乳がんの検査 Breast Cancer Screening

乳がんの検査について

乳がんとは、乳腺にできる悪性腫瘍です。
乳腺は、母乳を作る小葉と、乳頭までの通り道である乳管で構成されます。
がんが小葉や乳管内にとどまるものを非浸潤癌、これらを越えて周辺組織まで及ぶものを浸潤癌といいます。男性に発症することもあります。
自分で気づく症状として、しこり、乳頭からの分泌物、痛み、大きさの左右差、皮膚の一部のへこみ等があります。
これらの症状が見つかった場合に、存在する場所や大きさ、広がっている範囲を画像で検査し、ほんとうにがんであるかの組織診断を行います。

乳がんとは

乳がんとは

乳がんには「浸潤がん」と「非浸潤がん」があります。「浸潤がん」はがん細胞が乳管を破って乳管の外に広がっていく状態です。「非浸潤がん」は乳管の中にがん細胞がとどまっている状態で、この段階ではリンパ節や遠くの臓器に転移することはありません。非浸潤がんは乳がん全体の約20%を占め、時間が経つとやがて浸潤がんになります。

乳がんの病期(ステージ)

がんの大きさや広がり具合、進行度を示すものを病期(ステージ)といいます。複数の検査結果を総合的に判断して、下の表のように分類します。最終的には術後の病理結果によって決まるため、術前と術後で病気が異なる場合もあります。

病期Ⅰ

stage01
病期(ステージ) Ⅰ期
しこり 2cm以下
転移 わきの下のリンパ節に転移がない
10年生存率 95.0%

病期Ⅱ

stage02
病期(ステージ) Ⅱ期A
しこり 2cm以下 2.1~5cm
転移 わきの下のリンパ節に転移がある リンパ節に転移がない
10年生存率 86.1%
病期(ステージ) Ⅱ期B
しこり 2.1~5cm 5.1cm以上
転移 わきの下のリンパ節に転移がある リンパ節に転移がない
10年生存率 86.1%

病期Ⅲ

stage03
病期(ステージ) Ⅲ期A
しこり 5.1cm以上 しこりの大きさ問わず
転移 わきの下のリンパ節に転移がある ・わきの下のリンパ節に転移がある
・わきの下のリンパ節に転移はなく、胸骨傍リンパ節に転移がある
10年生存率 56.3%
病期(ステージ) Ⅲ期B
しこり しこりの大きさ問わず
転移 皮膚や胸壁に浸潤があるもの
10年生存率 56.3%
病期(ステージ) Ⅲ期C
しこり しこりの大きさ問わず
転移 ・鎖骨上下リンパ節に転移がある
・脇の下と胸骨胸骨傍両方のリンパ節に転移がある
10年生存率 15.9%

病期Ⅳ

stage04
病期(ステージ) Ⅳ期
転移 乳房から離れたところに転移しているもの
10年生存率 15.9%

乳がんのタイプ(サブタイプ)

乳がんの女性ホルモンに対する受容体(ER:エストロゲン受容体、PgR:プロゲステロン受容体)と、上皮細胞増殖因子に関わる受容体(HER2タンパク)の発現状況、細胞増殖の程度(Ki-67)により、サブタイプを分類します。ホルモン受容体陽性タイプは総じてルミナルタイプと呼ばれ、乳がん全体の約70%を占めます。がんのタイプによって抗がん剤や分子標的治療薬、ホルモン剤を組み合わせた敵殺な治療が行われます。

増殖能
(Ki-67)
ホルモン受容体
(エストロゲンレセプター)
陽性
ホルモン受容体
(エストロゲンレセプター)
陰性
HER2陰性 低い ルミナルA
・ホルモン療法
70% トリプルネガティブ
・化学療法
70%
高い ルミナルA
・ホルモン療法
・化学療法
HER2陽性 問わず ルミナルHER2
・ホルモン療法
・化学療法
・抗HER2療法
10% HER2タイプ
・化学療法
・抗HER2療法
10%

エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体

エストロゲン(女性ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)は、主に卵巣で作られ、子宮内膜の増殖、乳腺組織の発育、月経などを起こす働きのあるホルモンです。閉経後は、福神や脂肪組織でエストロゲンは作られ続けます。がん細胞にエストロゲン受容体が発現している場合はホルモン療法適応になります。

HER2(ハーツー)

がん細胞の表面に発現しているタンパク質の一種です。このタンパクが発現している場合は、分子標的治療薬(ハーセプチン®など)の投与を行います。

Ki-67(MIB-1)

増殖機にある乳がん細胞はKi-67に染まるので、多ければがん細胞の増殖能(進行スピード)が高い(速い)ことを示します。Ki-67が高値であるということは悪性度が高く再発しやすいため、抗がん剤を使用する一つの指標となります。