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掲載日:2020年6月19日

アトピー性皮膚炎新規治療薬デュピルマブの治療反応性予測因子の探索

アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す痒みのある湿疹を主病変とする疾患と定義されており、その概念は1930年代頃から認識されていました。命に関わる疾患ではありませんが、強い痒みと皮膚のただれが患者さんの生活や価値観に大きく影響を及ぼす疾患と考えられています。幼小児期に発症し、成長と共に徐々に減っていく疾患ですが、本邦における有病率は、幼少児から20歳代までは10%以上、40歳代でも4%程度とかなり頻繁に見られる疾患です。
近年の研究で、アトピー性皮膚炎の病態がかなり解明されてきました(図1)。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、表皮バリア機能の低下により、外来アレルゲンが表皮を通り抜けて、真皮内に入り込みやすくなっています。そして、外来アレルゲンが繰り返し侵入することで、アレルギー性炎症が誘導され、このアレルギー性炎症が痒みや表皮バリア機能の低下を増強するという悪循環が成立していることが分かってきました。このアレルギー性炎症で主役を演じる物質がIL-4、IL-13と呼ばれる物質です。デュピルマブというアトピー性皮膚炎の新規治療薬は、このIL-4とIL-13の働きを阻害する作用を持っており、アトピー性皮膚炎の症状を安全に抑えることができます。当科のアトピー性皮膚炎の専門外来でも、重症のアトピー性皮膚炎患者さんを中心に、デュピルマブを用いた治療を行っており、多くの患者さんがその恩恵を受けています。

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(Furue M et al., Allergol Int 2017; 66: 398-403より引用)

このように重症の方でも、有効性の高い治療ですが、全ての患者さんに有効とまでは言えません。現在のところ、その治療反応性を予測することはできず、残念ながら、実際に投与してみないと効果が高いか低いかが判断できません。この状況を改善しようと、九州大学皮膚科を中心に、デュピルマブで治療されている患者さんの血液を集めさせて頂き、その治療反応性を予測する因子を探索するという前向き研究が、日本全国の施設で行われています。当大学も、アトピー性皮膚炎の専門外来を中心に、その研究に参加しており、近い将来、デュピルマブの治療反応性予測因子を発見し、アトピー性皮膚炎の患者さんの治療の向上に貢献できることを期待しております。