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掲載日:2020年9月1日

原始卵胞の非侵襲的可視化による卵巣組織移植成績向上に関する研究(慶應義塾大学 理工学部との共同研究)の紹介

近年、医療技術の発達により、がん患者さんが治療後に妊娠を望むことが可能になりつつあります。その手段として、未婚女性では自身の卵子や卵巣を凍結保存する医療があります。しかし、卵巣の凍結保存は未だ臨床研究段階の治療とされており、まだ成功例が少ないこと(2018年で130例)が理由のひとつとして挙げられます。現時点では、凍結した卵巣は治療後に再度体内に移植して使用する(卵巣組織移植)のが一般的ですが、一度にすべての卵巣組織を使用する例は少なく、大体は『半分』や『数片』というように必要最小限のみ移植することを選択される実情があります。しかし、実際には移植する卵巣組織のなかにある卵子数は不明であり、場合によっては『半分』の移植では足りない場合や、むしろ多すぎる場合も考えられます。また、卵巣内に存在する卵子の分布は不均一であることから、選択した卵巣組織内に卵子がないことも懸念事項として考えられます。私たちはこの点に着目し、患者さんにとって最適な卵巣組織を選択し、効果的な卵巣組織移植を実現するための方法を開発することを目的に研究を行っています。
最適な卵巣組織選択のため、私たちは、近赤外線による画像技術である『光干渉断層計』を応用して卵巣内の小さな原始卵胞(約30μm)を“みえる化”することを着想しました。光干渉断層計は眼科で頻用されている画像技術ですが、本研究は医学知識のみでは進めることが困難であるため、慶應義塾大学理工学部の塚田教授の協力を得て共同研究として開始されました。その結果、①原始卵胞が“みえる”こと、②卵胞数評価が正確であること、③卵子への明らかなダメージがないこと、④この機器を使用された卵子から産まれた子どもに明らかな異常が発生しないこと(③④はマウス)、を確認できました(Scientific Reports 2017, JARG 2018)。現在、これらの研究成果をふまえ、産官学連携(横浜市)のもと日本医療研究開発機構(AMED)や文部科学省科学研究費、民間財団などの助成を受けて『AIを用いた卵胞自動カウントシステムの構築』や『卵巣組織選択に特化した光干渉断層計機器の開発』を進めています。
私たちの研究によって、さらに卵巣組織移植の治療成績が改善し、より多くの患者さんの希望が叶うこと、わが国の少子化対策に貢献することを目標として、より一層研究に励んでいきたいと思います。

産婦人科学01