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掲載日:2019年9月20日

低Na血症は尿路結石症の発症リスクを上昇させる

低Na血症は、日常臨床診療において、最も頻繁に見受けられる電解質異常です。しかしながら、その病態は決して単純ではなく、多岐にわたる要素が絡み合っており、複雑です。私は、そのような低Na血症が及ぼす全身への影響について、関心を持っていました。そのような中で、当科教授の柴垣有吾先生のお力添えの元、とても幸運な事に、低Na血症と骨粗鬆症との関連を見出し、また米国における低Na血症ガイドラインの筆頭著者でもあるGeorgetown大学内分泌・代謝科のVerbalis教授の元で、研鑽を積む機会を得ました。そこでは純粋に、「何か面白いことをしよう!」という気持ちの中で、「低Na血症-骨粗鬆症-尿路結石症」の連関に関して、取り組みました。

腎臓高血圧内科01

尿路結石症は、骨粗鬆症性骨折の潜在的なリスク因子として報告されており、過去の研究では、低骨密度の有病率が尿路結石症患者でより高いことが示されています。低Na血症も同様に、骨粗鬆症や骨折のリスク増加との関連が報告されていますが、尿路結石症との関係に関しては明らかではありませんでした。そこで、低Na血症とCa結石の関係を評価するために、電子診療情報を使用し、340万件を超える患者記録を用いて、症例対照研究を実施しました。どのような結果が出るかは全く見当もつかなかったのですが、最終的に、「慢性持続性低Na血症がCa結石症に関する、有意かつ臨床的に重要なリスク因子である」ことを導くことができました。過去に報告された低Na血症誘発性骨粗鬆症の動物モデルを用いた研究やSIADH患者に関する臨床研究などを踏まえると、尿中Ca排泄の増加が低Na血症とCa結石の潜在的な共通因子である可能性があると考えています。
この結果がでた際、ニヒルなVerbalis教授が見せた、”にやっ”とした表情を、今でも忘れることができません。もちろんそこから論文化に至るまではまた別物であり、かなりの苦労と時間を要しましたが、良き思い出であり、そして本学の後輩の皆と一緒に仕事をするにあたり、とても貴重な経験になっています。また、想像すらしていなかったのですが、日本尿路結石症学会第29回学術集会において、臨床研究部門で受賞することができました。共同研究者や同僚の皆さんに心から感謝するとともに、わずかばかりではありますが恩返しができた事に、ちょっとだけですがホッとしています。

腎臓高血圧内科02

 

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科