて完全切除を行います。またさらに大きくなり周囲組織への過度な浸潤が認められる場合には術前導入療法の後に切除を加えるといった集学的治療も積極的に行っています。
心臓血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1なし 処置等2-1あり 43 26.70 20.84 2.33% 62.44
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 手術・処置等2なし 39 12.10 10.18 0.00% 77.13
050161xx01x1xx 大動脈解離 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術等 処置等2-1あり 27 28.37 29.35 7.41% 66.93
050163xx9900xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 21 6.10 7.58 0.00% 77.95
050080xx99000x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 18 6.67 8.16 0.00% 72.00
 ⼼臓⾎管外科が対象とする疾患は、冠動脈疾患(狭⼼症、⼼筋梗塞等)、⼼臓弁膜症、⼤動脈疾患(⼤動脈瘤、⼤動脈解離等)、先天性心疾患、末梢⾎管疾患(閉塞性動脈硬化症、静脈瘤等)です。冠動脈バイパス術は9割以上の症例で人工心肺を使用せず⼼臓を⽌めない「オフポンプ冠動脈バイパス術」を⾏っています。機能不全に陥った⼼臓の弁膜に対しては弁形成術や弁置換術を⾏っていますが、条件が合う患者さんには術後の早い回復が望める低侵襲⼼臓弁膜症⼿術を施行しています。また、⾼齢者や手術リスクの高い大動脈弁狭窄症の患者さんには、ハイブリッド⼿術室においてカテーテル的⼤動脈弁置換術を積極的に⾏っています。胸部⼤動脈瘤や腹部⼤動脈瘤などの⼤動脈疾患に対しては、開胸・開腹での⼈⼯⾎管置換術に加え、カテーテルで⼈⼯⾎管を留置するステントグラフト内挿⼊術を積極的に⾏い、良好な結果を得ています。小児先天性心疾患の患者さんには、小児科との緊密な連携で治療戦略を立て、根治手術や姑息手術を高度な技術で行っています。末梢⾎管疾患に対しては、バイパス⼿術、内膜剥離術、カテーテル治療等を積極的に⾏っています。
小児外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 79 2.98 2.73 0.00% 4.56
060150xx03xxxx 虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 34 6.71 5.32 0.00% 10.32
11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患 精索捻転手術等 21 2.81 3.53 0.00% 6.33
140590xx97xxxx 停留精巣 手術あり 17 3.00 2.96 0.00% 3.71
060170xx02xx0x 閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等 定義副傷病なし 15 2.93 6.85 0.00% 2.67
 令和6年度で⼀番多かった症例は、「⿏径ヘルニアの⼿術」の患者さんです。79⼈の患者さんに2泊3⽇の⼊院で⿏径ヘルニア⼿術を⾏いました。従来の⿏径部切開⼿術と腹腔鏡⼿術の両⽅を⾏っています。 次いで、「虫垂炎」の患者さんです。腹腔鏡下⾍垂切除術を⾏いました。34人に治療を行い、平均在院⽇数6.71⽇間でした。 3位の疾患は「男性生殖器疾患ー精索捻転手術等」です。21⼈に陰嚢水腫手術や精索捻転解除手術などを行い、平均在院⽇数2.81⽇間でした。 4位の疾患は「停留精巣ー手術あり」で、17人でした。精巣固定術を行い、平均在院⽇数3⽇間でした。 5位の疾患は「閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニアーヘルニア手術、腹壁瘢痕ヘルニア等」で、臍ヘルニアなどが対象で、平均在院⽇数2.93⽇間でした。
産婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 処置等2-4あり 定義副傷病なし 94 4.29 4.07 0.00% 59.16
120220xx01xxxx 女性性器のポリープ 子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術 84 3.04 2.72 0.00% 49.37
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし 78 11.56 9.84 0.00% 58.13
120070xx02xxxx 卵巣の良性腫瘍 卵巣部分切除術(腟式を含む。) 腹腔鏡によるもの等 55 5.40 5.97 0.00% 43.91
120010xx01x0xx 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍 子宮附属器悪性腫瘍手術(両側)等 手術・処置等2なし 52 10.10 11.58 0.00% 54.40
 当院産婦⼈科は産婦⼈科診療の4本柱である「周産期」「⽣殖」「婦⼈科」「⼥性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡⼿術」「遺伝⼦診療」の6領域全てに対応することが可能なスタッフを有しています。⼜、⽇本婦⼈科腫瘍学会が認定する、婦⼈科腫瘍指導医・専⾨医が複数在籍しており、婦⼈科悪性腫瘍を中⼼とした婦⼈科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しています。そのため、令和6年度も婦⼈科悪性疾患が病名トップ5に3つランクインしています(12002xxx99x40x、12002xxx01x0xx、120010xx01x0xx)。また、⽇本産科婦⼈科内視鏡学会認定腹腔鏡・⼦宮鏡技術認定医も複数在籍しており、積極的に低侵襲⼿術を取り⼊れていることから、婦⼈科疾患の中でも良性疾患に対する腹腔鏡⼿術による⼿術数が増加しています(120220xx01xxxx、120070xx02xxxx)。同様に悪性腫瘍⼿術に対しても適応を⾒極めたうえで、婦⼈科腫瘍指導医・専⾨医並びに⽇本産科婦⼈科内視鏡学会認定腹腔鏡・⼦宮鏡技術認定医と共同で低侵襲⼿術に取り組んでいます。
眼科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼 494 2.07 2.49 0.20% 73.91
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患 手術あり 両眼 327 2.10 4.29 0.61% 76.54
020290xx97xxxx 涙器の疾患 手術あり 146 3.95 4.35 0.00% 67.21
020220xx97xxx0 緑内障 その他の手術あり 片眼 136 4.83 4.52 0.00% 70.73
020160xx97xxx0 網膜剥離 手術あり 片眼 133 5.71 7.53 0.00% 55.80
 ⽩内障はほとんどすべての⾼齢者に発症する疾患です。その⽩内障を治療する⽩内障⼿術は、⽼化した⽔晶体を眼内レンズに置き換えることで、視⼒を改善させる画期的な⽅法です。当院は白内障の入院手術にも日帰り手術にも対応しています。通常片眼からもう片眼まで1週間あけます。⽩内障⼿術の術式は確⽴されているため、当院では患者様のニーズに対応できるよう多くの種類の眼内レンズから選択できるようになっています。具体的には希望のある患者様には多焦点眼内レンズ(選定療養)もお勧めしています。
 涙道手術は眼科だけでなく耳鼻科や形成外科との境界領域であり、しっかり治療する施設があまりありません。当院では大学病院であるため幼児から高齢者まで、またあらゆる涙道疾患に対応できていると自負しています。涙管チューブ挿入術と涙嚢鼻腔吻合術を柱にしっかりと治す努力を行っています。
 眼科的に⾼度な技術を要する網膜剥離や網膜硝⼦体疾患に対する⼿術は年間400件以上⾏われています。特に緊急性の⾼い網膜剥離については、必要とあらば緊急⼿術という形で対応しております。網膜剥離は硝子体手術でガスを入れてうつ伏せにする方法と、バックリング手術の方法があり、約1週間の入院となります。その他、網膜前膜や黄斑円孔も硝子体手術の適応になります。
 また近年増加傾向にある加齢⻩斑変性症に対しては最新型の光⼲渉網膜断層撮影装置(OCT)、造影剤を使⽤せずに脈絡膜の⾎流を評価できるOCT angiography(光⼲渉断層⾎管撮影)による正確な診断のもと、抗VEGF(抗⾎管内⽪増殖因⼦)薬治療、光線⼒学療法を⾏っております。
 緑内障は我が国における失明原因の上位を占めており、社会的にも重要な疾患です。本邦で行われた緑内障疫学研究では40歳以上における緑内障有病率は5.0%と決して稀な疾患ではありません。緑内障による視神経障害および視野障害は進行性で非可逆性であり、患者の自覚なしに障害が徐々に進行するため、早期発見と早期治療が障害の進行、抑制に重要です。緑内障治療の原則は眼圧下降であり、その手段として薬物治療、レーザー治療、手術治療があり、緑内障専門外来で正確な診断のもと、緑内障の病型と病期を考え合わせて治療方針を決定します。
耳鼻咽喉・頭頸部外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 118 5.23 5.84 0.00% 52.96
030230xxxxxxxx 扁桃、アデノイドの慢性疾患 100 8.58 7.35 0.00% 15.80
030440xx01xxxx 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫 鼓室形成手術等 59 4.19 6.06 0.00% 34.90
030240xx99xxxx 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 手術なし 52 6.21 5.63 0.00% 42.31
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり 35 6.74 6.68 0.00% 45.71
 当院では耳鼻咽喉科領域における主要疾患に対し、安全で質の高い医療を提供することを心がけています。入院期間や治療方針は疾患や手術内容、合併症のリスクに応じて設定しています。
1) 慢性副鼻腔炎
鼻汁・鼻閉・鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎に対する手術は、術後出血のリスクを考慮して入院期間を概ね5日間としています。出血のリスクが低い場合には3〜4日程度の短期入院で手術を行うこともあります。高リスク症例ではナビゲーションシステムを用い、安全性を最優先に手術を行っています。
2)扁桃・アデノイドの慢性疾患
慢性扁桃炎や睡眠時無呼吸症候群に対する手術は、術後出血の早期発見のため入院期間を9日間としています。小児例が多く含まれるため、患者さんの平均年齢は比較的低くなっています。なお、アデノイド切除のみの場合は3〜5日程度の短期入院で行うこともあります。
3) 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫
鼓室形成術などの中耳手術は、感染制御と聴力改善を目的に行います。入院期間は概ね1週間前後で、術後の安静や感染管理を行いながら安全に経過観察をしています。
4)急性扁桃炎・急性咽喉頭炎
咽頭痛や発熱、嚥下障害を伴う症例で外来治療では改善が乏しい場合、あるいは経口摂取が困難な場合には入院治療を行います。扁桃周囲膿瘍まで進行した場合には、原則として入院加療を推奨しています。
5)耳・鼻・口腔・咽頭・唾液腺の腫瘍(手術あり)
耳下腺腫瘍などの唾液腺腫瘍では、術後ドレーンを2〜4日間留置し、出血の有無を確認したうえで退院となるため、入院期間は5〜7日程度です。口腔・咽頭腫瘍に対しても術後の出血や食事摂取状況を確認して退院となり、概ね5〜7日間の入院期間が必要です。さらに喉頭全摘術や下咽頭癌に対する大規模手術では、食事摂取やリハビリを行いながら回復を目指すため、入院期間は2週間以上となることもあります。
脳神経内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010060xx99x40x 脳梗塞 手術なし 処置等2-4あり 定義副傷病なし 93 21.81 16.89 41.94% 73.29
010060xx99x20x 脳梗塞 手術なし 処置等2-2あり 定義副傷病なし 83 18.46 16.94 24.10% 74.57
010160xx99x00x パーキンソン病 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 58 12.64 17.95 5.17% 71.17
010080xx99x0x1 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術なし 手術・処置等2なし 15歳以上 53 14.28 15.94 9.43% 63.45
010110xxxxx40x 免疫介在性・炎症性ニューロパチー 処置等2-4あり 定義副傷病なし 41 17.56 15.45 19.51% 56.71
 脳神経内科は、当院の脳卒中センターの一員として、脳梗塞や脳出血といった急性期の脳血管障害の診療に積極的に取り組んでいます。最新の画像検査を用いて正確かつ迅速に診断を行い、発症直後には血栓を溶かす治療(血栓溶解療法)や、カテーテルで詰まった血のかたまりを取り除く血栓回収療法など、最先端の治療を提供しています。入院後は、脳卒中集中治療室(SCU)での厳重な管理のもと、多職種による専門チームがリハビリや再発予防の計画を立て、入院から退院・転院まで切れ目なくサポートしています。
