大学院概要

附属研究施設

 大学院附属研究施設は、大学院の高度化、活性化、及び実質化を目標とし、先端科学技術や学際分野の発展にも十分対応し、国際的な評価に耐え得る研究環境の整備のため設立されました。
 本施設にはアイソトープ研究施設、実験動物飼育管理研究施設、電子顕微鏡研究施設、先端医学研究施設の4施設があり、さらに先端医学研究施設の中には分子生物学部門、培養研究部門、プロテオミクス研究部門、再生医学研究部門の4部門があります。難病治療研究センター4階にアイソトープ研究施設、医学部本館6階と難病治療研究センター4階に実験動物飼育管理研究施設、難病治療研究センター棟地下1階に先端医学研究施設、医学部本館1階に電子顕微鏡研究施設、が配置されています。
これらの研究施設には共同で利用できる大型研究設備や各種研究用機器が設置され、基礎及び臨床講座並びに大学院の教育・研究に、さらに学生の実験実習等に幅広く利用されています。独自の教育研究活動を行うとともに利用時間の調整を図り、設備・機器の保守点検、環境整備、教育訓練、各種情報の提供等を行っています。

(1)アイソトープ研究施設(Institute of Radioisotope Research)

 本施設は、放射性同位元素を利用して医学の教育及び基礎的研究を行うための研究施設です。放射性同位元素及び放射性同位元素で標識された化合物は、それぞれ生体内において、非放射性の同位元素や化合物と同じ挙動を示します。
 したがって、放射線を測定することによって、試験管内の反応を追跡することができるばかりでなく、いろいろな物質の生体内における移動や代謝を研究することができます。放射線は微弱であっても鋭敏に検出することができるので、医学研究に放射性同位元素の利用は欠くことのできないものとなっています。
 この研究施設の各種の実験室、放射性同位元素の貯蔵庫、放射性廃棄物の保管廃棄設備、汚染検査室などには、研究に必要な各種機器、実験装置、放射線測定装置、放射性廃棄物処理装置などが設置されています。遺伝子の研究でも放射性同位元素を利用するため、本施設のなかにP2レベル遺伝子組換え実験室が設置されています。遺伝子研究のための種々の機器も設置されています。
 放射性同位元素の利用にあたっては、目的が医学の研究であっても法律によって厳しく規制されており、また、遺伝子組換え実験に関する規制も法制化されました。本施設には、施設内の放射線量を測定するモニターばかりでなく、一般環境へ放射性物質が漏出しないようチェックするためのモニターなど、警報装置付きの機器が多数設置されています。遺伝子組換え実験についても、バイオハザード対策が充分にとられています。研究者に対しては定期的な健康診断が実施されるほか、放射線被曝管理や放射性同位元素の安全取扱い及び遺伝子組換え実験に関する教育訓練も行われています。
 本施設を利用して、本学の基礎、臨床各講座の研究者が毎年多数の業績を挙げており、大学院学生ほか多数の若い研究者たちも続々学位論文を発表しています。

(2)実験動物飼育管理研究施設(Institute for Animal Experimentation)

 聖マリアンナ医科大学大学院実験動物飼育管理研究施設は、昭和47年7月に中央実験動物飼育管理研究施設として開設されました。平成5年4月に組織変更にともない大学院施設となり、名称を大学院実験動物飼育管理研究施設(以下大学院実験動物施設)に改めました。平成19年4月より「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(日本学術会議)」に基づき「聖マリアンナ医科大学動物実験規程」が制定され、本学における適切な動物実験の適正な実施のための体制が整えられました。平成22年に本学難病治療研究センターの動物施設が本施設に統合されました。
 大学本館の動物施設は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギおよびイヌの飼育に対応しており、また難病治療研究センターの動物施設は、マウス、ラット、ハムスター、モルモットの飼育に対応しています。両施設ともに遺伝子組換え動物の飼育に対応しています。
 医学研究者は動物実験の必要性、有用性を認識した上で動物実験を計画、実施し、その際には動物愛護(動物福祉)の精神に沿い、動物実験の国際原則である3つのR(Reduction:使用数の削減、Refinement:苦痛の軽減、Replacement:代替手段の検討)を考慮して適正な動物実験を実施することが求められています。本学研究者が適正な動物実験を実施できるように毎年複数回の教育訓練が行われています。また、毎年5月に開催される実験動物感謝祭には、医学部2年生全員と動物実験を行う多数の教職員が参加しています。
 現在、遺伝子組換え実験の増加など実験の高度化が進んでおり、これらに対応し、また本学の研究活動を側面から支えていきたいと考えています。また疾患モデル動物の開発など動物施設独自の研究を前進させていきたいと考えています。

(3)電子顕微鏡研究施設(Institute of Ultrastructural Morphology)

 本研究施設は、医学部本館1階に設置された共同利用研究施設です。主要な機器は、細胞内部構造を観察するための80万倍分解能0.2nmの能力を有するデジタル型透過型電子顕微鏡と、細胞表面構造観察用の80万倍分解能1.0 nmの能力を持つ走査型電子顕微鏡が設置されています。周辺機器として、ウルトラミクロトーム、電顕プロセッサー、真空蒸着装置、凍結乾燥装置などがあります。
 利用者は、「電子顕微鏡研究施設利用手引き」に準じた利用手続きをすると施設使用ができます。各利用者の電顕技術の向上と機器利用について便宜を図るため、試料作製や機器操作の講習会を開催しています。さらに医学生物学電子顕微鏡技術学会などの情報提供、ならびに技術相談や共同研究等も行っています。
 今後、形態学分野における超微形態技術は高度化し、新技術の研究開発と細胞生物学への活用がますます期待されています。

