研修・大学院

研究グループ紹介

臨床チームが主体となった臨床研究に加え、当科では臨床に依拠した基礎的研究も行っています。
 


1)癌幹細胞の加療後再発における関わりについての研究
 現在ラジオ波焼灼術は肝臓癌に対する内科的治療で重要な地位を占めていますが、この治療後に、急速に増大し、不良な予後経過をたどる症例が存在しています。私達の研究室では、それをin vitroで部分的に再現する事に成功しました。現在、このような再発形式をとる癌には癌幹細胞という特殊な細胞集団が関与しているのではないかと考え解析を続けています。
 

 
2)末梢血幹細胞を用いた再生医療についての研究
 C型慢性肝炎の補助的に治療法として瀉血療法があります。これは患者さんの瀉血による除鉄の結果、肝逸脱酵素値の改善をはかるものです。瀉血によって採取された血液はC型肝炎ウイルスに感染しているため、通常は廃棄されています。私達はこの廃棄されている血液を再生医学の材料として再利用する事を目指して研究をしています。
 
 

3)胃液中に含まれる細胞を用いた癌のスクリーニング検査についての研究
 上部消化管内視鏡検査を施行した時に吸引される胃洗浄液を題材に胃癌の早期診断に役立てようと言うものです。胃洗浄液中には脱落した粘膜細胞も多数含まれていますから、前癌病変や癌があればそこから脱落した細胞も含まれているはずです。この胃洗浄液が何かに使われる事はこれまでありませんでした。この細胞達を集めDNA解析を行って、癌の早期診断率の向上に寄与しよう、というわけです。
 
 

4)慢性膵炎の動物モデルを用いた膵臓の再生
 慢性膵炎を引き起こす動物モデルを用いて検討し、膵臓の線維化機構の解明をしています。動物実験は諸刃の剣です。人間とは異なる生物をマテリアルとしますので、得られる情報の意味をとても慎重に考える必要があります。しかし同時に、生き物を扱いますから、病態生理について大変示唆に富む結果を得る事ができます。
 
 

5)癌におけるエピジェネティックな異常についての研究
 がんは、遺伝子変異などのDNA配列の変化を伴う異常(ジェネティックな異常といいます)だけでなく、DNA塩基配列の変化によらないエピジェネティックな異常も重要であることがわかってきています。これらの異常を知る(解析する)ことにより、癌の早期発見、薬剤感受性、転移診断、再発予測、予後予測などへの応用が期待できます。
 
 

「大学院のご案内」でも述べた例えに従えば、これらの研究は、みな「旅の途中」です。2)3)は医学的ロハスプロジェクトと言って良いかも知れませんね。道程で見えてくるものを楽しみながら、同時に真剣に探求しています。