 また、当科はパーキンソン病治療センターの一員として、パーキンソン病に対しても幅広い診療を行っています。薬の効果が不十分な場合には、薬を腸に直接持続的に注入する「デュオドーパ療法」や、脳の深部に電極を埋め込み症状を和らげる「深部脳刺激療法」といった先進的な治療も行い、多職種が連携して最良の治療成績をめざしています。
 さらに、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)やギラン・バレー症候群などの免疫の異常によって起こる末梢神経の病気に対しても、多くの患者さんが当科を受診されています。血液を浄化する治療(血液浄化療法)や免疫グロブリンの点滴治療に加え、新しい免疫療法を取り入れることで、高い治療効果をあげています。 そのほか、ヒトレトロウイルスHTLV-1によって引き起こされる神経の難病「HTLV-1関連脊髄症(HAM)」については、日本でも中心的な診療・研究拠点として、最先端の治療と研究を進めています。
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1なし 63 14.83 12.98 3.17% 69.16
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2なし 32 9.63 6.92 0.00% 76.91
080020xxxxxxxx 帯状疱疹 15 7.87 9.33 6.67% 67.27
080005xx01x0xx 黒色腫 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2なし 10 11.60 11.59 0.00% 69.10
080007xx010xxx 皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1なし - - 3.77 - -
 1位の膿皮症は蜂窩織炎や丹毒などといった皮膚感染症で、外来治療では不十分な重症患者さんや合併症を伴う患者さんに対して入院で治療を行います。抗生剤の点滴が主な治療であり、合併症がなければ1週間から2週間程度の入院になります。
 2位の皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外)に対する治療としては皮膚悪性腫瘍切除術や局所⽪弁術、植皮術が中心になります。
 3位の帯状疱疹は、顔面発症例、髄膜症状を伴う例など外来治療では不十分な重症な患者さんに対して、抗ウイルス薬の点滴や疼痛に対する治療を行なっています。
 4位の悪性黒色腫はほくろのがんで、皮膚悪性腫瘍切除術やセンチネルリンパ節生検、所属リンパ節郭清術といった手術を行います。
 5位の皮膚の良性新生物は、脂肪腫などの良性腫瘍の切除を行い、数日程度の入院になります。
腎泌尿器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 103 3.19 2.45 0.00% 71.18
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2なし 90 9.80 6.81 0.00% 74.27
110420xx02xxxx 水腎症等 経尿道的尿管ステント留置術等 89 4.49 4.07 1.12% 67.24
110070xx99x20x 膀胱腫瘍 手術なし 処置等2-2あり 定義副傷病なし 36 7.03 8.64 0.00% 69.78
110070xx02xxxx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術+術中血管等描出撮影加算 30 10.50 6.75 0.00% 75.90
 1位の前立腺悪性腫瘍の大半は前立腺がんです。前立腺がんは高齢者に多くみられ、近年は無症状で前立腺特異抗原(PSA: prostate specific antigen)が高値を示し、健診などで発見されることが増えています。確定診断には前立腺針生検を行い、前立腺組織を採取してがんの有無を確認します。当院では、生検前に撮影したMRI画像を特殊な機器で生検時の超音波画像に取り込みます。MRIではある程度がんの部位を同定できるため、その情報を超音波画像に反映させ、がんの可能性が高い部位を狙って検査を行います(MRI/超音波融合前立腺標的生検)。この方法により、がんの検出率は大幅に向上します。
 2位、4位、5位の膀胱腫瘍の大半は膀胱がんです。膀胱がんは膀胱粘膜に発生する腫瘍で、肉眼的血尿を契機に発見されることが多い病気です。初回治療としては尿道から内視鏡を挿入し、腫瘍を電気メスで切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT: transurethral resection of bladder tumor)を行います。当院ではさらに、がんの部位や範囲を蛍光発光により特異的に描出することで、見落としを防ぎ、より正確な診断と完全な腫瘍切除を目指す手技(PDD-TURBT: Photodynamic Diagnosis-transurethral resection of bladder tumor)も導入しています。
 3位の経尿道的尿管ステント留置を必要とする水腎症は、尿路の通過障害により尿が腎盂に貯留した状態です。原因としては尿路結石、尿路の悪性腫瘍、他の腫瘍の尿管周囲への転移・浸潤、長期にわたる排尿障害などが挙げられます。水腎症を放置すると腎機能の悪化を招くため、通過障害の部位を的確に診断し、その解除を行うことが重要です。
呼吸器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 204 3.52 3.03 0.98% 71.78
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2なし 59 15.02 16.40 15.25% 83.34
040110xxxx00xx 間質性肺炎 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 55 17.06 18.68 5.45% 76.71
040120xx99000x 慢性閉塞性肺疾患 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 48 11.10 12.95 2.08% 73.46
040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 41 13.05 13.41 14.63% 71.98
 肺がんについては、最近では分⼦標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、従来の抗がん剤とは異なる作⽤機序の薬が導⼊され、治療による生存期間延長などの効果が得られています。また、⾼齢であっても全⾝状態が良ければ⼗分に治療の対象になるため、気管⽀鏡検査やCTガイド下⽣検等の肺がん診断のための検査を勧めています。1位は気管支鏡やCTガイド下生検等、肺がん診断に関わる症例です。当科は気管支鏡検査の肺がん診断について、検査現場での細胞診診断等も応用して90%以上の高い診断率を維持しており、気管支鏡の件数は増加傾向にあります。5位も肺の悪性腫瘍ですが通常の抗がん剤治療や疼痛などの症状緩和が目的で入院した症例が主となります。2位の肺炎は特に誤嚥性肺炎を含む高齢者の肺炎が増加してくると思われます。3位の間質性肺炎はピルフェニドンやニンテダニブ等の抗線維化薬導⼊に伴う⼊院や、急性増悪治療のための⼊院によるものです。4位は慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院し、抗生剤やステロイド等の投与や気管支拡張薬吸入、および理学療法で治療した症例が主となります。新型コロナウイルス感染症が5類となり感染予防の意識が徐々に低下しつつあるためか、呼吸器感染症による喘息やCOPD増悪、あるいは高齢者の肺炎が増加傾向にあり、注意が必要です。
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050070xx03x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2なし 342 4.99 4.47 0.00% 67.52
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし 181 4.11 4.18 0.00% 72.36
050080xx02010x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) 経カテーテル弁置換術等 手術・処置等1なし、1あり 処置等2-1あり 定義副傷病なし 158 12.53 14.74 5.06% 83.57
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸 手術なし 手術・処置等1あり 134 2.00 2.02 0.75% 57.27
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 他の病院・診療所の病棟からの転院以外 125 14.54 17.33 15.20% 83.14
 ⼼房細動は脳塞栓や屋心不全の原因となり得るため、循環器内科では根治的なカテーテル⼼筋焼灼術を積極的に⾏っています。頻脈性不整脈の⼊院期間は4⽇程度です。
 狭心症に代表される虚⾎性⼼疾患では、⼼臓を養う冠動脈に狭い箇所を有するため、虚⾎に関わる病変であればカテーテルによる冠動脈治療を⾏います。バルーンと呼ばれる特殊な⾵船で、詰まったり、狭くなった冠動脈を広げるのみで終了する場合と、ステントを留置する場合があります。冠動脈造影と治療はいずれも4⽇程度の⼊院で⾏っています。 大動脈弁狭窄症は、心臓の出口が加齢により固くなるため、全身へ十分な血液が拍出できなくなります。薬による治療法がないので、弁置換術が必要となりますが、現在では外科的な方法では無く、カテーテル技術を用いて大動脈弁を置換する方法(通称TAVI)が主流となっています。超高齢の方が対象となることが多く、10日程度の入院が必要です。
 睡眠時無呼吸症候群は、いびきを契機に⾒つかることが多いですが、様々な疾患に合併することが知られています。適切な診断と治療を⾏うことで、⽣活の質の向上が望めます。睡眠中の検査を⾏いますので、1泊の⼊院が必要です。
 超高齢化社会を迎え、心不全が増加しています。呼吸困難や下腿浮腫などを症状とし外来では調整困難な場合には、入院をして点滴や内服調整、原因精査などを行います。14日程度の入院が必要となります。
腎臓・高血圧内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 92 9.98 11.35 6.52% 69.35
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 動脈形成術、吻合術 その他の動脈等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 49 6.43 7.38 0.00% 70.98
110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 処置等2-1あり 38 17.47 13.75 5.26% 72.24
110290xx99x0xx 急性腎不全 手術なし 手術・処置等2なし 37 15.41 13.54 16.22% 68.59
110280xx991xxx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1あり 31 5.19 6.01 0.00% 54.58
 ⾼齢化により、慢性腎炎に加え、糖尿病や⾼⾎圧・動脈硬化性疾患の最終像としての腎不全が、年々増加しています。最新の⽇本透析医学会の統計調査では、⽇本の透析患者は34万⼈を超えたことが報告されています。また、腎臓⾼⾎圧内科におけるDPC名称の多くに慢性腎不全や腎不全関連⼿術(透析⽤動脈形成術、吻合術)が含まれていることもそれを⽰唆するものです。勿論、腎臓⾼⾎圧内科では従来の慢性腎炎に対する診断(腎⽣検)や治療も多く⾏っていますが、加えて、腎不全の進⾏を抑制することを⽬的とした慢性腎臓病教育⼊院の実施、透析を⾏うために必須である透析アクセスの造設や維持(それぞれ内シャント設置術、内シャント⾎栓除去術)のための外科的アプローチ、他科⼊院中患者も含めた急性腎不全の治療や予防、さらには尿路感染症や尿路結⽯症の内科的管理への対応等、多岐にわたる腎疾患に対応しています。また、腎不全・透析患者の⼼不全・感染症対応も腎臓⾼⾎圧内科で診療しており、難治性⾼⾎圧や⾼⾎圧緊急症、体液・電解質・酸塩基平衡異常症なども専⾨としています。地域の腎臓病患者の⽅々の総合医・かかりつけ医としての役割を果たしています。
代謝・内分泌内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 処置等2-1あり 174 14.80 13.77 0.57% 64.76
100180xx99000x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 50 6.06 5.35 0.00% 56.76
100202xxxxxx0x その他の副腎皮質機能低下症 定義副傷病なし 39 6.39 8.86 0.00% 54.18
100040xxxxx10x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 手術・処置等2あり 定義副傷病なし 25 21.84 18.63 4.00% 54.52
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 23 16.61 13.07 0.00% 61.13
