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掲載日:2021年2月24日

ケトン餌による学習機能と筋組成変化

肥満はメタボリックシンドロームの一つの原因となり、その克服が社会の重要課題である。西洋型の食事は肥満をきたす事から高脂肪食はその実験的モデルとして広く用いられている。動物実験の例では、通常の飼育で用いられる餌は80%炭水化物、10%脂肪、10%蛋白質であるが、高脂肪餌は45%炭水化物、45%脂肪、10%蛋白質となる。一方、極端な高脂肪、つまり、超高脂肪餌ともいえるケトン餌は(0%炭水化物、90%脂肪、10%蛋白質)、摂取するカロリーは同じなのに動物は痩せる。このような餌をケトン食と呼び、血中のケトン体が上昇するが血糖値は下がり、しかし、糖尿病性ケトアシドーシスとは異なりアシドーシスになることはない。古典的には、ケトン食は難治性のてんかんの治療に用いられて来たが、最近では、動物モデルで糖尿病性腎症をケトン餌によって正常化できることが報告されている(Mobbs CV, 2013)。我々は、このようなケトン餌で動物を飼育すると、特に学習に必須な役割を演じているAMPA受容体のサブユニット、GluR1の発現を増加させて、中枢神経系の海馬の担う学習機能を向上させることを明らかにした(図1、2参照)(Fukushima et al, 2015)。末梢では、代表的な速筋であるの長趾伸筋の遅筋化を引き起こし(図3参照)、それはSema3Aの発現増加を介している可能性があること(図4参照)を明らかにした(Ogura et al, 2020)。遅筋は速筋と比べて持久力が高いことが知られているため、ケトン食の摂取は筋の持久力向上に寄与することが期待される。また、遅筋は速筋と比べて血糖取り込み能が高いため、糖尿病の人にはケトン食摂取による筋の遅筋化が有利に働いて、糖尿病治療の一躍を担える可能性がある。

生理学

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Fukushima et al, Brain Res 1622 (2015) p36-42
Ogura et al, PLOS ONE 15 (2020) p1-16

 

聖マリアンナ医科大学 生理学