(4)先端医学研究施設(Institute of Advanced Medical Science)

 先端医学研究施設は、大型研究機器の共同利用を促進させ学内研究水準の更なる向上を担い新たに設置された研究施設です。本施設は以下に説明する4部門に分かれていますが、各々が独立した縦割りの部門ではなく、互いが連携して研究の質の向上につながるべく協力体制が取られています。この特徴を生かし、相互の得意分野の融合が可能になり新たな研究テーマの企画、これ迄の研究成果の更なる発展を可能とし、大学院学生の学位論文を含め多くの業績を報告しています。今後も、設備の更新と拡充、研究者の育成を継続的に行い、より高度な研究成果と一層の飛躍が期待されています。

1)分子生物学部門(Department of Medical Molecular Biology)

 本部門には、DNAシーケンサー、PCR装置、次世代DNAシーケンサー、BIACORE、遠心機など、分子生物学研究を遂行するための機器が揃っています。また、P2レベル遺伝子組換え実験室が設置されており、対応する遺伝子組換え実験が可能です。遺伝子やタンパク質の構造と機能の解析や、疾病の診断・治療・予防のための新規方法の開発など、幅広い研究目的に利用されています。

2)培養研究部門(Department of Applied Cell Medicine)

 本部門は、細胞培養を中心に細胞機能解析などがより良い環境で行えるように必要な機材と各種様々な測定機器を有しています。基本となる細胞培養に関しては各々の実験目的に応じて動物細胞、ヒト細胞、樹立細胞研究が行えるように3台のクリーンベンチを設置し、7台の培養器が常時稼働しています。
 また、遺伝子組換え実験に対応できるように安全キャビネットを設け、P2実験室としています。
 細胞を用いた遺伝子導入や遺伝子破壊、蛍光分子イメージング等によって、細胞内での目的分子の機能と役割を解析するなど基礎実験から臨床応用研究にまで幅広く利用することが出来きます。

3)プロテオミクス研究部門(Department of Proteomics)

 ポストゲノム時代における疾患解析の標的である蛋白質の解析を行う部門です。
 臨床検体および培養細胞中の蛋白質群の質的・量的変化を網羅的に捉え、変化する蛋白質の機能を検証、病態における分子生物学的機序を理解することを目的としています。各疾患の診断や病型・治療予測に関わるバイオマーカ―を検出します。有用なバイオマーカ―は病因・病態に関与する可能性が高いため、その機能解析も行います。
また各疾患の診断や病型・治療予測に関わるバイオマーカ―を検出します。有用なバイオマーカ―は病因・病態に関与する可能性が高いため、その機能解析も行います。
 基本的な操作の流れは、検体中の蛋白質を2次元電気泳動で分離後、マルチプル・イメージ・アナライザーを用いて疾患特異的に発現・消失または修飾を受けている蛋白質を検出します。検出した蛋白質の断片の質量を質量分析器(マススペクトロメーター)により決定し、蛋白質データバンクを用いて当該蛋白質を同定します。同定された蛋白質の病態における機能を、生化学的手法と共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞の形態学的手法にて解析します。バイオマーカー候補の蛋白質については評価コホートを用いて有用性を検証し、病態への関与を上記機能解析により検討します。
 以上の方法により、未知の病因・病態、バイオマーカ―を含めた診断法、治療法を発見し、確立していくことができる研究分野です。

4)再生医学研究部門(Department of Regenerative Medicine)

 本部門では、既に臨床応用がされている再生医療技術を軸に、新規再生医療技術の開発と臨床研究を中心とした様々な検討を行っています。近年ES細胞、iPS細胞のみならず、成熟した細胞に刺激を与える事で幹細胞に脱分化できる技術が発見されるなど、多くの知見が認められますが、臨床応用に至る迄には相当程度の時間が必要です。
 一方で成熟組織や臓器にも多分化能を有する幹細胞の存在も確認され、これら細胞を用いた臨床応用が現実的な再生医療技術として期待されています。本部門では既にこの空白を埋める様な現実的な再生医療技術についてかねてより研究を重ねており、その結果既に700例を超える広範囲皮膚欠損患者に培養表皮移植による皮膚再生を成功させたばかりでなく、本部門で確立した多血小板血漿を用いた組織再生技術は、厚生労働省が当大学病院を唯一の治療施設として承認しています。最近では、この多血小板血漿を用いた口腔外科領域の骨再生、整形外科領域の関節障害への臨床研究が開始されるなど、新たな広がりを見せています。
 このように、上皮系及び間葉系の体性幹細胞を用いた血管再生、臓器機能再生研究など現実的技術の研究開発のみならず、ES細胞、iPS細胞を用いた中枢神経再生技術の確立など、将来を見据えた研究も精力的に行われており、再生技術のシームレスな患者提供を前提とし、マイルストーンを明確にした研究が執り行われている事が本部門の大きな特徴です。