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掲載日:2020年5月28日

2型糖尿病患者の血漿グルカゴンレベルおよび胃内容排出に対するアナグリプチンの効果:メトホルミンを対照とした探索的ランダム化比較試験

2型糖尿病の病因はインスリンの抵抗性増大・分能泌低下に加えて、グルカゴン過剰分泌の関与が想定されています。
現在糖尿病の飲み薬は7種類あります。そのうちDPP-4阻害薬は日本で最も多く処方されており、血糖依存性にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖コントロールを改善するとされています。「DPP-4阻害薬のグルカゴン分泌抑制」というのは教科書にも記載されていますが、実際それを証明した報告はほとんどありません。なぜならば、グルカゴン遺伝子由来のペプチドは、インスリンが分泌されている膵臓からのみでなく、腸管からも分泌されており、抗体を用いたアッセイでは交差反応するため、これまで正確に測定することが困難であったからです。そうした問題点を解決するため、液体クロマトグラフィ/高分解能質量分析装置による新しいグルカゴン測定法(LC-HRMS)が開発されました。
今回、当医局の中川朋子先生は、LC-HRMSを用いてグルカゴン測定を行い、DPP-4阻害薬のひとつであるアナグリプチンのグルカゴン分泌に対する影響を検討しました。当科外来に通院している患者さんにご協力頂きました。その結果、罹病期間が短く内因性インスリン分泌能が維持されている2型糖尿病患者では、DPP-4阻害薬はグルカゴン分泌をほとんど抑制しないという予想に反する結果でした。アナグリプチンは食後の血糖依存性のインスリン初期分泌の上昇が血糖改善に寄与することが改めて示唆されました。また、DPP-4阻害薬には胃排出遅延効果がないこともわかりました。本研究の成果は、DIABETES RESEACH AND CLINICAL PRACTICE 2019年12月号に発表しました。https://www.diabetesresearchclinicalpractice.com/article/S0168-8227(19)30504-2/fulltext
今回の検討で、DPP-4阻害薬の血糖コントロール改善の作用機序をより詳細に明らかにすることができました。
中川先生は学位授与式において優秀演題賞を受賞しました。
当科では本研究だけでなく、当科外来・入院患者さんにご協力をいただき、臨床研究を行っています。今後も患者さんに還元できる臨床研究を継続し、高度医療・地域医療に貢献していきたいと思います。

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