薬物療法 treatment

薬物療法

乳がんの抗がん剤治療は通院で行います。大学での抗がん剤の点滴治療は「腫瘍センター」で、ブレスト&イメージングセンターでは「化学療法室」で受けていただきます。

薬物療法の種類

術前化学療法

  • 手術前に行う化学療法のことです。
  • 腫瘍を縮小させることによって乳房温存術の適応が拡大し、温存率が向上する、あるいは切除不可能な大きさのがんを切除可能な大きさにすることができる。
    (効果があっても必ず温存術が可能となるわけではありません。)
  • 化学療法の効果を直接確認することができる。
  • 全く効果がない場合、治療を早めに中止したり、ほかの薬剤へ切り替えたりすることもある。

術後化学療法

  • 手術後に行う化学療法のことです。摘出した組織を病理検査で調べ、化学療法の適応を決めます。
  • 術前化学療法を行っても、術後の組織の結果によっては、経口抗がん剤を投与する場合もあります。
  • ご高齢で点滴での化学療法(抗がん剤治療)が難しい場合には、内服抗がん剤を投与する場合もあります。

多剤併用療法

抗がん剤は単独で用いるよりもいくつかの抗がん剤を組み合わせることで効果を増強します。これを「多剤併用療法」といいます。抗がん剤の頭文字を並べてFEC療法、TC療法のように表現されます。多くの場合は点滴で投与します。

休薬期間

抗がん剤は投与するとからだのダメージが大きく、一点の休薬期間を取りながら繰り返します。この間隔が短いとからだが回復しませんし、長いと抗がん剤の効果が弱まるので、薬剤によって適切な間隔が決められています。休薬期間も含めた1回の治療間隔を1「クール」、1「サイクル」とよびます。

スケジュール

  • 通常3週間毎に通院してもらい、約2時間程度の点滴を4~8回(3~6ヶ月)行います。抗がん剤によって投与間隔が異なり、毎週通院して行う薬剤もあります。
  • HER2陽性のタイプには、術前・術後に分子標的治療薬(ハーセプチン:HCN)を併用します。
  • 化学療法は、多くの臨床試験で再発率を下げ生存率を上げることが証明されており、乳がんの治療においてとても大切な治療の一つです。

FEC療法、TC療法ならば3週間に1回の投与が1クールです。

投与スケジュールの一例

3週に1回投与を4回
1週間隔12週連続投与を4回
3週投与1週休薬を4回
2週投与1週休薬

経口抗がん剤

2週連続経口投与1週休薬
3週連続経口投与1週休薬

術前化学療法の一例

3週に1回投与を4回→3週に1回投与を4回、3週に1回投与を4回→1週間隔12週連続投与を4回

化学療法の副作用

化学療法の副作用には、白血球減少、脱毛、吐き気、胃腸などの消化器粘膜への影響(口内炎や下痢)、手足のしびれ、むくみ、爪の変化などがあります。これらの副作用の程度は薬剤によって異なり、また個人差があります。

自覚症状がある副作用

当日 アレルギー
当日~数日 吐き気、食欲不振、便秘、下痢、しびれ、倦怠感(だるさ)、関節痛・筋肉痛
数日~数週間 感染症、口内炎、皮膚発疹・口内炎、脱毛
数週間~数ヶ月 色素沈着、しびれ、浮腫(むくみ)、爪障害、涙目、味覚障害、心機能低下

自覚症状が現れにくい副作用

当日
当日~数日
数日~数週間 血小板減少(易感染)、血小板減少(易出血)
数週間~数ヶ月 赤血球減少(貧血)
  • ハーセプチンの主な副作用:心臓の機能低下(2~4%)や呼吸器障害があり、治療前と治療中は定期的な心臓機能検査が進められます。初めて投与される約4割の患者さんに発熱と悪寒が出現しますが、投与後24時間(ほとんどが7~8時間)以内で、2回目以降に起こることはまれです。この薬を単独で使用する場合は、脱毛や吐き気はありません。
  • 経口抗がん剤(ゼローダ、TS-1)の主な副作用:手足症候群(チクチク、ヒリヒリ感、手足の皮膚がはがれる、手足がしびれるなど)、食欲不振、下痢、腎機能障害など
  • 無月経:閉経前の方は抗がん剤治療によって無月経になります。30代以下の方では、抗がん剤治療後回復することが多いですが、年齢によってはそのまま閉経になってしまうことがあります。
    将来、妊娠・出産を希望される方は担当医にご相談ください。
    当院産婦人科にて妊孕性温存治療に関して相談することができます。

化学療法は通常外来で行います。化学療法を予定通りに完了するうえで日常生活を平穏に暮らすことは極めて重要で、適度な運動や食事が必要です。また、ときには気分転換をすることで、ストレス解消にもつながります。
化学療法を安全に受けるためには患者さんご自身にも協力していただきたいことがあります。

  • こまめに手洗い、うがいをする
  • お風呂やシャワーでからだを清潔に保つ
  • 虫歯、巻き爪、吹き出物の化膿などは感染の原因になりやすいので、治療を開始する前に早急に治療しておく

化学療法を開始するときには薬剤師、看護師により改めてオリエンテーションを行います。

乳がん細胞の半数以上は女性ホルモン(エストロゲン)の影響で増殖するタイプです。内分泌療法はこのような女性ホルモンの影響を受けるタイプの乳がんに対して行われる治療です。
内分泌療法は、副作用が少ないという特徴がありますが、効果が出るまでに時間がかかります(1~3ヶ月位。)手術後、長期間(2~5年間、最近では10年間投与も報告されている)継続して治療することで、再発の予防効果が期待できます。
閉経前には主にタモキシフェン(内服)とLH-RHアゴニスト(注射)、閉経後にはアロマターゼ阻害薬(内服)を使用します。

閉経前の人

薬物療法の種類

ホルモン療法は、女性ホルモン(エストロゲン)を抑えることで効果を発揮します。
そのため、更年期障害と同様な症状が副作用として現れやすくなります。

ほてり・のぼせ・発汗 からだの中のエストロゲン量が減少して対応調整ができなくなるために起こります。
肩こり・頭痛・うつ状態 肩こり、頭痛、精神・神経症状が現れることがあります。
筋肉痛・関節のこわばり 関節の痛みやこわばりなどが現れることがあります。
消炎鎮痛剤などで対処する場合もあります。
骨密度の低下 体内のエストロゲンの減少により骨密度が低下することがあります。定期的に骨密度測定を受けて骨の状態をチェックして、カルシウムやビタミンDを多く含む食品の摂取や適度な運動を心がけてください。
その他 生殖器症状(不正出血・膣炎)、子宮内膜増殖症(低頻度で子宮体がん)、血栓など。