患者の皆さまへ

子宮がん・卵巣がんでお悩みの方

産婦人科で行うがん治療について

 産婦人科では、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、卵管がん、腟・外陰がん、絨毛がんなどの女性性器に発生するがんあるいは肉腫といった悪性腫瘍を治療しています。なお乳がんに関しては日本では一般的には(乳腺)外科で治療を行っています。

 


子宮頸がんについて

 子宮頸がんとは

    子宮頸がんとは、子宮頸部にできるがんのことです。子宮頸部とは子宮の下側、腟にでている部分を指します。子宮頸がんのほとんどはHPVというウイルスの感染がきっかけとなって発症すると言われています。子宮がん検診の普及で進行がんの患者さんは減少する傾向にありますが、一方で30歳代以下の若年女性の患者さんが近年増加しています(特に早期がん)。90%以上の患者さんに不正性器出血が認められますが、早期がんの患者さんは無症状のことが多いので子宮がん検診によって偶然に発見される患者さんがほとんどです。ですから、症状がない方でも子宮がん検診の受診をお勧めします。 

 

 治療

 当院では早期がん(0期;上皮内がんおよびIa1期)の患者さんには原則的にレーザーによる子宮頸部円錐切除術を行っています。この治療法はお腹を切らずに腟の方から子宮頸部の一部を円錐状に切り取る手術で患者さんの負担も少なく、原則2泊3日の入院で行っております。但し閉経後の患者さんに対しては子宮全摘術を行っております。  

  一方、進行がん(Ia2期以上)の場合は手術、放射線治療および抗がん剤治療を各患者さんの病状により、それぞれ単独または組み合わせた治療を行っています。手術としては原則子宮頸がん根治術を行います。これは子宮、腟の一部、および子宮頸部の周りの組織(基じん帯といいます)、骨盤内のリンパ節を切除するものです。子宮を摘出する方法にも数種類あり、単純子宮全摘出術、準広汎子宮全摘出術、広汎子宮全摘出術があり、術後の患者さんの身体への影響やその程度が異なります。特に広汎子宮全摘出術を施行した場合には、術後の合併症としてリンパ浮腫、リンパ嚢胞、排尿障害などを引き起こすリスクがあります。卵巣に関しては患者さんの状況によっては残せることもあり、場合によっては術後の放射線療法による被爆を避けるため卵巣の位置を移動させる手術も併せて行うこともあります。その他患者さんの病状によっては抗がん剤治療を先に行ってから手術を行う場合や、手術を行わず放射線治療単独、あるいは放射線治療と抗がん剤治療を併用して治療を行います。 

 


子宮体がんについて

  子宮体がんとは

  子宮体がんとは子宮体部にある子宮内膜という細胞から発生するがんのことをいいます。子宮内膜は毎月月経とともに剥がれ落ち新たに生えてくるということをくり返す組織で、授精卵が接着して妊娠が成立する場所でもあります。

 子宮体がんの多くは閉経後の女性に発症しますが、月経不順や排卵障害などのホルモン異常がある方の場合には閉経前であっても発症する可能性が高くなると言われています。近年、子宮体がんは増加の傾向にあり、その一因として食生活の欧米化が原因であると言われています。

  症状としては90%以上の患者さんに不正性器出血が認められます。特に閉経後の方で不正性器出血があった場合には子宮体がんの可能性も考えられますので病院で検査されることをお勧めします。

 治療

 子宮体がんは原則手術を行います。手術では原則子宮全摘出術、両側付属器(卵巣と卵管)切除術、場合によっては後腹膜リンパ節も摘出します。患者さんの状況によっては手術の前に抗がん剤治療を行う場合や、手術をせずに抗がん剤治療や放射線治療、ホルモン療法などを行う場合もあります

 

 

 

 


卵巣がんについて

  卵巣がんとは 

   卵巣がんも子宮体がんと同様、近年増加の傾向にあると言われています。症状としては下腹部が出てきたとかお腹がはるといった症状が多いですが、前に述べたように全く自覚症状がない患者さんもいます。卵巣は直接がん検診ができない臓器なので、腫瘍が発見された場合には、超音波やCT、MRIなどの画像検査や血液中の腫瘍マーカーといった精密検査を行った上で、手術により腫瘍を摘出し、病理検査というもので確認して初めて卵巣がんと診断されます。

