不妊症とは、正常な性生活を営んでいるにもかかわらず2年以上経っても妊娠に至らない場合をいいます。通常、90%のカップルが2年以内に妊娠します。その原因も様々であり、原因不明も少なくありません。最近では男性側が原因であることも多く、約1/3といわれています。従ってご夫婦で受診されることをお薦めします。不妊外来では、原因の精査を行いなるべく自然妊娠に至るよう治療いたします。ほとんどの症例は、タイミング指導や薬物療法などで妊娠に至ります。しかし、時に補助的な技術が必要となる症例も存在します。このような技術は生殖医療補助技術(Assisted Reproductive Technology: ART)と言われています。当院では2000年に生殖医療センターを設置し、体外受精・胚移植、顕微授精、受精卵凍結・融解胚移植などを行っています。
不妊治療を行うにあたり、原因を精査するために様々な検査を行います。 検査
(1)基礎体温測定
起きた直後に安静のまま舌下で測定し、基礎体温表に記録します。低温期と高温期の2相性に分かれているか、1相性かで排卵の予測に役立ちます。
(2)低温期
血算、血糖、血中ホルモン検査(脳下垂体・卵巣・甲状腺)、クラミジア抗体、抗精子抗体、子宮卵管造影、超音波検査、子宮鏡検査⇒子宮鏡検査のページへ
(3)排卵期
超音波検査、頚管粘液検査、血中エストロゲン、フーナーテスト
(4)高温期
超音波検査、黄体期ホルモン検査
(5)腹腔鏡検査
⇒腹腔鏡検査のページへ
(6)精液検査
ご主人の精液を採取していただき、精子数、精子濃度、運動率などを調べます。この検査の結果は変動がありますので、2~3回行う場合があります。
治療
(1)タイミング指導 | 基礎体温表、経膣超音波による卵胞計測、頚管粘液検査により排卵を予測し、性交渉を指導します。 |
(2)排卵誘発療法 | 1.クロミフェン療法: 弱いエストロゲン剤で視床下部に働き、GnRH分泌を促します。それによりFSH、LH分泌を促し卵巣を刺激し、卵胞の発育と排卵を誘発します。月経周期5日目から1日1~3錠を5日間内服します。 クロミフェン-HCG療法: クロミフェン療法に加え、卵胞発育が20~22mmでHCGを投与し排卵させる方法です。 |
2.HMG-HCG療法: 直接卵巣を刺激する方法で、クロミフェンよりも作用は強いです。HMGは主にFSHを成分として卵胞発育を促し、月経5~7日目から毎日または隔日投与し、経膣超音波検査で卵胞計18~20mmのところでLHを成分とするHCGを投与し排卵を起こさせます。 |
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3.ブロモクリプチン療法: 下垂体から分泌されるプロラクチンは通常乳汁分泌させるホルモンです。何らかの原因で非妊時に過剰になると無月経、排卵障害を引き起こします。内服薬によりこれを下げることを目的とします。1日1~2錠を内服します。 |
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(3)黄体補充療法 | 卵巣から分泌される黄体ホルモンが十分でないと黄体機能不全を起こし、子宮内膜が十分でないと着床障害や妊娠初期流産の原因となります。治療法は黄体ホルモンの補充です。黄体ホルモン内服とHCG注射の方法があります。 |
(4)子宮筋腫治療 | ⇒子宮筋腫のページへ |
(5)子宮内膜症治療 | ⇒子宮内膜症のページへ |
(6)人工授精 | 超音波検査により排卵を予測し、HCG投与の翌日に精液を持参していただき、洗浄・濃縮を行い、子宮腔内に注入します。 |
(7)TESE | 当院泌尿器科と連携し、精索静脈瘤や精子無力症の方に行います。 |
タイミング指導
↓ 3ヶ月
クロミフェン療法・クロミフェン-HCG療法
↓ 6ヶ月
HMG-HCG療法
↓ 6ヶ月
人工授精
↓ 6ヶ月
体外受精
※ あくまでも目安であって、年齢や患者様とも相談により変更することがあります。
(詳しくは生殖医療センターのページをご参照ください)
(1)卵巣刺激
(2)採卵
(3)新鮮胚移植
(4)胚盤胞移植
(5)胚凍結
(6)融解胚移植
当院では基本的にGnRHアナログ製剤とHMG-HCGを用いたLong法による排卵誘発を行います。採卵当日は日帰り入院とし生殖医療センターで採卵を行います。受精には媒精や顕微授精を施し、採卵後2日目に受精卵を2個(場合により3個)まで新鮮胚を移植します。受精卵の残りは胚盤胞まで培養し凍結保存します。また、多数の採卵を行った場合は、卵巣過剰刺激症候群を予防するため、その周期には移植はせず、胚盤胞まで培養し凍結保存し、改めて融解胚移植を行います。詳しくは生殖医療センターのページをご参照ください。
不妊治療のセミナーです。妊娠の仕組みや不妊原因についてお話しする基礎編と生殖医療補助技術について説明するART編とがあり、なるべくご夫婦で参加していただき、スライドを用いて説明の後、質疑応答があります。