患者の皆さまへ

卵巣嚢腫でお悩みの方

卵巣嚢(のう)腫とは

   卵巣に発生した腫瘍を卵巣腫瘍といいます。卵巣腫瘍は良性卵巣腫瘍と悪性卵巣腫瘍に分けられます。卵巣腫瘍の80%以上は良性だといわれています。

   良性の卵巣腫瘍は袋状になった腫瘍(嚢:のう)に内容物が詰まっている腫瘍で、卵巣嚢腫とも呼ばれます。卵巣嚢腫の内容物の種類によって、漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、皮様嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)、チョコレート嚢腫(子宮内膜症性卵巣腫瘍)等の種類に分けられます。内容物に関しては、超音波画像、MRI画像、血液検査(腫瘍マーカー)等である程度の予測ができます。

  

 


症状:

   ほとんど自覚症状が無く、ある程度の大きさになってから初めて様々な症状が現れることが多いです。

   症状としては、下腹部膨満感、腰痛、他臓器への圧迫症状(トイレが近くなったり便秘がちになったり等)が挙げられます
(嚢腫の大きさに関係なく、症状が出たり出なかったりする場合もあります。)

   嚢腫の茎捻転(嚢腫が捻れること)や、嚢腫が破裂して内容物が腹腔内に漏れることによって急激な腹痛を起こすこともあります。その場合は、緊急手術が考慮されます。

   卵巣腫瘍が良性か悪性かの判別は画像診断や血液検査(腫瘍マーカー)でもある程度の予測がつきますが、確定診断に至るには手術を行い最終的に組織型や良性、悪性を調べる病理検査を行う必要があります。


手術の実際                                                             

   最近、卵巣腫瘍の標準的治療として腹腔鏡を用いた手術が選択される場合が多くなってきています。ただし、術前に悪性の可能性が完全に否定できない場合や、手術の既往があり腹腔内の癒着が予想される場合などは、最初から開腹術が選択される場合があります。

   また、腹腔鏡手術で腹腔内を観察したあとで、安全確保を第一に考えて、途中で術式を腹腔鏡手術から開腹手術に変更することもあります。

   卵巣嚢腫に対しては、嚢腫部分のみを摘出し健常部分を残す卵巣嚢腫摘出術と、卵管・卵巣も含めて嚢腫全体を摘出する付属器切除術があります。しかし、卵巣腫瘍の診断(病理組織診断)が確定し、一部でも悪性の所見が認められた場合には、卵巣がんの治療に準じて再度追加手術を行わなければならないケースもあります。また、良性の腫瘍で嚢腫摘出術あるいは付属器切除術が選択された場合でも、その後の経過で切除を受けた側の卵巣からの腫瘍の再発や、切除を受けなかった側の健常な卵巣から腫瘍が発生すれば、再度手術を行わなければならなくなる場合もあります。