建学の精神・本学の目的・使命について
【建学の精神】
キリスト教的人類愛に根ざした
「生命の尊厳」を基調とする
医師としての使命感を自覚し、
人類社会に奉仕し得る人間の育成、
ならびに専門的研究の成果を
人類の福祉に活かしていく医師の養成
【建学の理念】
医学は人体を対象とする学問であるが、同時に、人格体としての人間全体を対象とするものである。人体は治療し得ても、人間そのものを治すことができないとするならば、それは真の意味において医学とはいえない。医師たるものが人間性を忘却し、また自ら人間性を喪失するなら、医師はむしろこの世に不幸をもたらすものになってしまう。
医師は、人間そのものに対し、重大な責任を負わなければならない。
【学則 第1章 総則(目的及び使命)第1条】
聖マリアンナ医科大学(以下「本学」という。)は、教育基本法及び学校教育法に基づき、医学の教授及び研究を行い、高度の知識・技術と確固たる倫理観をそなえた臨床医並びに医学研究者の養成を目的とし、併せて医学の発展、社会の福祉に貢献することを使命とする。
【本学の使命:標語】
・生命の尊厳に基づき
人類愛にあふれた医療人の養成
・Love for Others, Dignity of Life
聖マリアンナ医科大学(創立時名称:東洋医科大学)は、財団法人聖マリアンナ会を母体に昭和46年(1971年)に、明石嘉聞医学博士により創立されました。大学創立に向けた目標は「大学として進みゆく医学の研究と教育の中心であると同時に、「生命の尊厳」にもとづく医師としての使命感から人類社会に奉仕する人間の形成、専門的研究の結果を人類の福祉のために生かしてゆくような人間の形成」とされており、この目標をもとに、本学の「建学の精神」が定められています。
また、「建学の理念」は、創立者の明石嘉聞博士が本学機関誌である聖マリアンナ医科大学雑誌の創刊号に寄稿した文章の中核的部分を抜粋したもので、以来本学の「建学の理念」として現在まで受け継がれています。
「学則 第1章 総則(目的及び使命)第1条」は、本学の目的及び使命を規則として定めたもので、1971年に制定されています。最後の「本学の使命:標語」は本学の使命を国内外のより多くの方に理解していただくために、標語として日本語および英語で端的に示したもので2018年に策定されています。
これらのなかで、医学的な高度の知識・技術という専門的実践力を身に付けることは、医師として人類社会に奉仕し得る、あるいは社会の福祉に貢献するという、本学が求める医師としての役割を担うために必須であります。加えて、「生命の尊厳」を基調とし、確固たる倫理観をもつことは、卒後教育を受ける上でも、様々な医療の専門領域に進む上でも、その基本となると考えています。また、医学の発展、社会の福祉に貢献するためには、その時その時代に即した専門的実践力が必要となることから、医師である限り生涯学び続けることが必要となることは言うまでもありません。人類社会に奉仕すること、社会の福祉に貢献することが謳われていますが、これは医療制度も含めたその時その時の社会の状況に合わせて、社会全体の保健や健康維持を考えるという観点を含んでいます。さらには、人類という言葉が使われているように、本学の所在する地域や国だけでなく、国際的な観点から医療や健康を考えることも本学は重要視しています。最後に、医学研究者を養成すること、専門的研究の成果を社会の福祉に活かすこと、医学の発展に貢献することを謳っており、本学の医学研究者がこれらを成し遂げること、学生が医学研究に対する探究心を持ち、将来、医学研究を実践していく基礎的能力を身に付けることを求めています。
生命の尊厳
教皇聖下は、貴教区に、キリスト教の精神に基づく医学生の教育と、東南アジアの発展途上国に働く医師の養成とを目的とした医科大学が設立されたことをきかれて、心から満足され、大きな期待を寄せておられます。
教皇ご自身この企画に深い関心を抱かれており、東洋医科大学(現聖マリアンナ医科大学)が、その希望を充分にみたし、その崇高な使命を達成する有効な手段となることをお祈りになっておられることを、貴下にお伝えするようにのぞまれました。
この新しい大学の学生が、すぐれた医学の知識を身につけるだけではなく、かれらとかれらの知識は病者に奉仕するためのものであり、患者はかれらの利益のために、また学問の発展のためにあるのではない、ということを心に銘記して世に出るならば、この大学は、万人の称讃を受けるでありましょう。こうした心構えがあれば、かれらが患者を病人としてよりは、単に病気として見るとか、或いは生活の資源として、また科学の進歩の名の下に行われる実験の材料として考えるような危険に陥ることはなくなるでしょう。かれらは、患者のひとりひとりが人間であり、永遠につくられたものであること、生命と尊厳とをもち、神聖にして犯すべからざるもの、決して他の目的のための手段とせられてはならないことを忘却しないでしょう。
何千年もの間、医師たちは、人間の生命を尊重することが、自分たちに課せられた特別の義務であると考えてきました。生命の尊厳こそ、医療の基本的原則であり、この原則によれば、堕胎によって胎児をかんたんに闇に葬るような現代の手術のあり方は、決して許されなかったはずです。
教皇は、東洋医科大学が、多くの学生にとって、単に医学的知識と技術を学ぶのみに止まらず、さらに倫理的義務を体得する場となるように、お祈りになっております。
この義務は、つねに医師の崇高な使命と結合しており、年と共に、また科学の進歩によって弱まるどころか、ますます重要、切実なものとなっております。
教皇は、この新大学を末永く見守りたいとのお心から、彫刻家エンリコ・マンフリーニが制作したカリスを、記念として大学の聖堂に寄贈したいとのご厚意を示されました。茲にこの書簡を添えてお届けします。
東洋医科大学が、その理想を実現できるよう、お祈りいたします。
兄弟愛と尊敬の念をこめて。
教皇庁国務長官 ジャン・ヴィヨ枢機卿
※キリスト教的人類愛を基本精神とする本学の創設に際し、ローマ教皇パウロ六世より特別な関心と期待が寄せられ、カリスとパテナを拝受するとともに、異例の祝福を賜りました。ここにご紹介いたします。