 代謝内分泌内科の糖尿病センターでは、遺伝的素因と生活習慣から起こる2型糖尿病、膵臓のβ細胞の破壊によって起こる1型糖尿病、それ以外の様々な原因で起こるその他の糖尿病も含め、様々な糖尿病患者さんを適切に診断し、合併症を含め全人的に治療する体制が整っています。特に患者教育に積極的に取り組んでおり、医師、看護師、薬剤師、栄養士で構成された多職種のチームで生活指導、合併症の治療を行っております。また、糖尿病性ケトアシドーシスなど、糖尿病の急性代謝失調の加療にも積極的に取り組んでおり、川崎市北部・横浜市北部における急性期の拠点として救急診療に当たっています。
 内分泌疾患については、6科で連携した内分泌疾患センターで集学的な診断・治療を行っています。近年、ホルモンの異常が原因で高血圧や糖尿病などになっている副腎疾患の精査を行うことが増えています。当院は全国でも有数の専門家を揃えており、内分泌機能試験、画像検査、副腎静脈サンプリング等を実施して副腎疾患の的確な診断と治療を行っています。また、見落とされがちな下垂体疾患の紹介や診断も増えており、脳神経外科と連携して診断・治療に取り組んでいます。外来では甲状腺機能異常の診断・治療や甲状腺腫瘍の手術件数も増えており、また副甲状腺の異常によるカルシウム・リン・骨代謝異常の診断・治療は乳腺・内分泌外科と連携して診療に当たっています。
救急科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒) 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 99 4.40 3.58 3.03% 36.85
180010x0xxx4xx 敗血症(1歳以上) 処置等2-4あり 29 23.38 37.05 31.03% 68.79
180010x0xxx2xx 敗血症(1歳以上) 処置等2-2あり 16 13.31 30.90 62.50% 82.06
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 12 4.75 9.83 0.00% 66.92
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 11 4.27 7.99 27.27% 64.55
 比較的若年の過量服用を中心とした薬物中毒は、精神作用物質使用による精神及び行動の障害を来す事が多いうえに、服用の契機としての精神科疾患の併存や、摂取した薬剤による多様な症状や自傷行為などを伴う事もあり、一般の病院では対応に難渋する事が多く、特に、薬物中毒で重篤化した場合人工呼吸や透析治療、補助循環などの高度の全身維持管理による治療を必要とする事があり、そのような場合は3次救急である救命救急センターが積極的に応需しています。
 高齢化の進展により免疫力の低下を来した高齢者が増加しており、呼吸器・尿路・胆道系感染症を中心とする感染性疾患が重症化し敗血症に至ると致命的であり高度な治療を要するため、救命救急センターが積極的な受け入れを行い治療を展開しています。
 重症感染症から敗血症、さらに敗血症性ショックになると敗血症性心筋症を含め全身の呼吸・循環状態の悪化をきたし急速に致命的な状況に至ります。これに対して抗菌薬などの感染症への対応はもちろん必要ですが、人工呼吸器やECMOなどの補助循環機器を用いた積極的な呼吸・循環補助による救命が必要であり、救命救急センターとして積極的な応需・集中治療を行っています。
 社会の多様化により人々はいろいろな社会的活動を積極的に行いますが、それに伴い車両や鉄道における交通事故や墜落・転落に起因する重症頭部外傷を含め致命的な重症外傷も発生してきます。重症外傷においては、頭部含め多発外傷も多く、積極的な呼吸・循環補助や大量出血に対するカテーテル緊急止血術や緊急手術を迅速に行わないと救命できません。このような外傷には集学的な集中治療が必要であり、救命救急センターで積極的に対応しています。
 頭部外傷を含め重症外傷の発生状況によっては、事故現場からの迅速な救出やすぐには病院へ搬送ができないようなケースも存在します。そのような場合に備えてドクターカーや病院外出動の準備を整え、必要あれば積極的に災害・事故現場に出動して瓦礫の下の医療に代表される院外診療・処置を展開します。
血液内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130030xx99x4xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置等2-4あり 63 10.03 8.65 0.00% 63.35
130030xx99x6xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置等2-6あり 34 11.65 15.67 0.00% 64.97
130030xx99x0xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等2なし 26 5.27 8.86 0.00% 67.00
130030xx99xbxx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 処置等2-Bあり 17 9.29 12.23 0.00% 68.12
130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 処置等2-2あり 16 27.00 35.63 0.00% 60.00
【悪性リンパ腫】
リンパ球は骨の中にある「骨髄」で造られ、体内に侵入してきた異物を除去する役割を担う細胞です。悪性リンパ腫は、リンパ球が「がん化」して無制限に増殖し、リンパ節やリンパ組織にかたまりを作る病気です。日本では毎年35,000人程度の人が発症します。悪性リンパ腫の症状としては、首や脇の下、足のつけ根などのリンパ節が腫れてくることが多く、発熱や体重減少、寝汗などの症状を伴う場合もあります。診断には腫れているリンパ節の組織を手術で採取して顕微鏡で観察し、併せて免疫検査・遺伝子検査を行うことによって診断します。悪性リンパ腫の組織型はホジキンリンパ腫(5〜10%)と非ホジキンリンパ腫(90〜95%)に分けられ、後者はさらに低悪性度、中悪性度、高悪性度に分けられます。悪性リンパ腫は全身のどの部位にも広がるため、治療を開始する前に採血検査、画像検査(CTやPET)、骨髄検査などを行い病気が存在する部位を確認しておくことが重要です。 当科では最新の診療ガイドライン(日本血液学会編集 造血器腫瘍診療ガイドライン)に基づき治療を行っています。組織型や病気の広がり具合(ステージ)によって治療法は異なりますが、化学療法 (抗がん剤の治療)が中心となります。抗体療法(リツキシマブ、ポラツズマブなど)を併用したり、放射線治療を組み合わせたりすることもあります。化学療法の1コース目の治療は入院が必要ですが、2コース目以降は外来通院で行います。全治療は通常、5ヶ月程度かかります。再発した場合には造血幹細胞移植(自家移植・同種移植)が行われる場合もあります。
【急性白血病】
造血幹細胞が「がん化」した病気です。日本では年間人口10万人あたり約7人が発症します。正常な血液細胞が作られなくなった結果、赤血球の減少による貧血(動悸、息切れ)、血小板の減少による出血傾向(血が止まりにくい、手足に点状出血や紫斑が生じる)、白血球の減少による抵抗力の低下(熱が出やすい)などの症状が起こります。 血液検査や骨髄検査により診断し、抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植により治療します。 当科では最新の診療ガイドライン(日本血液学会編集 造血器腫瘍診療ガイドライン)に則り、病型分類に基づいた治療を行っております。無菌室18床(個室6床)を用い、化学療法に加え、同種幹細胞移植(非血縁者間を含む)を積極的に行うとともに、病勢が落ち着いた患者さんには、外来での治療も行っています。さらに、近隣の医療機関との連携を進め、患者さんの「希望」、「生活の質」を重視した、地域ぐるみでの診療にも力を入れるなど、患者さん一人ひとりの状況に合わせた「個別化医療」の実現にも力を入れています。
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 411 2.62 2.57 0.24% 69.02
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 156 9.98 8.88 6.41% 73.01
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 98 8.03 7.45 0.00% 74.36
06007xxx9910xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 55 5.87 4.08 0.00% 70.07
060102xx99xxxx 穿孔又は膿瘍を伴わない憩室性疾患 手術なし 53 9.62 7.60 3.77% 62.02
 ⼤腸の粘膜の⼀部がイボのように隆起してできた病変を⼤腸ポリープといい、良性の場合も悪性の場合もあります。
 胆管結⽯とは胆汁の流れ道にできる結⽯のことで、胆汁の流れを妨げて⻩疸の原因となります。胆管炎とは、その胆管に細菌感染を起こした状態です。胆汁の流れが悪いと容易に胆管炎などの感染を引き起こし、さらに腹腔膿瘍といっておなかの中に膿の塊ができることがあります。
 胃の悪性腫瘍は、胃粘膜の細胞が何らかの原因で癌などの悪性細胞となったものです。病変が進⾏するにつれて徐々に胃の外側へと広がりますが、早期の病変は内視鏡粘膜切除術で治療できる場合があります。
 膵臓に悪性腫瘍が生じた場合、診断のために内視鏡的組織検査を行います。また腫瘍による閉塞性黄疸が生じた場合には内視鏡的ドレナージ術を行います。
 憩室とは、腸管の壁が腸の外側に向かって⾵船状に突出している状態です。憩室は炎症や出⾎を引き起こすことがあり、症状に応じて抗⽣剤加療や⽌⾎術を要します。ときには粘膜に穴が開く穿孔や、感染を伴って膿の溜まる膿瘍を作ることがあります。
消化器・一般外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 88 4.36 4.54 0.00% 72.59
060035xx0100xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 87 15.31 14.81 0.00% 72.60
060150xx99xxxx 虫垂炎 手術なし 79 9.19 8.00 2.53% 46.34
060210xx99000x ヘルニアの記載のない腸閉塞 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 70 11.17 9.08 8.57% 72.31
060150xx03xxxx 虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 69 6.55 5.32 0.00% 40.35
 消化器・⼀般外科では、消化器系(⾷道、胃、⼩腸、⼤腸、肝臓、膵臓、胆道、脾臓)の悪性および良性疾患、成⼈の鼠径部ヘルニア、痔核、痔瘻、直腸脱など肛⾨疾患の⼿術を⾏っており、中難度・⾼難度の腹腔鏡⼿術も積極的に⾏っています。さらに、当院救命救急センターと連携し、⾼度外傷⼿術から急性⾍垂炎や胆嚢炎に⾄るまで対応しております。
 令和6年度の患者数が多かった疾患は、1位 ⿏径ヘルニア(ヘルニア⼿術)、2位 結腸の悪性腫瘍(結腸切除術など)、3位 虫垂炎(保存的治療)、4位 腸閉塞(保存的治療)、5位 虫垂炎(虫垂切除術)でした。消化器・⼀般外科では良性疾患や悪性腫瘍の⼿術だけでなく、緊急手術や内視鏡的治療など幅広く取り組んでいることが結果に反映されています。
リウマチ・膠原病・アレルギー内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070560xxxxx00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 154 13.95 14.93 1.30% 53.17
070470xx99x0xx 関節リウマチ 手術なし 手術・処置等2なし 29 15.69 15.00 0.00% 72.90
161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等 手術なし 手術・処置等2なし 29 2.10 2.63 0.00% 34.10
070560xxxxx90x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 処置等2-9あり 定義副傷病なし 26 23.39 22.02 3.85% 42.31
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2なし 22 13.23 16.40 13.64% 81.86
 膠原病などの全⾝性臓器障害を伴う⾃⼰免疫性疾患は、診断、病勢・重症度の把握、これに続く寛解導⼊療法、または外来治療経過中の再発のために⼊院を要することがあります。リウマチ・膠原病・アレルギー内科では、迅速な診断と確実な疾患制御、ステロイド減量を視野においた適切な免疫抑制薬や生物学的製剤の併用、並びに合併症予防策を⾏うことにより、⼊院期間が短縮できるようにしております。血漿交換療法などの処置も必要な方に適切に施行しています。また、関節リウマチや膠原病の代表的合併症の⼀つである間質性肺炎や肺感染症に対しても、個々の病状に合わせて適切な治療を行っております。
腫瘍内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060010xx99x40x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 処置等2-4あり 定義副傷病なし 45 8.58 8.61 0.00% 68.76
