来院・入院の方

聖マリアンナの先進的な医療

マルチプレックス遺伝子パネル検査(NCCオンコパネル)

聖マリアンナ医科大学 腫瘍内科
■はじめに

 病気の診断や治療の方法の開発のためには多くの研究が必要です。現在行われている診断や治療の方法も長い時間をかけて研究され、進歩してきました。国立がん研究センター(NCC)では、1回の解析で114個の遺伝子を解析できるマルチプレックス遺伝子パネル検査試薬(NCCオンコパネル)を開発し、がん患者さんのがん組織の遺伝子解析を行い、抗がん剤治療に役立つ遺伝子の変異を解析する臨床研究を2013年から行ってきました。その研究から、がん組織の遺伝子解析の結果は一部の患者さんの治療選択の補助として有効であることが分かってきています。そこで、当施設を含む複数の施設で、有用性をより明らかにするため、本研究を行うことを計画しました。本研究で使用するNCCオンコパネルは、医療機器として承認されていないため、「先進医療(先進医療B)制度」に基づいて定められた枠組みの中で実施します。

■対象患者

 この研究の対象は、16歳以上で、外科的な治療の対象でない原発不明がん※1患者さん、または、外科的な治療の対象でなく標準的な抗がん剤による治療を実施後の固形がん※2患者さんです。

 また、この研究では抗がん剤治療の効果・副作用に関係する可能性のある遺伝子を調べるため、以下にあげる腫瘍組織のいずれか一つが得られる患者さんを対象にお願いしています。

   腫瘍組織
   ①診断や手術時に既に採取され保管されている腫瘍組織
   ②本研究のために新たに採取する腫瘍組織

※1:原発不明がんとは、がんが発生した臓器(原発部位)から離れた部位で進展したがん(転移巣)が先にみつかり、原発部位がわからないがんのことです。

※2:固形がんとは、がんのうち血液を作る臓器である骨髄やリンパ節から発生する白血病やリンパ腫をのぞいた、かたまりを作って増殖するタイプのがん(例:胃がん、肺がん、乳がん等)のことです。


■方法
  1. 検査のための検体について
     がんの診断時に行った生検で採取した組織や、手術の時に摘出された組織を利用して解析を行います。
     保存されている腫瘍組織がない場合や、新たに採取することが望ましいと考えられる場合は、新たに追加で採取する腫瘍組織(この場合、新たに原則1回「生検※1」を行います)を研究に使わせていただきます。組織の採取は、通常行われる診断のための採取と同じ方法で行います。
    ※1:生検とは、内視鏡や針などを用いて小さい組織を採取することです。
  2. 解析の方法について
     腫瘍組織および血液からDNAを抽出します。抽出されたDNAに対して、マルチプレックス遺伝子パネル検査試薬(NCCオンコパネル)を用いて解析し、遺伝子の後天的な変化(体細胞遺伝子変異(たいさいぼういでんしへんい))の検出を行います。
     後天的な変化は、あなたの血液のデータを比較対照として決定します。腫瘍組織の遺伝子解析結果には、もともと生まれ持った個人差が含まれる可能性がありますので、血液DNAで検出される生まれ持った個人差を取り除くことにより、腫瘍細胞における体細胞遺伝子変異(たいさいぼういでんしへんい)を決定することができます。


    検査の流れ

  3. 解析結果とその後の治療について
     解析で得られた情報を基に、エキスパートパネル(各専門医などが参加する会議)で結果の意味付け、治療提案を行います。その結果により、新しい薬剤や新しい治療法の治験等の臨床試験に参加する機会が得られたり、より腫瘍の遺伝子変異にあった薬剤が選択できるなど(自由診療を含む)、今後の治療に役立つ可能性があります。
     一方、検査対象となる遺伝子に変異がない場合や、腫瘍組織の状態等により解析自体が不成功となる場合など、治療に直接役立つ結果が得られない可能性があります。また、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異の結果や、候補薬剤の情報が得られても、その薬剤が未承認や適応外の場合や、治験等の臨床試験が行われていない場合があるため、実際にはその薬剤が使用できない可能性があります。
■おわりに

 現在は、多くの遺伝子を一度に解析する検査は保険適用されていません。個々のがん患者さんの治療を検討・決定する際は、遺伝子解析を実施せず治療を行うか、治療薬ごとに遺伝子検査をその都度検査して、得られた結果に基づいて治療の必要性・適応を判断しています。このため、治療開始までに時間を要したり、複数回の検査のために保存されている組織または細胞量が減ったり、検査項目の漏れが生じてしまうことが考えられます。
 この研究により、NCCオンコパネルを用いた多遺伝子検査の有用性が期待できる結果が得られた場合には、NCCオンコパネルによる検査が保険診療として受けられるようになる可能性があります。また、個々の患者さんに、より適切な治療が適切なタイミングで提案できる体制が構築されることが期待されます。

<よくあるご質問に対する回答>
  • 検査に必要な検体は何ですか?
    以下にあげる腫瘍組織のいずれか一つが必要です。
       ①診断や手術時に既に採取され保管されている腫瘍組織
       ②本研究のために新たに採取する腫瘍組織
  • 必ず解析は成功しますか?
    解析の成功率は約90%です。腫瘍組織を解析しても遺伝子解析結果が出ない可能性があります。
  • 解析が不成功に終わった場合、お金は返金されますか?
    一切返金されません。
  • 解析結果とその後の治療はどうなりますか?
    解析で得られた情報を基に、エキスパートパネル(各専門医などが参加する会議)で結果の意味付け、治療提案を行います。
    その結果により、新しい薬剤や新しい治療法の治験等の臨床試験に参加する機会が得られる可能性があります。また、見付かった異常な遺伝子を標的とした薬剤があれば治療の選択肢になる可能性があります。ただし、この場合はすべてが自由診療になる可能性が高いです。
  • この検査をすれば必ず治療が見つかりますか?
    腫瘍の遺伝子に特異的な変異がない場合や、腫瘍組織の状態等により解析自体が不成功となる場合など、治療に直接役立つ結果が得られない可能性があります。
    また、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異や、候補薬剤の情報が得られても、その薬剤が未承認や適応外の場合、または、治験等の臨床試験が行われていない場合があるため、実際にはその薬剤が使用できない可能性があります。