患者の皆さまへ

子宮鏡・腹腔鏡による手術について

内視鏡下手術について~子宮鏡・腹腔鏡による手術~

   内視鏡は、当初は検査・診断に用いられていましたが、現在では、優れた手術療法-内視鏡下手術として急速に普及しています。

 産婦人科の内視鏡下手術には、腹腔鏡下手術子宮鏡下手術があります。
 

 


1.腹腔鏡下手術

  腹腔鏡は、臍からお腹の中(腹腔)にド-ム状の空間を作るための炭酸ガスの注入(気腹法)と内視鏡の挿入を行い、腹腔内を観察して検査・診断(腹腔内出血の診断-子宮外妊娠・卵巣出血、腹痛の精密検査、不妊症の原因究明-卵管通過性など)する内視鏡です。 
 腹腔鏡下手術は、この内視鏡下に、お腹に2~4か所の小さな切開(3~30mm)をおいて、腹腔内の画像をテレビモニターで観察しながら、専用の手術器具を使って、さまざまな操作(切開、切除、吸引、焼灼、止血、縫合など)を行います。従来の開腹手術に比べて、創が小さく・手術後の痛みが少ないため身体への負担が少ない、入院期間が短く・腹腔内がくっつく(癒着する)可能性が低い、手術後の日常生活の質を向上できる、また、手術方法や周辺機器の進歩と共に患者さんにとって非常に優しい手術方法であることなどが広く理解され、急速に普及しました。

1.腹腔鏡下手術を行う病気
1) 良性卵巣嚢腫
2)  子宮内膜症
3)   子宮筋腫
4)   不妊症
5)   子宮外妊娠
6)   卵巣出血
7)   卵巣卵管周囲癒着など
 
婦人科良性疾患の多くが腹腔鏡下手術の適応となります。妊娠を希望される方の卵巣嚢腫、子宮内膜症、子宮筋腫には手術後の妊娠率の向上を目指して積極的に腹腔鏡下手術を行っています。しかしながら、腹腔鏡下手術が無理な場合や適切でないと判断する場合には開腹手術を行います。現在、当科では婦人科悪性腫瘍は対象にしていません。
 
2.手術についてのQ and A(質問-回答形式)
2-1)入院は必要でしょうか?
 入院が必要な手術です。当院では通常は手術前日に入院していただき、手術後は2~6日で退院となります。
2-2)麻酔はするのでしょうか?
 麻酔は、1.痛みのコントロール、2.体の動きの制限、3.気腹法で行う腹腔鏡のために、全身麻酔で行います。
2-3)保険は?
 入院と手術は健康保険が適用されます。
2-4)腹腔鏡下手術のメリットは何ですか?
 従来の開腹手術と比べメリットは、切開(キズ)が小さいので、美容的で、手術後の痛みも少ないため、身体への負担が軽減でき、入院期間も短く(早期の退院)でき、社会復帰も早くできます。手術後は腹腔内(特に妊娠に大切な卵巣や卵管の周囲)がくっつく(癒着)可能性が低いために手術後に不妊症になることは少なく、また、腸閉塞も少ないために日常生活の質を向上できます。手術方法や周辺機器が進歩したために患者さんにとても優しい手術方法です。
2-5)腹腔鏡下手術の問題点は何ですか?
 腹腔鏡下手術は開腹手術に比べ手術時間がややかかります。開腹手術と同様に僅かですが感染、腹壁ヘルニア、腸閉塞などの可能性があります。
 予期できない出血(血管損傷)、癒着がひどい場合、悪性腫瘍が見つかった場合や腸管・膀胱・尿管などが傷ついた(臓器損傷)場合には輸血をする可能性や開腹手術に移行する可能性があります(開腹する可能性は約300例に1例、輸血は500例に1例です)。
炭酸ガスの注入(気腹法)によって、みぞおち、脇腹、肩先に痛みが伴う場合がありますが、自然に消失します。稀には、皮下気腫、気胸、ガス塞栓、深部静脈血栓症に伴う肺塞栓などの場合もあります。
2-6)退院後の過ごし方は?
 退院後は、1~2週間の自宅安静が必要です。外来での診察は、退院1~2週間後と1~2月後に行います。退院1~2週間後には、通常の生活となります。


2.子宮鏡下手術

   子宮鏡は不正出血、過多月経の症状がある場合や子宮腔内病変(粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形、子宮体がんなど)の診断を行うための検査です。子宮腔内病変は不妊・不育(習慣流産)の原因としても関与している疾患です。予約が必要で、検査時間は10~20分程度、麻酔は使用しません。 
 子宮鏡下手術は子宮の中に内視鏡を入れて、子宮内にできている筋腫やポリ―プを切除する方法です。手術後多くの不妊症の方が、妊娠に至っています。

1.子宮鏡下手術を行う病気

1) 粘膜下筋腫

2) 子宮内膜ポリープ

3) 中隔子宮

4) 子宮腔内癒着症

 

2.手術についてのQ and A(質問ー回答形式)

2-1)入院は必要でしょうか?

 入院が必要な手術です。当院では通常は手術前日に入院していただき、手術後は1~3日で退院となります。

2-2)麻酔はするのでしょうか?

 麻酔は、1..痛みのコントロール、2..体の動きの制限のために全身麻酔を行います。

2-3)保険は?

 入院と手術は健康保険が適用されます。

2-4)子宮鏡下手術のメリットは何ですか?

 手術後の痛みはほとんどありません。入院期間が短く、早い社会復帰が可能です。開腹手術ではないため腹腔内の環境は維持されます。妊娠率の向上を認めます。病変が大きい場合にも何回かに分割して手術を行うことが可能です。

2-5)子宮鏡下手術の問題点は何ですか?

 開腹手術と同様に僅かですが感染などの可能性があります。
子宮穿孔などの場合には腹腔鏡や開腹手術に移行する可能性、予期できない出血(血管損傷)には輸血をする能性があります。

2-6)退院後の過ごし方は?

 退院後は、1~4日間は自宅安静が必要です。外来での診察は、退院1~2週
間後と1~2月後に再度の子宮鏡を行います。