060010xx99x30x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 処置等2-3あり 定義副傷病なし 25 9.76 14.51 0.00% 66.44
06007xxx9900xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 22 10.73 11.01 4.55% 70.91
06007xxx97x0xx 膵臓、脾臓の腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし 19 16.16 11.52 15.79% 69.89
060035xx99x0xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし 16 16.94 7.91 18.75% 67.13
 腫瘍内科では消化器がんを中⼼に、化学(放射線)療法や緩和治療など多くの治療を外来で施⾏しています。しかし、シスプラチンなどの持続点滴や⻑時間補液を必要とする化学(放射線)療法は⼊院による治療が必要です。⾷道がんは患者数の増加に加えて、シスプラチンを⽤いた治療が標準治療であるため⼊院が多いです。
 また、膵がんでは、病態から内視鏡的処置を必要とする場合や、緩和治療を⾏うケースが多く、全⾝状態が悪い⽅や⾼齢者等に対して⼊院で治療を⾏う場合があります。このようなケースでは⼊院期間が⻑くなることがあります。
総合診療内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上) 手術なし 手術・処置等2なし 20 12.10 16.40 20.00% 84.20
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 15 16.60 20.78 46.67% 86.07
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 12 14.50 13.66 16.67% 79.83
160610xx99xxxx 四肢筋腱損傷 手術なし - - 13.15 - -
040070xxxxx0xx インフルエンザ、ウイルス性肺炎 手術・処置等2なし - - 6.98 - -
 当科は、診断のついていない症候(例:不明熱)を有する患者さんの入院診療に加え、頻度の高い疾患の入院診療も行っています。その中で、令和6年度は、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎などの呼吸器感染症、誤嚥性肺炎、急性腎盂腎炎、急性巣状糸球体腎炎などの尿路感染症の内科的治療が当科における頻度の高い入院の理由でした。いずれのDPCコードも高齢者の割合が多く、平均年齢は70歳台から80歳台となっています。高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、入院の理由となった疾患以外の併存疾患についての診療を行うことが求められます。当科は、領域横断的な診療を行い、入院の理由となった疾患はもちろん、併存疾患についても適宜、院内の専門診療科と連携しながら診療を行っています。
乳腺・内分泌外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1なし 398 9.88 9.77 0.00% 60.40
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 220 4.07 5.50 0.00% 56.29
090010xx99x0xx 乳房の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2なし 38 12.05 9.75 0.00% 62.39
100020xx010xxx 甲状腺の悪性腫瘍 甲状腺悪性腫瘍手術 切除(頸部外側区域郭清を伴わないもの)等 手術・処置等1なし 24 5.92 7.90 0.00% 50.42
100130xx97x0xx 甲状腺の良性結節 手術あり 手術・処置等2なし 23 5.78 7.05 0.00% 54.09
 「乳がん」は現在本邦女性で最も罹患率の高い癌種で、壮~中年期(30 代後半から60 代)の女性がん死亡第1位の重⼤な疾患です。乳腺内分泌外科では診断・治療・ターミナルケアまで⼀貫した乳がん診療を実践しています。院内の複数の診療科で協働し、時には院外の医療機関とも連携しながら、ステージ(病期)、サブタイプ(乳がんの種類)、患者さんの背景によって、個々に最良の治療⽅法を選択する、個別化医療を提供しています。手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤、分子標的薬)、内分泌療法、などの集学的治療を、院内外のチーム医療で実践することによって乳がん克服を⽬指しています。
 甲状腺の手術は良性疾患と悪性疾患に分けられます。甲状腺疾患については、内分泌疾患センターで代謝・内分泌内科や、RI診断・RI治療、IVRなどを担う放射線科と連携し、集学的な診断、治療にあたっています。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 127 28 12 33 11 50 1 8
大腸癌 77 51 126 49 23 85 2 9
乳癌 267 231 31 17 41 146 1 8
肺癌 130 42 108 229 44 177 1 8
肝癌 20 23 34 32 - 74 2 6

※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

【胃がん】
 胃がんは前年に比べるとStageⅠの症例は減少、 Ⅱ.Ⅲの症例は横ばい、StageⅣ増加しておりました。(StageⅠ 127例、StageⅡ 28例、StageⅢ 12例、StageⅣ 33例、不明 11例) StageⅠは消化器内科にて内視鏡治療を行ったものや、その後に外科的切除を行った症例も含まれており、内科と外科が連携して治療を行っています。StageⅣは基本的には腫瘍内科での抗がん剤治療となりますが、症例によっては緩和手術としてバイパス術も積極的に行っています。再発症例50例に対しては、残胃癌として手術を行った症例や腫瘍内科とともに抗がん剤治療や緩和治療を行った症例が含まれます。

【大腸がん】
 大腸がんは前年に比べ81例増加しました。(StageⅠ 77例、StageⅡ 51例、StageⅢ 126例、StageⅣ 49例、不明 23例)StageⅠは内視鏡治療適応症例は主に消化器内科で切除を行っており、追加切除が必要な症例にはその後に外科的切除を行っています。大腸がんはStageⅣ症例に対しても、症状緩和や予後改善を期待して積極的に手術を行い、その前後で抗がん剤治療を導入しています。再発85例のうち、根治を目指した手術を行った症例も含まれています。また、局所進行直腸がんにおいては、術前放射線化学療法の後に手術を行う症例もあります。

【乳がん】
 乳がんは初発乳がんでStageⅠ 267例、StageⅡ 231例、StageⅢ 31例、StageⅣ 17例、不明は41例でした。
StageⅠ~Ⅲに対しては手術療法に加えて、放射線療法や薬物療法を行い、根治を目指します。再発症例であっても、初回手術部の局所やリンパ節にがんがとどまる場合には、再度の切除手術を行い根治を目指しています。遠隔転移(骨・肺・肝などへの転移)を伴うStageⅣあるいは転移再発には薬物療法を中心に治療を行います。その際の薬剤選択は乳がんの種類(サブタイプ)に応じて、内分泌療法薬、抗がん剤、分子標的薬の中からエビテンスに基づき選択します。
 また、乳腺・内分泌外科では新規薬剤の治験にも数多く参加しています。患者さんにとっては治療の選択肢を増やすことにもなり、患者さんと共に未来の標準治療を作ることに積極的に取り組んでいます。

【肺がん】
 肺がんはStageⅠ 130例、StageⅡ 42例、StageⅢ 108例、StageⅣ 229例、不明44例、再発転移177例でした。令和5年度に比べるとコロナ禍も明けて健診等の医療環境が回復傾向にあり、受診症例が多くなったと予想されます。 StageⅠ~ⅡおよびⅢの一部に手術適応があり、主に胸腔鏡を用いた肺葉切除術およびリンパ節郭清を行います。それ以外の病期や再発転移症例には抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害などの薬物療法に放射線治療を追加したりする治療が行われます。さらに症例によっては新薬治験や術前導入療法を先行し腫瘍を小さくした後に外科治療を加える集学的治療も積極的に行っています。

【肝がん】
 肝臓がんは前年度と比較し初発症例が41例増となりました。(StageⅠ 20例、StageⅡ 23例、StageⅢ 34例、StageⅣ 32例、不明 6例)
近年C型肝炎ウイルスの治療の進歩による減少傾向に反して、非ウイルス性肝硬変が増加している実態が影響していると思われます。肝疾患医療センターを通じて集学的治療を行っております。手術において一般的な系統的肝切除はもちろん、切除不能症例に対しても化学療法を併用した高難度手術を行っています。適応は限られますが腹腔鏡下手術を取り入れております。内科においても診断はもちろんのこと、再発治療や切除不能例に対する全身化学療法・焼灼治療を積極的に行っています。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 28 9.32 52.18
中等症 148 15.14 75.41
重症 62 18.15 85.16
超重症 31 13.39 78.16
不明 - - -
 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ感染症)の5類への移行後に肺炎患者は増加しています。感染防御に対する関心の低下、しばらくその他の感染症の流行がなかった事による免疫能の低下、高齢化の進行等が背景として考えられます。コロナ感染症は今でも流行を繰り返しており、さらに様々な病原体による肺炎が認められます。高齢者の中には肺炎による入院中に筋力や意欲が低下し、なかなか元の生活に戻れない方も多くみられます。入院治療により肺炎症状が軽快したら、速やかにリハビリを進め、自宅や施設での日常生活に戻れるように、病病連携や病診連携、在宅支援等のネットワークづくりが必要です。介護保険等の支援制度も適切に活用しながらできるだけ早く日常生活に戻るステップを開始できるよう、地域医療の皆様との連携を更に深めていきたいと思います。また、肺炎予防方法としての新型コロナワクチン、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、RSウイルスワクチンの接種や口腔衛生の管理、嚥下訓練など、予防の啓発も必要と思われます。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 290 26.5 76.3 42.39%
その他 45 19.91 74.2 3.58%
 当院は、日本脳卒中学会により認定された一次脳卒中センター(Primary Stroke Center)のコア施設であり、24時間365日体制で、発症直後の脳梗塞に対して血栓を溶かす治療(血栓溶解療法)や、カテーテルで詰まった血のかたまりを取り除く治療(機械的血栓回収療法)を行うことができます。
 院内には脳卒中専門の集中治療室(SCU:Stroke Care Unit)があり、重い合併症を伴う脳卒中にも常時対応可能です。最先端の診断技術と多職種によるチーム医療で迅速に診断を行い、病状が安定していれば急性期から病棟内のリハビリ訓練室でリハビリテーションを開始し、効果を上げています。
 また、入院中に急に脳卒中を発症した場合にも迅速に対応できるよう、2018年5月から「院内発症脳卒中対応チーム(iSAT:in-hospital stroke action team)」を設置しています。このチームは、脳神経内科や脳神経外科の医師、脳卒中リハビリ認定看護師、病棟看護師などで構成され、緊急度の高い症例にも確実に対応し、良好な治療成績を上げています。
 さらに、脳卒中の原因が心臓にある場合(潜在性心房細動や卵円孔開存など)、脳神経内科医と循環器内科医が「Brain Heart Team」として協力し、カテーテル治療やデバイス治療を含めて最適な治療方針を検討・決定しています。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
小児科・新生児科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9131 新生児仮死蘇生術 仮死第1度のもの 38 0.00 32.84 28.95% 0.00
K9132 新生児仮死蘇生術 仮死第2度のもの 18 0.00 56.06 38.89% 0.00
K5621 動脈管開存症手術 経皮的動脈管開存閉鎖術 - - - - -
K570-3 経皮的肺動脈形成術 - - - - -
K2762 網膜光凝固術 その他特殊なもの(一連につき) - - - - -
【小児科】
 小児先天性疾患・循環器疾患の中では、先天性心疾患が多くみられます。近隣からの紹介も増え、それに伴って手術件数も増加しています。先天性心疾患の開心術においては人工心肺を使用し、新生児・乳児重症例では、術後管理においても人工心肺・体外式膜型人工肺が使用される症例もみられます。その際、術中術後自己血回収術も積極的に行われ、輸血量を減らしたり自己血で完結する努力もされています。心臓カテーテルは検査法としても治療法としても重要であり、経皮的肺動脈形成術はその典型的な術式のひとつです。また、こうした重篤な先天性心疾患の周術期管理や集中治療管理においては、新生児蘇生術が実施される局面もしばしばみられます。

【新生児科】
新生児仮死は、分娩前・中に状態が悪くなるために発生する病態です。当院は総合周産期母子医療センターでより重症な妊婦、新生児を管理していることを反映している結果と考えています。仮死第1度と仮死第2度は重症度の違いによる分類で、第2度はより重症な仮死である事を示します。
