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掲載日:2019年8月13日

慢性活動性EBウイルス感染症に対する治療法の開発を目指して

稀な疾患である「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」は、強い炎症が持続し、かつEBウイルスに感染したT細胞、NK細胞が腫瘍化していく、進行性の疾患です。
EBウイルスはほとんどの人が成人になるまで感染を受ける、ごくありふれたウイルスです。なぜ一部の人だけがCAEBVになるのか、なぜ強い炎症や感染細胞の腫瘍化が起こるのか、その発症メカニズムは明らかになっていません。また、CAEBVに対する有効な治療薬はこれまでありませんでした。血液・腫瘍内科では、新井文子教授を中心に、CAEBVの問題を解決するための基礎および臨床研究を行っています。
新井文子教授のグループは、これまでに患者さんのEBウイルスに感染したT細胞とNK細胞で、転写因子STAT3が恒常的に活性化していること (図1)、チロシンキナーゼJAK1/2の阻害剤であるルキソリチニブでSTAT3の活性化を抑えると、EBウイルスに感染したT細胞、NK細胞が増えにくく、死にやすくなるとともに、炎症原因物質であるサイトカインの産生が抑制されることを明らかにしました(図2)。つまり、ルキソリチニブは、CAEBVに見られる持続する炎症症状の改善と、EBウイルス感染細胞の腫瘍化に対し効果をもたらすと期待されます。(Oncotarget. 2018 Jul 24;9(57):31077-31089)


先天性心疾患に対するカテーテル治療を開始01
先天性心疾患に対するカテーテル治療を開始01

図2 出典:Oncotarget. 2018 Jul 24;9(57):31077-31089

現在、CAEBVに対し、熱、肝機能障害などの炎症症状(疾患活動性)を確実に抑えうる治療薬はありません。CAEBVの根治療法として同種造血幹細胞移植が行われますが、すべての患者さんに行える治療ではないことに加え、移植を行う前に疾患活動性を抑えておかないと、移植の成績が悪いことが明らかになっています。
ルキソリチニブの効果が認められた場合、つまり炎症症状が抑えられた場合、患者さんの症状が改善する事に加え、移植の成績の改善とそれによる生命予後の改善が期待されます。その効果を検証するため、医師主導治験を開始しております。詳しくは以下をご覧ください。
https://www.marianna-u.ac.jp/houjin/academic/20190614_01/

 

聖マリアンナ医科大学 血液・腫瘍内科