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掲載日:2020年1月28日

難治性の三叉神経痛や片側顔面痙攣に対する最新手術法

三叉神経痛や片側顔面痙攣は、たわんだ脳血管が頭の奥深くにある三叉神経ないし顔面神経の根元を圧迫することで生じ、神経血管圧迫症候群と呼ばれます。三叉神経痛は顔面痛の一つで、しばしば歯科や耳鼻科の病気と間違われることがあります。その特徴は、顔面片側に起き、1秒から30秒くらいの持続で、針で刺すような、焼けつくような電撃痛です。会話、食事、洗顔、歯磨きなど顔面の運動で誘発されます。一方片側顔面痙攣は顔の半分の筋肉が収縮する病気で、痙攣が目の周囲から始まり口元までおよびます。さらにひどくなると首元の筋肉も痙攣します。
まず薬物治療やボトックス毒素治療を試み、治療効果が乏しい場合や副作用で服薬できない場合、患者さんが若く根治治療を希望される場合に神経血管減圧術を行います。神経を圧迫している血管を移動させれば95%以上の患者さんの症状が消失または改善します。
従来の神経血管減圧術ではテフロン綿や糊を用いる方法が主流でしたが、圧迫血管が太い場合は十分に減圧できず、少なからず非治癒例や再発がありました。そこで聖マリアンナ医科大学の脳外科では10年かけてゴアテックスのスリング(紐)を用いる画期的な方法を確立し、難治例の治療に次々に成功しています。また通常の細い圧迫血管の手術においても術中電気生理モニタリングを駆使して目覚ましい治療成績を上げています。永らく顔面痙攣のため社会生活が制約された患者さんや、ひどい顔面痛で食事もままならなかった患者さんが、その苦痛から解放され我々医療者と喜びを分かち合っています。三叉神経痛や顔面痙攣でお悩みの方や治療に難渋している先生方は是非脳外科に相談頂ければと思います。当科では2020年7月4日に日本脳神経モニタリング学会、2021年1月21日に日本脳神経減圧学会を主催し、この分野の学術的発展と治療技術の普及に貢献する予定です。

脳神経外科01

図1:左顔面の三叉神経痛と顔面痙攣の両方を5年間患っていた患者さんのCT血管撮影像
3本の脳血管(AICA前下小脳動脈、BA 脳底動脈、VA 椎骨動脈)が三叉神経(上の〇)と顔面神経(下の〇)を圧迫していた

脳神経外科01

図2:術後のCT血管撮影像 左椎骨動脈(VA)と前下小脳動脈(AICA)を計3本のスリングで移動した
脳底動脈(BA)も二次的に移動して脳神経への圧迫が解除された