動脈管開存症手術(経皮的動脈管開存閉鎖術)は早産などの理由で動脈管が自然閉鎖しない場合に実施する手術です。小さな児に実施する治療であり、繊細な技術を要求される手術です。
網膜光凝固術は、未熟児網膜症に対して行う手術です。レーザーを網膜に照射して、網膜の無血管野を焼灼し、異常な血管の増殖を防ぎます。1000-1500g程度の時期に行う事が多く、患者に多大なストレスがかかる手術です。また、小さい眼球で実施する必要があるため、心臓手術同様に繊細な技術が要求されます。
当院では周産期総合医療センター、こどもセンターの経験豊富な医師、看護師が共同して術後管理にあたり、術後のお子様に細やかなTotal careが行われるよう心掛けております。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術 肩、股、膝 269 1.66 19.46 11.15% 70.86
K0483 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 前腕、下腿 82 0.54 2.21 0.00% 48.12
K0462 骨折観血的手術 前腕、下腿、手舟状骨 74 1.80 5.72 4.05% 52.85
K1423 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 後方椎体固定 59 2.42 18.39 13.56% 68.08
K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿 44 3.98 17.59 31.82% 70.20
 整形外科では、整形外科各領域(足、膝、股関節、脊椎、手、外傷)の疾患に対し、各分野の専門医が手術を担当しています。
 令和6年度の手術別患者数で最も多いのは、人工関節置換術でした。これは人工関節センターを開設したことで、より専門的な治療を望む患者さんの受診が増えたことが影響していると思われます(特に、肩関節疾患が増えております)。第3位と第5位は骨折観血的手術です。これは当院の救命救急センターで、多くの外傷患者さんへの対応をしていることが影響していると考えます。第2位の骨内異物(挿入物を含む)除去術(前腕等)は、骨折の治療で骨に挿入した金属のプレートやスクリュー、鋼線等を抜去する手術であり、骨折の手術が多いとそれに比例して多くなります。第4位は脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(後方固定術)ですが、これは脊椎センターを開設し、より多くの患者さんが受診したことと、救命救急センター経由の脊椎外傷患者さんへの手術が増加したことが影響していると考えます。
形成外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K476-32 動脈(皮)弁及び筋(皮)弁を用いた乳房再建術(乳房切除後) 二次的に行うもの 71 1.07 15.72 0.00% 49.42
K476-4 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術 乳房切除後 16 1.00 7.06 0.00% 50.44
K0063 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) 長径6センチメートル以上、12センチメートル未満 11 0.91 2.82 0.00% 54.73
K0151 皮弁作成術、移動術、切断術、遷延皮弁術 25平方センチメートル未満 11 0.91 4.64 0.00% 38.64
K0052 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部) 長径2センチメートル以上4センチメートル未満 - - - - -
 形成外科では顔面の先天性、後天性変形に対する手術や、皮膚腫瘍、皮膚欠損に対する手術を多く行っています。
 特に乳がん切除後の乳房再建では、人工乳房(インプラント)と自家組織移植の両方の再建術を行っており、再建数とその仕上がりの美しさは日本でトップクラスの成績を誇ります。当院で行う乳房再建では、人工乳房と自家組織による再建のいずれでもパッチワーク状瘢痕を作らず、再建したことが分からない美しい乳房を再建することを目指しています。
 この他、露出部の皮膚腫瘍切除術、顔面骨骨折の治療、外傷・熱傷の治療、傷跡の修整などでも多くの手術を行っており、いずれも良好な結果を得ています。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術 その他 47 8.32 32.09 8.51% 57.79
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 40 0.25 4.05 10.00% 78.38
K1781 脳血管内手術 1箇所 31 1.58 25.77 25.81% 63.68
K160-2 頭蓋内微小血管減圧術 19 1.00 9.84 0.00% 55.79
K1783 脳血管内手術 脳血管内ステント 18 3.06 10.72 11.11% 62.06
1) 頭蓋内腫瘍摘出術
 脳腫瘍は良性と悪性に大別され、髄膜腫や聴神経腫瘍、下垂体腺腫は摘出術で根治可能です。一方、悪性脳腫瘍では摘出に加え、放射線治療や化学療法を併用する集学的治療が必須です。近年は内視鏡や頭蓋底外科の進歩により、安全で低侵襲な治療が可能になっています。
2) 慢性硬膜下血腫洗浄・除去術
 慢性硬膜下血腫は高齢者に多い頭部外傷後の合併症で、硬膜と脳の間に血腫が徐々に蓄積します。頭痛、認知機能低下、歩行障害、片麻痺などを呈し、CTやMRIで診断します。軽症は保存的治療も可能ですが、多くは穿頭洗浄術により血腫を除去し、症状改善が期待されます。
3) 脳血管内手術
 脳血管内手術は、カテーテルを血管内に進めて脳血管疾患を治療する低侵襲法です。動脈瘤にはコイル塞栓術やフローダイバーター、脳梗塞には血栓回収療法、頸動脈狭窄にはステント留置術を行います。当院では脳血管内治療科を設置し、24時間オンコール体制で緊急治療に対応しています。
4) 頭蓋内微小血管減圧術
 顔面けいれんや三叉神経痛の原因は、脳幹部の神経出口が血管に圧迫されることです。開頭により圧迫血管を移動させ、神経を減圧することで症状の改善が期待できます。根治性が高い一方、開頭術であるため合併症管理が重要です。
5) 脳血管内ステント
 脳血管内ステントは、脳動脈瘤や動脈狭窄に用いられるデバイスです。動脈瘤では瘤内血流を減らして破裂リスクを低減し(ステントアシスト・フローダイバーター)、狭窄では内腔を拡張し脳虚血再発を防ぎます。抗血小板療法を併用し、出血や血栓閉塞の管理が不可欠です。
呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 区域切除 52 2.39 7.67 0.00% 69.94
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの 50 2.66 9.00 0.00% 68.14
K5131 胸腔鏡下肺切除術 肺嚢胞手術(楔状部分切除) 42 2.83 4.21 0.00% 34.55
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 部分切除 27 2.33 6.48 0.00% 65.30
K504-2 胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術 - - - - -
 呼吸器外科で最も多い手術は原発性肺がんに対するもので、これに他臓器からの転移性肺悪性腫瘍を加えた肺の悪性腫瘍に対し、腫瘍進行度と悪性度及び患者さんの耐術能を考慮した最適な手術術式の選択を心掛けています。すなわち、原発性肺がんで、肺機能をはじめとした全身状態に問題がない患者さんに対しては、標準手術としての肺葉切除およびリンパ節郭清術が行われます。一方、肺の末梢にある小型早期肺癌、高齢者や肺機能をはじめ全身状態に問題のある患者さんに対しては、より身体への負担の少ない低侵襲機能温存手術として、肺の切除範囲を縮小した肺区域切除術や肺楔状切除術(部分切除)を行っています。現在では殆どの手術は胸腔鏡を使用して皮膚の切開創を小さくして行うことが多くなり、かつ手術の安全性を担保した術式選択をしています。最近では完全鏡視下手術に加えて*Single port(単孔式)手術も導入しています。
 また若年男性や肺気腫患者さんに突発的に生じることが多い気胸に対する根治手術として、原因となる肺のう胞を切除する胸腔鏡下肺切除術を行っています。 
 入院期間の短縮を心掛けていますが、肺がんは高齢者に発症することが多く、術後の回復に時間を要します。一人暮らしの方も少なくないため、それらを考慮した適切な術後在院日数を心掛けています。

* Single port(単孔式)手術…単一の小さい孔を開け、その孔だけで完了する手術です。
心臓血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5612ロ ステントグラフト内挿術 腹部大動脈 32 3.66 7.75 3.13% 78.13
K5551 弁置換術 1弁のもの 26 5.65 25.35 15.38% 67.73
K5601ニ 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈 その他 19 1.16 20.95 0.00% 69.16
K552-22 冠動脈、大動脈バイパス移植術(人工心肺不使用) 2吻合以上 17 9.65 22.29 0.00% 69.71
K5552 弁置換術 2弁のもの 13 6.69 42.08 7.69% 64.85
 傷んだ⼼臓の弁膜を⽣体弁や機械弁へ取り換える弁置換術、傷んだ弁を主に自己組織を利用して修復する弁形成術、胸部⼤動脈瘤に対する⼈⼯⾎管置換術などは⼈⼯⼼肺を使⽤して施行しています。腹部⼤動脈瘤や胸部⼤動脈瘤に対して、血管内治療であるステントグラフト内挿術も、積極的に⾏っています。これは⼤動脈瘤に対して、⼩さな⽪膚切開からカテーテルを使って⾎管内に⼈⼯⾎管を置く⼿術で、体への負担が少なく、⾼齢者や体力の弱っている患者さんに適しています。冠動脈バイパス術は、9割以上で⼼臓を⽌めない「オフポンプ冠動脈バイパス術」を⾏っています。その他で⽐較的多く⾏われる⼿術は、下肢の閉塞性動脈硬化症に対するバイパス⼿術があります。下肢静脈瘤に対しては、ラジオ波を⽤いたカテーテル治療の下肢静脈瘤⾎管内焼灼術を⾏っています。従来の下肢静脈瘤抜去術と⼊院⽇数は変わりませんが、術後の回復が早いことが特徴です。⽇帰りでの⼿術にも対応しています。 
小児外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術 両側 56 1.00 0.98 0.00% 4.91
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの 33 0.09 4.46 0.00% 10.24
K6335 鼠径ヘルニア手術 27 0.96 1.00 0.00% 3.56
K836 停留精巣固定術 17 1.00 1.00 0.00% 3.82
K6333 臍ヘルニア手術 11 1.00 1.00 0.00% 2.91
 第1位は「腹腔鏡下鼠径ヘルニア(両側)」で、第3位「⿏径ヘルニアの⼿術」でした。いずれも同一疾患(鼠径ヘルニア)が対象となります。それぞれ、56⼈と27人の合計83人に行っていました。2泊3⽇の⼊院で⿏径ヘルニア⼿術を⾏っています。
 第2位は「腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの)」で、急性虫垂炎の患者さんです。4−5日の入院期間となります。
 第4位は「停留精巣固定術」です。停留精巣の患者さん17⼈に行い、2泊3日の⼊院期間となります。第5位は「臍ヘルニア手術」で、臍ヘルニアの患者さんでした。2泊3日の入院期間となります。
産婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの 85 1.00 3.26 0.00% 45.65
K872-31 子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術 電解質溶液利用のもの 84 1.02 0.99 0.00% 48.87
K879 子宮悪性腫瘍手術 46 1.52 12.57 0.00% 59.80
K877-2 腹腔鏡下腟式子宮全摘術 37 1.22 3.87 0.00% 50.35
K889 子宮附属器悪性腫瘍手術 両側 37 2.05 10.97 0.00% 56.84
 当院産婦人科は産婦人科診療の4本柱である「周産期」「生殖」「婦人科」「女性ヘルスケア」に加えて、「腹腔鏡手術」「遺伝子診療」の 6領域全てに対応することが可能なスタッフを有しています。当院は、日本産科婦人科内視鏡学会認定腹腔鏡・子宮鏡技術認定医を複数有しており、積極的に低侵襲手術を取り入れていることから、婦人科疾患の中でも良性疾患に対する腹腔鏡や子宮鏡手術による手術数が増加しています(K8882、K872-31、K877-2)。さらに、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍指導医・専門医も複数在籍しており、婦人科悪性腫瘍等を中心とした婦人科診療に関しても県内トップクラスの症例数を有しております(K879、K889)。
眼科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術眼内レンズを挿入 その他 774 0.07 1.13 0.39% 75.02
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術 網膜付着組織を含む 229 0.17 3.31 0.00% 63.93
K2682イ 緑内障手術 流出路再建術 眼内法 173 2.05 3.02 0.00% 73.25
