聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 診断治療法開発創薬部門の唐澤 里江 准教授(Rie Karasawa MD, PhD)が主導する、小児の希少難治性自己免疫疾患「若年性皮膚筋炎(JDM: Juvenile Dermatomyositis)」の血管障害(vasculopathy)に関する研究の中間報告が、このたび米国のCure JM財団の公式ウェブサイトにて特集・公開されました。

本研究は、2024年12月に唐澤准教授が同財団より採択された2年間の国際的大型研究助成(研究課題名:Proteomic analysis of vascular endothelial proteins associated with muscle-specific autoantibodies in juvenile dermatomyositis)に基づくものであり、当院発のJDMに関する研究成果が、世界に向けて広く発信されています。
研究成果の概要・要点
  • 1. 筋炎特異的自己抗体 (MSAs: myositis-specific autoantibodies)と血管内皮タンパク質の発現プロファイル:
    MSAが検出されなかった小児では、MSAが検出された小児と比べ血管内皮タンパク質の発現パターンが著しく異なっていました。このことは、それらの小児が生物学的に異なるJDMのグループに属している可能性を示唆しています。
  • 2. MSAサブタイプに関連するパスウェイ解析:
    同定された血管内皮タンパク質のパスウェイ解析で、抗MDA5抗体および抗NXP2抗体陽性例ではI型インターフェロン(type I interferon)経路の顕著な活性化が示唆された一方、抗TIF1-γ抗体陽性例では異なるパターンが示され、免疫応答の別の構成要素である補体系(complement system)の活性化が認められました。
  • 3. 【重要な発見】治療後も血管内皮細胞ではインターフェロン活性が持続している可能性:
    抗MDA5抗体陽性の患児において、治療により血液中のインターフェロン関連タンパク質が減少しているにもかかわらず、血管内皮細胞では治療後もインターフェロン活性の徴候が持続していました。このことは、標準的な血液検査で炎症の改善が認められる場合であっても血管への影響は持続している可能性があること、さらに治療を行っても一部の患者で疾患活動性が持続する理由を説明する一助となる可能性もあります。

米国Cure JM財団 公式ウェブサイトでの掲載について

Cure JM財団は、小児の若年性筋炎(JM)の克服を目指す世界屈指の非営利研究支援団体です。今回の助成研究特集記事「Cure JM-Funded Research Explores Why JDM Affects Children Differently」では、若年性皮膚筋炎における表現型多様性の解明につながることが期待される興味深い研究として、唐澤准教授らの研究成果が取り上げられています。

★ 臨床的意義:なぜこの発見が重要なのか 本研究の結果は、若年性皮膚筋炎において画一的な治療ではなく筋炎特異的自己抗体のサブタイプごとに治療法を最適化する必要がある可能性を示唆しています。特に抗MDA5陽性症例では、血管内皮細胞が治療の標的となる可能性や、インターフェロンシグナル伝達を阻害するJAK阻害薬がこの患者群に特に有効である可能性が示唆されました。本研究における筋炎特異的自己抗体のサブタイプからのアプローチが、将来的に個別化医療や新規標的治療につながることが期待されます。

今後の展開

現在、研究チームは治療前に採取された検体の分析を進めており、それらを今回の治療中に採取された検体から得られた結果と比較する予定です。これにより、治療に伴う経時的なタンパク質の発現パターンの変化についての理解が深まり、若年性皮膚筋炎における新規バイオマーカーの発見や、より個別化された治療法の開発につながる可能性があります。

【本件に関するお問い合わせ先】

聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 診断治療法開発創薬部門
准教授 唐澤 里江(Rie Karasawa MD, PhD)
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1