 

治療

 卵巣がんにはたくさんの種類の病理組織型があり、その種類によって治療法は若干異なりますが、手術療法と抗がん剤治療を組み合わせた治療を行うのが一般的です。卵巣がんの基本術式は子宮全摘出術、両側付属器(卵巣と卵管)摘出術、大網切除術です。患者さんによっては腫瘍ができている卵巣だけを摘出するのみにとどめる場合もありますが、最も予後と相関するのが進行期であることから、正確に進行期を決定するために、基本術式に加えて後腹膜リンパ節の郭清、腹腔細胞診、腹腔内の一部生検までを行うことがあります。

 


当院での婦人科がん治療の特徴

  聖マリアンナ医科大学産婦人科では、他の病院と比較して大きく2つの特徴があります。

 まず1番目の特徴として、先進医療として抗がん剤感受性試験というものを行っています。これは原則再発がんの患者さんに行っているもので、具体的には再発がんの組織を手術などにより摘出し、婦人科がんでよく使われている5種類の抗がん剤に対して、どの抗がん剤が効く可能性があるかを検査するものです。この検査によって効果が無いと思われる抗がん剤を患者さんに使うことを避けることができ、また有効である可能性がある抗がん剤を選んで治療を行っていけるという利点があります。具体的な方法や費用その他の点に関しては担当医にご相談下さい。

   2番目の特徴として、抗がん剤の動注療法というものを積極的に取り入れている点が挙げられます。抗がん剤は多くは点滴で腕などの静脈より注入されますが、抗がん剤の動注療法とは抗がん剤を腫瘍の近くの動脈より注入する方法で、静注療法に比較してがんに直接的に高い濃度の抗がん剤が投与できること、局所療法のため吐き気などの副作用が軽減できることなどの利点があります。また、治療の難しい再発がんの患者さんにも有効な場合があり、積極的な治療を行っております。当科では当院放射線科と月に1回合同カンファレンスを行い、患者さんの動注療法の適応やその後の効果判定などについて検討するなど放射線科の診断および治療の専門医と綿密に連係して患者さんの治療にあたっており、これも大きな特徴と言えます。詳細は担当医に御相談下さい。

 

 <緩和ケアについて>
 
緩和ケアとは、がんと診断を受けたときから、身体や心のつらさ・苦痛を和らげて、患者さんとそのご家族が、できるだけ快適な生活が送れるよう支援することです。院内には厚生労働省の定める正式な緩和ケアチームとしての要件を満たして活動している専門のチームがあり、身体的症状の緩和を担当する医師や、精神的症状をケアする医師、専門的なケアを提供する緩和ケア担当看護師、専門的な薬剤について助言する緩和担当薬剤師、経済的な心配や退院後の生活への対応について助言するソーシャルワーカー、移動などの動作の工夫や筋力低下予防を行うリハビリテーション部、食事の工夫や栄養補助食品の説明を行う管理栄養士などがチームとなって支援します。
 
<リンパ浮腫患者さんへの取り組み>
 
リンパ浮腫はリンパ節郭清の手術後におこる合併症の一つです。一般的にむくむといわれている症状とは見た目は同じですが、性質が異なります。
むくむ→水が溜まる
リンパ浮腫→リンパ管の損傷などでタンパク質の多い組織液が溜まる
症状改善への対処方法としては、スキンケア・リンパマッサージ・弾性着衣による圧迫・圧迫下での運動などが挙げられます。
術後の患者さんにはセルフマッサージや生活指導、弾性着衣(ストッキング)の選び方などを中心にパンフレットを作製し、指導しています。
正しいマッサージ方法や弾性ストッキングでリンパ浮腫を予防しましょう。

※リンパ浮腫外来は第1,3火曜日です。退院後の変化や生活上の注意点の確認、その他疑問点などあれば相談に乗っています。