K2683 緑内障手術 濾過手術 101 1.59 6.49 0.99% 71.13
K2021 涙管チューブ挿入術 涙道内視鏡 97 0.03 1.01 0.00% 67.33
 水晶体再建術は、白内障に対する標準的な手術です。当院にご紹介いただいた患者さんには責任をもって手術を行います。多焦点眼内レンズを含め多種類の眼内レンズが選択可能であり、患者さんのニーズに合わせた眼内レンズを選択できるようになっています。白内障手術は日帰りと1泊2日の入院で対応しております。通常片眼からもう片眼まで1週間あけます。
 当院で行っている硝子体茎顕微鏡下離断術などの網膜硝子体手術は、糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前膜、網膜剥離、硝子体出血などをはじめとして、網膜硝子体疾患全般に渡っています。網膜剥離などの緊急手術症例に対しては、紹介後速やかに手術が受けられるシステムになっています。網膜剥離は硝子体手術でガスを入れてうつ伏せにする方法と、バックリング手術の方法があり、約1週間の入院となります。
 緑内障手術は濾過手術である線維柱帯切除術と各種低侵襲緑内障手術(Minimally Invasive Glaucoma Surgery:MIGS)及びチューブシャント手術が対応可能です。最近ではMIGSが多く行われるようになりました。眼内法の流出路再建術はその一つであり、白内障手術と同時に施行することができます。また、点眼や低侵襲緑内障手術等の治療で眼圧コントロールが難しい緑内障の患者さんには、眼圧下降作用の強い濾過手術も行っています。
 涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術では直径0.9㎜の極小内視鏡を使用して涙道再建を行っています。以前は骨を削る涙嚢鼻腔吻合術で治療していましたが最近は内視鏡手術で9割くらいの患者さんを治すことができています。もちろん治らない症例では涙嚢鼻腔吻合術も行っています。
耳鼻咽喉・頭頸部外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型 選択的(複数洞)副鼻腔手術 118 1.14 2.90 0.00% 53.40
K3772 口蓋扁桃手術 摘出 100 1.01 6.99 0.00% 18.16
K3192 鼓室形成手術 耳小骨再建術 34 1.18 2.06 0.00% 35.82
K309 鼓膜(排液、換気)チューブ挿入術 26 1.00 1.81 0.00% 4.31
K3932 喉頭腫瘍摘出術 直達鏡 25 1.04 2.20 0.00% 56.56
 当院では耳鼻咽喉科領域における主要な手術に対し、安全性と低侵襲性を重視し、できる限り短い入院期間での治療を心がけています。
1)内視鏡下鼻・副鼻腔手術(K340-5)
 慢性副鼻腔炎などに対する内視鏡下鼻・副鼻腔手術は、出血や合併症のリスクを考慮しつつ、平均在院日数は約4日(術前1日、術後約3日)です。リスクの高い症例ではナビゲーションシステムを使用し、安全第一で手術を行っています。
2)口蓋扁桃摘出術(K3772)
 慢性扁桃炎や睡眠時無呼吸症候群に対して行われる口蓋扁桃摘出術では、術後出血の早期発見と対応のため、平均在院日数を約8日(術前1日、術後約7日)としています。小児の手術が多いため、患者さんの平均年齢は18歳前後と比較的低いのが特徴です。手術時間の短縮につながるパワーデバイスを使用した術式や、低年齢児でも安全に行える術式を導入しています。
3)鼓室形成手術(K3192)
 慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対して行う鼓室形成手術は、感染制御と聴力改善を目的とし、平均在院日数は約3日(術前1日、術後2日)です。症例によっては2泊3日の短期入院で手術を行う場合もあります。内視鏡による低侵襲手術(経外耳道的内視鏡下鼓室形成術)を積極的に導入しています。
4)鼓膜チューブ挿入術(K309)
 中耳炎を繰り返す小児を中心に行われる鼓膜チューブ挿入術は、低侵襲で短期間の入院で可能です。平均在院日数は約2日(術前1日、術後1日)で、平均年齢は4歳と低年齢が中心です。
5)喉頭腫瘍摘出術(直達鏡)(K3932)
 声帯ポリープや喉頭乳頭腫、早期喉頭腫瘍に対する直達鏡下手術では、術後の安静と経過観察のため、平均在院日数は約3日(術前1日、術後2日)です。より大きな再建を伴う喉頭癌手術では入院期間が長くなることもありますが、直達鏡下手術では短期間での退院が可能です。
放射線診断・IVR科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6154 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) その他のもの 18 0.94 2.67 0.00% 46.72
K142-4 経皮的椎体形成術 - - - - -
K6113 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 - - - - -
K773-72 腎悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(一連として) 2センチメートル超えるもの - - - - -
 第1位の血管塞栓術とは、皮膚から血管内に挿入したカテーテルを通じて塞栓物質を注入し、標的の血管を詰める治療のことです。肺動静脈奇形の塞栓術では鼠径部の静脈から2㎜径程度のカテーテルを挿入し、肺動脈と肺静脈との交通の部分に金属コイルなどの塞栓物質を留置し、交通を閉鎖します。通常4日以内の入院で治療を施行します。体の表面に傷はほぼ残らず、合併症も少なく、局所麻酔で可能な体に優しい治療です。その他に、四肢・軟部の動静脈奇形に対しても塞栓術を施行し、同様に動静脈の交通を塞栓物質で閉鎖します。
 第2位の経皮的椎体形成術は、骨転移や骨粗鬆症などによる脊椎圧迫骨折に対し、背中の皮膚から背骨に針を刺し、セメント剤を注入して、痛みを取る比較的新しい治療です。保存治療を行なっても、圧迫骨折の痛みが取れない方で、手術療法が不向きな方が適応になります。通常4日間程度の入院で、局所麻酔で治療が可能です。3位の抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置は(通称:CVポート留置術)、多くの場合は外来手術のため入院でCVポートのみを行うことは少ないです。他の診療科で薬物治療と合わせて、入院でCVポート留置することはしばしばあります。
 第4位の腎悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法は、比較的小さな腎癌に対する、局所麻酔下で腫瘍を焼き切る治療です。全身麻酔下での切除術が困難な方が対象で、通常1週間程度の入院で治療が可能です。CT画像を参照しながら、腎癌に的確にラジオ波電極針を刺して、治療します。事前に針生検で癌であることを確かめたり、出血しないように塞栓術を併用することがあります。治療後は再発しないか、外来で腎泌尿器外科と共同で経過観察を行います。
脳神経内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K178-4 経皮的脳血栓回収術 53 0.21 31.51 67.92% 77.75
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 14 10.79 12.14 21.43% 76.07
K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む) 14 20.71 24.93 28.57% 72.14
K178-2 経皮的脳血管形成術 - - - - -
K1781 脳血管内手術 1箇所 - - - - -
 脳神経内科では、脳梗塞の発症直後(超急性期)の患者さんに対して、血管の中にカテーテルを入れて、詰まった血のかたまりを取り除く「血栓回収術」や、細くなった血管を広げる「脳血管形成術」、さらに首の血管が狭くなった場合にステント(金属の筒)を入れて血流を保つ「頸動脈ステント留置術」などを行っています。これらの治療によって、脳梗塞による後遺症をできる限り減らすことを目指しています。また、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤に対しては、頭を開けずにカテーテルでコイルなどを詰める「脳血管内手術(脳動脈瘤の血管内治療)」を行い、再出血を防ぐ治療も行っています。
 パーキンソン病の患者さんには、飲み薬だけでは効果が不十分な場合に、薬を腸に直接持続的に流し込むための「胃ろう造設術(おなかに小さな管をつける手術:経皮的内視鏡下や腹腔鏡下で行うことがあります)」や、脳の深い部分に電極を埋め込んで症状を和らげる「深部脳刺激療法」といった先進的な治療を行っています。
 その他には、重い病気のために呼吸の筋肉が動かなくなった場合には「気管切開術」を行ったり、食べ物や飲み物が飲み込みにくい患者さんには「胃ろう造設術」や「中心静脈カテーテル(点滴用の管)」の設置、「喉頭気管分離術(気道と食道を分ける手術)」などを行うことがあります。
皮膚科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術 単純切除 43 2.47 7.58 0.00% 75.63
K013-22 全層植皮術 25平方センチメートル以上100平方センチメートル未満 - - - - -
K0062 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) 長径3センチメートル以上6センチメートル未満 - - - - -
K0591 骨移植術(軟骨移植術を含む。) 自家骨移植 - - - - -
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 - - - - -
 1位の皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除)は、悪性黒色腫、基底細胞癌、有棘細胞癌、乳房外パジェット病などの皮膚がんの切除であり、原則として手術前日に入院となります。単純切除や小さい皮弁や植皮の場合は平均術後日数は約7日になっています。センチネルリンパ節生検を合わせて行う場合は手術前前日の入院になります。
 2位の全層植皮術は、境界が不明瞭な皮膚がんに対して、二期的に再建を行う場合にしばしば用いられます。
 3位の皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径3cm以上6cm未満)は、良性の腫瘍で大型のものであり、入院手術が必要になります。
 4位の骨移植術は、骨病変を伴う難治性皮膚潰瘍に対して、整形外科の助力を仰ぎ入院手術を行ったものになります。
 5位の四肢の血管拡張術・血栓除去術は、血流障害を伴う難治性皮膚潰瘍に対して、循環器内科の助力を仰ぎ入院手術を行ったものになります。
腎泌尿器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術) 電解質溶液利用のもの 123 1.81 7.33 0.00% 74.55
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 119 1.30 4.35 2.52% 67.83
K843-3 腹腔鏡下小切開前立腺悪性腫瘍手術 22 1.86 8.64 0.00% 68.32
K773-2 腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術 19 2.11 16.63 0.00% 75.95
K773 腎(尿管)悪性腫瘍手術 16 1.88 10.00 0.00% 62.50
 1位の膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術, TURBT: transurethral resection of bladder tumor)は内視鏡を尿道から挿入し、先端のループ状電気メスで膀胱粘膜に発生した腫瘍を切除する手術です。治療の意味に加えて、切除した組織を病理学的に調べることで、腫瘍の深達度、悪性度、組織型などを確認します。筋層に浸潤していない筋層非浸潤性膀胱がんはTURBTのみでは再発率が高いため、再発予防目的で膀胱内薬物注入療法を行うことがあります。その際は、切除組織の結果をもとに薬剤の種類や投与期間を決定します。
 2位の経尿道的尿管ステント留置術とは、尿路結石や腫瘍などの原因により尿管が閉塞し、腎臓から膀胱への尿の流れが妨げられている場合に行う処置です。尿管内にステントと呼ばれる細い管を挿入して通過障害を解除します。放置すると腎機能障害を招くため、迅速な対応が重要です。
 3位の腹腔鏡下小切開前立腺悪性腫瘍手術は前立腺がんに対して行われる手術で、小さな切開創から実施します。従来の開放手術の安全性と腹腔鏡手術の低侵襲性を兼ね備えた術式です。手術機器や術式は進歩を続けており、当院ではこれらの改良を取り入れることで、安全性の向上と侵襲の軽減を図っています。
 4位の腹腔鏡下腎(尿管)悪性腫瘍手術は腎または腎尿管の悪性腫瘍に対し、腹腔鏡を用いて腎臓あるいは腎臓と尿管を一塊として摘出する手術です。開腹手術に比べて切開創が小さく、術後の痛みが少ないことや入院期間が短いことが特長です。
 5位の腎(尿管)悪性腫瘍手術は4位の腹腔鏡手術を開腹で行う方法です。腫瘍が深部まで浸潤している場合やリンパ節転移が疑われる場合には、開腹手術が選択されます。
呼吸器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K508-21 気管・気管支ステント留置術 硬性鏡 29 0.72 5.31 62.07% 66.10
K510-3 気管支鏡下レーザー腫瘍焼灼術 18 1.28 4.72 22.22% 68.39
K3911 気管異物除去術 直達鏡 - - - - -
