建学の精神・本学の使命について
本学は昭和46年(1971年)、故・明石嘉聞博士によって東洋医科大学の名で創立・開学して以来、附属病院、看護専門学校、大学院などが次々と併設され、医学教育において理想的な環境を築いてきました。本学が目指す教育は、生命の尊厳を守り、医師としての使命感を自覚し、人類の福祉に貢献できる医師の育成です。すなわち、医学・医療における様々な課題に対して、医学研究を通じて学究的思索と科学的妥当性のある情報を収集し、科学的根拠に基づいた意思決定が遂行できる能力を育成するとともに、地球規模での持続可能な社会の実現に向けて、グローバルな視点から医学・医療を通じた地域社会および国際社会に奉仕する姿勢の育成を目指しています。
そのため、本学では6年一貫教育体制の下、一般教育から専門教育に至るまで、きめ細かなカリキュラムを設計しており、医師としての自覚と将来必要となる基本的医学知識、技能、態度の修得を図るとともに、プロフェッショナルとしての誇りと豊かな人間性、そして幅広い教養を持つ医師の輩出に力を注いでいます。
人間関係がますます複雑化すると予想される21世紀において、医の倫理が一層重要性を増してきています。そうした時代には、最新の科学技術を駆使したハイテク医療以上に、生命ある者を思いやる豊かな人間性を培うことが重要な課題となります。これからの医師は、温かい人類愛に根ざした「医のこころ」を備えていなければなりません。「医のこころ」とは、人類の健康と幸福に奉仕するこころであり、医学に携わる者が持つべき人としての倫理です。そして、この使命感こそが医学生を支える精神的バックボーンと言えるでしょう。
医を志す者にとって、終着点はありません。どんなベテラン医師であっても、生涯が学習の場となる以上、その精神的拠り所となるのは、生命の尊厳であり、生命への畏敬の念でしょう。私たち聖マリアンナ医科大学は、こうした人間尊重の立場に立った医学教育を実践する気鋭の医科大学です。
-建学の精神-
キリスト教的人類愛に根ざした
「生命の尊厳」を基調とする
医師としての使命感を自覚し、
人類社会に奉仕し得る人間の育成、
ならびに専門的研究の成果を
人類の福祉に活かしていく医師の養成
-建学の理念-
医学は人体を対象とする学問であるが、同時に、人格体としての人間全体を対象とするものである。人体は治療し得ても、人間そのものを治すことができないとするならば、それは真の意味において医学とはいえない。医師たるものが人間性を忘却し、また自ら人間性を喪失するなら、医師はむしろこの世に不幸をもたらすものになってしまう。
医師は、人間そのものに対し、重大な責任を負わなければならない。
-本学の使命-
生命の尊厳に基づき
人類愛にあふれた医療人の養成
【標語】
Love for Others, Dignity of Life
建学の精神に掲げられているとおり、本学を語るうえで「生命の尊厳」および「人類愛」は欠かすことのできない重要なキーワードです。本学の医学教育には、生命への畏敬の念と生命ある者を思いやる豊かな人間性が礎として常に存在することを心に留め、本学の使命として明文化しました。また、今後さらなる国際的な発展を遂げるにあたり、英文による標語を作成しています。
この標語を本学の使命として掲げ、ミッションカードを作成し、広く学内に周知しており、医学部学生ならびに教職員全体の医学教育に対する意識向上を図っています。
生命の尊厳
教皇聖下は、貴教区に、キリスト教の精神に基づく医学生の教育と、東南アジアの発展途上国に働く医師の養成とを目的とした医科大学が設立されたことをきかれて、心から満足され、大きな期待を寄せておられます。
教皇ご自身この企画に深い関心を抱かれており、東洋医科大学(現聖マリアンナ医科大学)が、その希望を充分にみたし、その崇高な使命を達成する有効な手段となることをお祈りになっておられることを、貴下にお伝えするようにのぞまれました。
この新しい大学の学生が、すぐれた医学の知識を身につけるだけではなく、かれらとかれらの知識は病者に奉仕するためのものであり、患者はかれらの利益のために、また学問の発展のためにあるのではない、ということを心に銘記して世に出るならば、この大学は、万人の称讃を受けるでありましょう。こうした心構えがあれば、かれらが患者を病人としてよりは、単に病気として見るとか、或いは生活の資源として、また科学の進歩の名の下に行われる実験の材料として考えるような危険に陥ることはなくなるでしょう。かれらは、患者のひとりひとりが人間であり、永遠につくられたものであること、生命と尊厳とをもち、神聖にして犯すべからざるもの、決して他の目的のための手段とせられてはならないことを忘却しないでしょう。
何千年もの間、医師たちは、人間の生命を尊重することが、自分たちに課せられた特別の義務であると考えてきました。生命の尊厳こそ、医療の基本的原則であり、この原則によれば、堕胎によって胎児をかんたんに闇に葬るような現代の手術のあり方は、決して許されなかったはずです。
教皇は、東洋医科大学が、多くの学生にとって、単に医学的知識と技術を学ぶのみに止まらず、さらに倫理的義務を体得する場となるように、お祈りになっております。
この義務は、つねに医師の崇高な使命と結合しており、年と共に、また科学の進歩によって弱まるどころか、ますます重要、切実なものとなっております。
教皇は、この新大学を末永く見守りたいとのお心から、彫刻家エンリコ・マンフリーニが制作したカリスを、記念として大学の聖堂に寄贈したいとのご厚意を示されました。茲にこの書簡を添えてお届けします。
東洋医科大学が、その理想を実現できるよう、お祈りいたします。
兄弟愛と尊敬の念をこめて。
教皇庁国務長官 ジャン・ヴィヨ枢機卿
※キリスト教的人類愛を基本精神とする本学の創設に際し、ローマ教皇パウロ六世より特別な関心と期待が寄せられ、カリスとパテナを拝受するとともに、異例の祝福を賜りました。ここにご紹介いたします。