子宮内膜症とは、子宮内膜組織が子宮以外の部位で増殖、発育し機能する疾患です。その病因は、未だ明らかになっていませんが、月経血の逆流などによる子宮内膜移植説が広く受け入れられています。もともと、白人や月経が規則的な未産婦に多いとされ、生活様式の欧米化や、晩婚化、少子化が進んだ現在、年々増加傾向にあると報告されています。
その症状としては、月経困難症、性交痛、排便痛、不妊などがあげられ、診断は超音波やMRIによる卵巣子宮内膜症性嚢胞の有無や、腫瘍マーカーであるCA125の上昇、子宮後屈や子宮可動性の制限などによってなされます。
子宮内膜症患者の30~50%に不妊が合併すると報告されており、内膜症と不妊症は強く関連しています。その妊孕能の低下には、以下の機序が考えられています。
よって、子宮内膜症を合併した不妊患者の治療には子宮内膜症の改善が重要になります。
軽度の内膜症でも、不妊症の症状があれば腹腔鏡手術により内膜症病変を焼灼することで妊娠率が上がることが報告されています。また、内膜症の癒着剥離を行うことで卵管の可動性・通過障害が改善し自然妊娠することもあります。
しかし患者さんの内膜症の程度は様々ですし、その他の不妊因子を合併することもあります。個々の症例によって内膜症病変の除去・癒着剥離術を行うことによって自然妊娠を期待しますが、妊娠に至らない場合は体外受精に移行する場合や、はじめから体外受精を選択する場合もあります。