K6113 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 - - - - -
K508 気管支狭窄拡張術 気管支鏡 - - - - -
 1,2,4位について、悪性腫瘍(肺がんや食道がんなど)や結核などの良性疾患による中枢気道狭窄は、病状の進展速度によっては救命のための緊急的な処置を必要とする病変です。また食道がん等が気管や主気管支に浸潤し、気道と食道に交通(瘻孔といいます)を生じて繰り返す肺炎の原因になったりします。当科は中枢気道狭窄・気道の瘻孔に対するバルーン拡張術、レーザーによる腫瘍焼灼、あるいはステント留置術など、気管支鏡的治療をこれまで数多く実施しており、多くの医療機関より症例のご紹介をいただいています。気管支鏡を使用した治療的介入は今後も引き続き力を入れていきたいと思います。また、2024年3月からは重症肺気腫に対する気管支鏡的肺容量減量術を開始し、2025年8月までに6症例を実施いたしました。3位は気道に落ちた義歯等の異物を除去する手技で、やはり当科の特徴ということができます。5位について、肺がんの治療は有効な薬剤、治療方法の革命的な進歩により、たとえ進行期でも生命の予後は改善しつつあります。一方、そのために長期の治療が必要となり、抗がん剤投与のための点滴ルート確保が難しくなる患者さんもいます。そのような場合に抗がん剤の漏出の危険性が低く安全に投与を継続するための点滴路として植え込みカテーテルを留置します。
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの 321 1.90 2.69 0.31% 68.30
K555-22 経カテーテル弁置換術 経皮的大動脈弁置換術 210 5.84 8.51 8.10% 83.67
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他 151 1.85 1.54 0.00% 72.26
K559-3 経皮的僧帽弁クリップ術 63 5.76 12.32 4.76% 79.97
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 57 2.18 2.07 1.75% 75.04
 K5951 ⼼房細動が起きていると思われる4本の肺静脈と左⼼房の間に⼼臓の内側から⾼周波もしくは冷却焼灼を⾏い、伝導の絶縁部分を作り、肺静脈からの電流が心房に入れなくなります。どちらの治療も体に⽬⽴った傷が残らず、根本的な治療を⽬指しています。
 K555-22 固くなった⼤動脈弁に対して、開⼼⼿術という⽅法ではなく、通常のカテーテル検査や治療と同じやり⽅で、動脈⾎の流れに逆⾏させながらバルーンと呼ばれる特殊な⾵船(以下、⾵船)の上にたたまれた⽣体弁を適切な場所へ持っていき、留置する治療法です。外科的⼿術ができない患者さんにも⾏うことができ、また外科的⼿術のような⼤きな傷が残りませんので、⼿術後1週間ほどで退院できます。
 K5493 詰まっているもしくは詰まりかけた冠動脈を拡げる治療法です。当院では外来の検査で必要と判断された⽅にのみカテーテルを⽤いた冠動脈造影検査を⾏い、虚⾎が証明された病変に対して⾵船で広げた後にステントという薄い⾦網を内張りします。ステントは⾎管が狭くなりにくい薬剤が塗布されたステントを使⽤することが多く、⼿術後2〜3⽇で退院できます。
 K559-3 僧帽弁がしっかり閉じず、血液が逆流する「僧帽弁閉鎖不全症」に対して行うカテーテル治療です。通常の弁手術と異なり、大腿静脈からカテーテルを入れて行う低侵襲治療です。体への負担が少なく、回復も早いことが特徴です。
 K616 狭くなったり詰まりかけた下肢の動脈を拡げる治療法です。当院ではCTや造影検査で高度な狭窄と診断された病変を風船で拡げたり、安全な場所であればステントを内張します。⼿術後2〜3⽇で退院できます。
腎臓・高血圧内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術) 単純 51 4.47 7.31 1.96% 69.04
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 21 4.05 3.29 14.29% 74.19
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 10 4.00 5.50 0.00% 64.80
K607-3 上腕動脈表在化法 - - - - -
K6147 血管移植術、バイパス移植術 その他の動脈 - - - - -
 血液透析患者さんにとって透析のための血管アクセスは命綱のような大切なものです。特に、高齢化により良好な血管アクセスが作製できない、あるいは血管アクセスのトラブルを頻回に起こす患者さんも多く、近隣の透析施設が大学病院に期待する治療として、血管アクセス関連手術(経皮的シャント拡張術・血栓除去術、内シャント設置術、上腕動脈表在化法、内シャント血栓除去術など)があり、これらを適切なタイミングで安全に実施することが重要です。
 令和2年度より新型コロナウイルス感染症の蔓延により、これまで短期入院で行ってきた経皮的シャント拡張術・血栓除去術の多くを外来治療に変更しました。また、入院が必要な症例においても入院期間を短縮させることで平均入院日数は明らかに短くなりました。さらに、これまでX線透視下で行われてきた経皮的シャント拡張術については豊富な経験を持つ医師の指導の下、高性能超音波装置を用いた経皮的シャント拡張術を導入しました。これにより患者さんへの放射線被爆を低減することが可能となっています。当院では血管アクセストラブルを頻回に生じた症例を紹介いただくことが多いため血管移植術、バイパス移植術にも積極的に取り組んでいます。
代謝・内分泌内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル未満 10 8.10 5.80 0.00% 67.90
K654 内視鏡的消化管止血術 - - - - -
K462 バセドウ甲状腺全摘(亜全摘)術 両葉 - - - - -
K1381 脊椎披裂手術 神経処置を伴う - - - - -
K171-21 内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術下垂体腫瘍 - - - - -
 代謝内分泌内科では、糖尿病患者・内分泌疾患患者の全人的な医療を行っております。糖尿病や内分泌疾患では腫瘍や血管障害など様々な病態の合併が多く、ポリープ・がんや出血などを伴う症例においても他科と連携して対応しております。また、内分泌疾患の緊急症にも対応しており、バセドウ病で甲状腺クリーゼや無顆粒球症を起こした症例などに対する手術加療も内分泌疾患センターで連携して行っています。
救急科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6021 経皮的心肺補助法 初日 10 0.10 23.30 0.00% 52.90
K386 気管切開術 - - - - -
K6151 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) 止血術 - - - - -
K601-21 体外式膜型人工肺(1日につき) 初日 - - - - -
K6154 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等) その他のもの - - - - -
 急性心筋梗塞などの急性重症心疾患による急性循環不全(心原性ショック)は急速に致命的となり、救命の為には強力な循環補助を必要とします。また、突然の心停止に対して従来の心肺蘇生法で心拍の再開が得られない場合、に救命のために機械的循環補助を必要とすることがあります。このような場合にカテーテルを大腿動静脈などの大血管に緊急に挿入して人工心肺回路に接続して循環補助をする経皮的心肺補助法(V-A ECMO)が極めて有効ですが、一般の病院では通常施行するのは難しく、救命救急センターとして積極的に行い、救命につなげています。
 呼吸不全の状況では口から気管にチューブを挿入(経口気管挿管)をして人工呼吸器につないで人工呼吸による補助を行いますが、この経口気管挿管は長期に行うと口の中から声を出す声門の構造にチューブが損傷を与えてしまいます。これに対して首の前面から気管に直接管を入れる気管切開という手術を行って人工呼吸を長期に行う事を可能として重症呼吸不全例の救命・回復につなげています。
 重症の外傷では損傷した部位からの大量出血から出血性ショックに至り、致命的となる事が多く存在します。当院では救命救急センターとして搬入された重症外傷に対して緊急手術により止血を行うだけでなく、緊急のCTやカテーテルという細い管を血管内に入れて迅速に損傷部位・血管を同定して上で、そのカテーテルにより血管をふさぐ血管塞栓物質を破綻して出血している血管を内側から詰める事により止血する血管塞栓術を積極的に行い、より低侵襲で迅速な救命治療を救命救急センターとして展開しています。
 重症COVID-19肺炎などの重症の呼吸器疾患・損傷により呼吸不全をきたした場合、人工呼吸器による呼吸補助を行いますが、人工呼吸器はあくまで肺における呼吸補助するため、極度に肺の機能が低下した場合は人工呼吸器で補助しても十分な呼吸ができないため、肺に頼らず直接血管内の血液に酸素を投入・二酸化炭素除去を行う事が必要となります。これを可能とするのが体外式膜型人工肺(V-V ECMO)であり、対象とする重症呼吸不全疾患そのものを含め、一般の病院では通常施行できないため、救命救急センター・集中治療室として積極的に対応・施行しています。
 重症胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸憩室など消化器系疾患で消化管内に大量に出血して死亡する場合が少なからずみられ、通常緊急の消化管内視鏡での対応が行われますが、大量の出血の場合止血困難となる場合も少なくありません。そのような場合に出血の原因となっている部位まで血管を通してカテーテルと到達させ、血管の中から出血部位の血管をふさぐ物質を流して止血する治療があり、救命救急センターとして積極的に行っています。
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル未満 361 0.32 1.16 0.28% 69.95
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 134 3.02 10.02 8.96% 76.84
K654 内視鏡的消化管止血術 64 0.98 7.89 6.25% 75.19
K722 小腸結腸内視鏡的止血術 61 1.33 5.38 0.00% 72.90
K7212 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル以上 55 0.64 2.78 0.00% 62.62
 内視鏡的⼤腸ポリープ・粘膜切除術あるいは胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術とは、内視鏡を⽤いてスネア(投げ縄型の電気メス)という輪状の針⾦などでポリープを切除する⽅法です。
 内視鏡的胆道ステント留置術とは、胆⽯や悪性腫瘍によって胆汁の通り道である胆管が狭窄・閉塞した場合に、プラスチックや⾦属でできた通り道であるステントを内視鏡で⼊れる治療法です。
 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術とは、早期の胃癌に対して、内視鏡で消化管の内腔から癌を切り剥がし、病変を⼀括切除するという治療法です。
 様々な原因により⼩腸結腸をはじめとする消化管から出血することがあります。内視鏡的⽌⾎術とは、内視鏡でその出⾎源を探し出し、⽌⾎処置を⾏う治療法です。
消化器・一般外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 113 1.19 5.99 1.77% 62.88
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 104 5.06 13.89 5.77% 72.53
K6335 鼠径ヘルニア手術 77 1.10 2.22 0.00% 71.74
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル未満 73 0.88 1.75 0.00% 71.47
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの 68 0.63 4.93 0.00% 40.40
 消化器・一般外科では、消化器系(食道、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、胆道、脾臓)の悪性および良性疾患、成人の各種ヘルニア、痔核、痔瘻、直腸脱など肛門疾患の手術を行っており、高難度の腹腔鏡手術も積極的に行っています。また、当院救命救急センターと連携し、高度外傷手術から急性虫垂炎や胆嚢炎に至るまで対応しています。
 令和6年度に行いました手術は、1位 腹腔鏡下胆嚢摘出術、2位 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除、3位 鼠径ヘルニア手術、4位 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)、5位腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの)でした。消化器・一般外科では、良性や悪性の定時手術から急性腹症の緊急手術まで幅広く取り組んでいます。
腫瘍内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6113 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 66 6.99 9.36 0.00% 66.92
