Academic Achievements

掲載日:2020年11月16日
羊胎仔を用いた膀胱羊水腔シャントチューブの開発
先天性下部尿路閉塞(lower urinary tract obstruction:LUTO)は腎・膀胱機能の廃絶や肺低形成をきたし、出生後の治療では救命困難と言われています。LUTOに対して、膀胱羊水腔シャントによる胎児治療(子宮内の胎児に行う治療)が世界的に行われてきましたが、その長期予後は改善していないため、より効果的で安全な治療が求められています。
小児外科教室では、1999年よりNew ZealandのOtago大学と羊を用いた胎児治療の共同研究を行っています。羊胎仔の尿道を結紮したLUTO疾患モデルを作成し、LUTOの腎機能、膀胱機能を改善できるシャントチューブを開発しています。我々は膀胱内の圧を調整可能なシャントチューブ(pressure limited vesico‒amniotic shunt:PL‒VAS)を開発し、その利用により既存の膀胱羊水腔シャントチューブに比べ腎・膀胱機能が改善することを証明しました。既存の膀胱羊水腔シャントチューブは膀胱から常に尿が羊水腔内に排泄され、生理的な排尿のサイクルが失われ、膀胱が萎縮します。PL‒VASは膀胱の容量を維持させることで、膀胱平滑筋の線維化,萎縮を防ぐことに成功しました。また膀胱尿管逆流による尿管拡張や腎の異形成を防ぐことができました。
現在はシャントチューブや挿入デバイスの形状の改良を進め、臨床応用に向けて研究をすすめています。

図1 羊に全身麻酔をかけ帝王切開をしているところ

図2 羊胎仔の膀胱内にシャントチューブを挿入(シャントチューブの下側の膨らみは両側陰嚢)