本教室について

ご挨拶

第 24 回日本発達腎研究会

今回初めて小児外科から本研究会を担当させていただくことになりました。 私は18年前に羊が人口より多く住んでいるニュジーランドで医療をする機会を 与えられ、当時の Wellington 病院は CT, MRI 等のハイテク医療機器は日本の 病院と比較すれば必要最低限しかありませんでした。しかし、そこでは患者に 優しい質の高い医療がおこなわれていました。特に周産期医療においては、胎 児超音波診断の精度は高く、妊娠早期から胎児の異常を診断し、その後流産、 死産になった場合でも胎児病理学専門の医師が解剖をおこなって結果をフィー ドバックしていました。このようなことから胎児診断された水腎症患者の長期 予後を勉強する機会に恵まれ、Wellington 病院では胎児診断された水腎症患児 の多くは自然に改善する臨床経過を見てきました。しかし、その中の一部の患 者は胎児期から腎機能を失い,羊水過小から生存がかなわない胎児もいました。 帰国後は大学間で 18 年間にわたり国際共同研究をおこない、羊を用いた尿路閉 塞モデルを作成し、膀胱—羊水腔シャントをおこない,治療のタイミングや効果 を研究してまいりました。この研究が腎の発達を勉強するきっかけにつながり、 10 数年前から本研究会に参加させていただき、現在に至っています。
 胎児治療の世界は米国の小児外科医 Harrison 教授が、はじめは子宮を切開し 胎児を一時的に娩出して行う横隔膜ヘルニア修復術から始まり,仙尾部奇形腫 切除術、胎児水腫を合併した嚢胞性肺疾患の切除術、患者の QOL を改善する目 的で脊髄髄膜瘤の修復術、後部尿道弁のシャント術など、色々な疾患におこな われました。しかし、まだまだ発展途上にあります。小児外科医では治せない 治療を今回の特別講演では「腎臓再生研究の現状と課題 —本当に透析患者にと どくのか—」のテーマで東京慈恵会医科大学の横尾隆先生に講演をお願いしてあ ります。多くの演題を集めて実りのある研究会にできればと思っています。是 非皆様のご参加をお待ちしております。

第 24 回日本発達腎研究会 会長:北川博昭 (聖マリアンナ医科大学 小児外科 教授)