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 25 5.44 13.48 0.00% 69.88
K6182 中心静脈注射用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 11 29.55 11.91 27.27% 72.91
K637-2 経皮的腹腔膿瘍ドレナージ術 - - - - -
K682-2 経皮的胆管ドレナージ術 - - - - -
 腫瘍内科では消化器がんを中心に、化学(放射線)療法や緩和療法を行っています。手術手技として行われるものとしては、化学療法の投与目的や食事摂取不良に対する中心静脈栄養を目的とした植込型カテーテル設置が多く行われています。植込型カテーテル設置は緩和治療として行う場合が多く、高齢者が多くなってきており、全身状態をしっかり評価してその必要性を見極めるために、術前の入院日数が年々長めになっています。また、腫瘍による胆道閉塞・上部消化管狭窄または閉塞に対してステント留置術を行っています。胆道閉塞に対するステント留置術は、緊急で行うことが多いため術前の入院日数は短くなっています。
乳腺・内分泌外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4763 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない) 231 1.04 6.79 0.00% 62.02
K4762 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない) 223 1.02 2.12 0.00% 56.57
K4765 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術・胸筋切除を併施しない 51 1.00 9.39 0.00% 58.88
K4768 乳腺悪性腫瘍手術 乳輪温存乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない) 40 1.03 11.75 0.00% 50.58
K4766 乳腺悪性腫瘍手術 乳房切除術・胸筋切除を併施する 38 1.47 7.92 0.00% 63.84
 乳がん(乳腺悪性腫瘍)に対する手術は通常合併症等がなければ、前日入院で行っています。乳房部分切除術(乳房温存手術)は術後入院期間も約2日と短く、低侵襲な手術といえます。乳房切除術の場合や乳房部分切除術の場合でも腋窩リンパ節郭清術を行なった場合は、皮下や腋窩に排液用のドレナージ・チューブが入り抜去後退院となるため、術後6日から10日程度の入院が必要です。整容性に配慮し乳頭乳輪を温存し(乳輪温存乳房切除術)、同時に自家組織や人工物を使用した乳房再建術(一次再建)を行う術式も積極的に行っています。一次再建を行う場合には、乳房切除後の乳房再建手術と術後の創部の管理は形成外科医師が担当します。ドレナージ・チューブを抜去できるまで時間を要するため術後14日から21日程度の入院が必要になります。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる 26 0.12%
180010 敗血症 同一 70 0.31%
異なる 95 0.42%
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 46 0.21%
異なる - -
 播種性血管内凝固症候群とは、外傷やがん、急性白血病、細菌による重度の感染症などの疾病をきっかけとして全身の細い血管に血栓が生じ過度の出血症状などが見られる重篤な合併症です。当院では数多くの併存症を持った患者さんの手術を行っており、特に肝損傷などの重篤な外傷や、肝臓がんや膵がん、肺がんあるいは心臓血管外科疾患などの大手術後等に播種性血管内凝固症候群を合併することがあります。また当院は重篤な患者さんを主に受け入れる救命救急センター(3次救急)があり、他の病院で播種性血管内凝固症候群を合併した患者さんが治療目的で紹介され入院する場合も多くあります。
 「入院契機と同一」とは、入院時すでに播種性血管内凝固症候群と診断された患者さんであり、10名未満でした。一方、「入院契機と異なる」とは、入院した時には別の病気で入院したが、入院中に播種性血管内凝固症候群を起こし、この治療に多くの時間や医療費を必要とした患者さんであり、26名(発生率0.12%)でした。令和5年度と比べると発生率は0.04%減少しています。
 敗血症の患者数は、入院した時から敗血症と診断された患者さんは70名であり、令和5年度比べるとほぼ同様と(1名増加、発生率0.01%増加)なっています。また、入院した時には別の病気で入院し、その後に敗血症を起こした患者さんは95名であり、令和5年度と比べると47名増加(発生率0.2%増加)しています。
 その他の真菌感染症の患者数は「入院契機と同一」、「入院契機と異なる」のどちらも10名未満でした。
 手術・処置などの合併症の患者数は、入院時から手術・処置等の合併症と診断された患者数は46名で、令和5年度と比べると7名の増加(発生率0.03%増加)でした。手術・処置等の合併症とは、主に「カテーテル感染症」や「術後感染症」等が挙げられます。これらは、一定の確率で起こり得るものですが、対策に取り組んでいます。
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
2,992 2,580 86.20%
 昨年度から大幅な改善が見られた。多職種や各種委員会によるワーキンググループを構築し、多角的に改善活動を推進した。診療科別の実施率を算出し、実施率が低い診療科には個別に指導を行った。また、リスク評価表の整備を行い、適切な医療プロセスの周知を徹底した。さらに、年度の変わり目には人事異動などにより周知が不十分となりやすいため、研修医をはじめとする職員への教育・周知を強化した。
 今後も医療安全室、手術室、Total Quality Management(以下、TQMと略)室が連携し、3か月ごとに経過を共有しながら、モニタリングと改善活動を継続していく。
血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
5,835 5,076 87.00%
 特定機能病院である当院は、2024年10月より「D025 基本的検体検査実施料」に含まれる「D018 細菌培養同定検査」をDPC(診断群分類別包括評価)データの一部であるEファイル(診療明細情報)とFファイル(行為明細情報)(以下、EFファイルと略)に出力することとなったため、2024年10月1日から2025年5月31日までの期間について集計を実施した。
 昨年6月からボトル供給に制限があり、当院では2024年10月6日に解除されたが、解除後の現場への周知に一定の時間を要したため、実施率にわずかな影響が生じたと考えられる。また、当院の機能上、小児患者が多く含まれており、2セット採血の実施が困難な症例が一定数存在していた。さらに、入院患者と外来患者に分けて実施状況を検証した結果、入院患者については実施率90%前後を維持していた一方、外来患者の実施率は低いことが判明した。この要因としては当院の外来診療において「D018 細菌培養同定検査」請求の仕組み上の不具合が大きく影響しており、当該不具合は既に改善済みであるが、2024年度のデータにはその影響が強く反映されていた。現在は90%前後で推移している。
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
1,250 1,138 91.00%
 特定機能病院である当院は、2024年10月より「D025 基本的検体検査実施料」に含まれる「D018 細菌培養同定検査」をEFファイルに出力することとなったため、2024年10月1日から2025年5月31日までの期間について集計を実施した。
 本指標については、感染制御部とTQM室が合同で3ヶ月ごとに結果を確認し、必要に応じて各診療科にフィードバックを行った。次年度からは、抗生剤適正使用支援チーム(AST)と検査部が連携して改善活動を行うことで、高い実施率を維持していく。
転倒・転落発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数(分母)
退院患者に発生した転倒・転落件数
(分子)
転倒・転落発生率
274,180 472 1.72‰
 転倒・転落については、従来から医療安全管理室がデータの収集・分析・フィードバックを行っている。病棟においては、アセスメントの実施を徹底するとともに、発生時には看護部門への迅速な報告を行い、その後の対策と予防を複数人で確認する仕組みを構築している。これらの取り組みが発生抑制につながっていると考えられる。
 一方で、当院は郊外の特定機能病院であり、術後患者が多いことに加え、地域特性として高齢者の入院割合が高いため、転倒・転落リスクの高い患者が一定数存在している。
転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
もしくは入院患者延べ数(分母)
退院患者に発生したインシデント
影響度分類レベル3b以上の
転倒・転落の発生件数(分子)
転倒転落によるインシデント影響度
分類レベル3b以上の発生率
274,180 10 0.04‰
 転倒・転落については、従来から医療安全管理室がデータの収集・分析・フィードバックを行っている。病棟においては、アセスメントの実施を徹底するとともに、発生時には看護部門への迅速な報告を行い、その後の対策と予防を複数人で確認する仕組みを構築している。これらの取り組みが発生抑制につながっていると考えられる。
 一方で、当院は郊外の特定機能病院であり、術後患者が多いことに加え、地域特性として高齢者の入院割合が高いため、転倒・転落リスクの高い患者が一定数存在している。
手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率ファイルをダウンロード
全身麻酔手術で、
予防的抗菌薬投与が実施された
手術件数(分母)
分母のうち、手術開始前
1時間以内に予防的抗菌薬が
投与開始された手術件数(分子)
手術開始前1時間以内の
予防的抗菌薬投与率
4,721 4,452 94.30%
 当院では、標準化されたフローと医師への教育により、本指標の高い実施率を維持している。医師への教育は主に麻酔科医が中心となって行い、さらに指導医と手術室の看護師が連携し、実施漏れがないようチェックを行っている。一方で、当院は救急患者の受け入れが多いため、緊急手術の対応などで標準化されたフローから外れてしまう症例も一定数存在する。
 今後も定期的にモニタリングを行い、実施率の維持に努めていく予定である。
d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和もしくは
除外条件に該当する患者を除いた
入院患者延べ数(分母)
褥瘡(d2(真皮までの損傷)以上
の褥瘡)の発生患者数(分子)
d2(真皮までの損傷)以上の
褥瘡発生率
273,301 121 0.04%
 当院では、標準化された褥瘡対策を実施しているため、発生率は低い状況にある。褥瘡チームは各病棟のリンクナースと協働し、全患者を対象としたリスクアセスメントおよびスクリーニングを基盤に対策の強化を図っている。一方で、本指標の分子は退院時を基準としているため、現場の改善活動に直接活用しにくい側面がある。そこで、独自にデータを収集し、継続的なモニタリングや予防・対応活動を実施している。
 さらに、褥瘡チームで収集したデータと本指標の測定値を照合した結果、DPCデータの一部である様式1への入力データ抽出時におけるシステム上の課題が明らかとなった。この点については、次年度に向けた改善課題として解決に取り組んでいる。
65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合ファイルをダウンロード
65歳以上の退院患者数
(分母)
分母のうち、入院後48時間以内に
栄養アセスメントが実施された
患者数(分子)
65歳以上の患者の入院早期の
栄養アセスメント実施割合
3,805 2,651 69.67%
 DPCデータの一部である様式1への入力データ抽出のために新しいテンプレートを作成し、2024年11月15日から運用を開始した。そのため、2024年11月1日から2025年5月31日までの期間について集計を実施したところ、11月の実施率が低く、その影響が認められた。3か月後からは安定したデータ抽出が可能となり、90%以上を維持している。
 栄養部を中心とした業務フローの整備と職員教育により、非常に高い実施率を維持している。栄養部としては100%を目標としているが、実施できなかった症例については原因を調査・検討している。その結果、土日や祝日、年末年始、ゴールデンウィーク等を挟むことで、入院48時間以内に実施できなかった症例が一定数存在することが明らかとなった。今後は全国の施設との比較も行いながら、可能な範囲で院内体制の整備も検討していく予定である。
身体的拘束の実施率ファイルをダウンロード
退院患者の在院日数の総和
(分母)
分母のうち、身体的拘束日数の総和
(分子)
身体的拘束の実施率
274,180 20,502 7.48%
 昨年度から病院全体で身体拘束最小化に向けた改善活動に取り組んでおり、実施率は徐々に減少している。身体拘束最小化委員会を立ち上げ、病院の指針や身体拘束を最小化するための業務フローを整備した。また、身体拘束最小化委員会が形骸化しないよう、ラウンド・教育研修・評価の三つの活動部会を設置し、職員一人ひとりの意識改革にも重点を置いている。講演会や研修に加え、月1回の多職種によるラウンド、定期的なモニタリングとフィードバックを実施している。本指標の改善活動には、看護師やコメディカルのみならず医師も積極的に参加し、病院全体で取り組む体制を構築している。今後も患者の安全面に十分留意しながら、更なる最小化に向けて取り組んでいく予定である。
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