教育・研修

文:救命救急センター医師・米国内科専門医 北野夕佳

当センターでは、研修医教育およびスタッフの相互教育として下記を行っています。

①日々のベッドサイド教育

救急外来症例およびICU/HCU入院症例を、指導医+後期研修医+初期研修医のチームで担当し、症例を実際に対応しつつベッドサイドティーチングを行っており、非常に好評です。目の前の症例に悩みつつあるときに一般論を教えることで、初期・後期研修医とも急速に成長してくれていることを実感しています。この当救命センターでの日々のベッドサイド5分間ティーチングを雑誌Hospitalist (MEDSi出版) にも連載中です。ぜひ一読ください。連載内容は当センターでの日々のティーチングのごく一部です。

また、得意分野の異なるスタッフ医師間でも症例に即して日々質問しあうことにより、スタッフ医師の底上げにもなっています。後期研修医層にとっても、教える対象(初期研修医)がいることで、自らの知識の定着させる好循環ができています(Teaching is learning)。

尚、5分間ティーチングのワークショップも定期的に行っているので、ファシリテーターとして参加することで、さらに自分自身も成長できます。

②毎日の全体回診・世界標準の診療

一日に一回、その日の勤務医全員で、救命救命センター(ICU/HCU)入院症例の申し送り兼回診を行っています。自分の担当症例を初期or 後期研修医がプレゼンテーションをすることで、継続は力なりでプレゼンテーション能力が着実についてゆきます。また回診をすることで自分のチーム以外の症例の経過もフォローすることができ、数多くの症例を自分の経験症例として成長できます。後期研修医にとっては、当直時間帯には救命救急センター入院症例すべてを管轄する必要があるため、必然的に回診時に症例を能動的に把握しようとしますので、結果としての自らの成長につながります。この通常業務の中で必然的に成長してゆけることが当センターで働く大きな利点であると私は思っています。

また検査・治療方針はPocket Medicine, Sanford, Up to Date, 各種ガイドラインを日々参照し、毎週火曜日のジャーナルクラブもその方針決定に組み込んでゆく形で世界標準の診療を行っています。

③毎朝の放射線・救命救急センター合同カンファレンス

病院の通常診療日(月~金および隔週土)には、毎朝8時30分から放射線科・救命救急センターの合同カンファレンスを行っています。前日の救急外来対応症例および入院中の症例の画像を、放射線科に読影してもらい、臨床上の疑問点をディスカッションすることにより、通常業務の中で成長してゆくことができます。

④週一回の多施設合同ジャーナルクラブ

毎週火曜日に、多施設合同で救急・集中治療領域のジャーナルクラブを行っています。RCTなど、臨床家として知っておくべきジャーナルがまず厳選され、それを担当者が順に割り振られてプレゼンテーションをしています。当センターと、聖マリアンナ本院救急医学、多摩病院、東京ベイ浦安市川医療センターをつなぐネット会議形式で行っており、最新のエビデンスに基づいた診療を行う基礎としています。ジャーナルクラブも、適切な指導のもとで数をこなせば見るべき項目が身についてゆきます。最終的には自分で読んで解釈できるようになることが目標です。

⑤豊富な症例

診療実績と重複しますが、重症症例を中心とした地域の中核となる救命救急センター・集中治療室として機能しており、医師として成長するために必要な症例は十分にあります。また、専門各科もアクティブなため、複合疾患症例が多い特徴があり、いわゆるジェネラリストとしての能力を要求されます。そのことで複数のプロブレムを持つ症例に対して、優先度をきめてアセスメントしプランを立てる能力が身につけられます。救急医療には全国共通ですが、当センターも医師、特に若手医師が不足していますので、医師としての成長に必要な症例を十分に経験できます。

また、RRS(rapid response system=院内急変対応システム)も導入しており、院内急変は救命救急センター医師へ直接コールがありわれわれが走って行って主治医とともに対応しています。

脳死判定施設としても積極的に活動しており、脳死下臓器提供も実際に行われています。

⑥豊富な手技症例

気管内挿管・人工呼吸器管理、中心静脈カテーテル挿入、動脈ライン挿入、チェストドレーン挿入、腹水・胸水・腰椎・関節穿刺、創処置・縫合、気管切開、外科的気道確保、ブラッドアクセス挿入・CHDF、Piccoモニター、腹腔内圧測定など基本的な手技は一通り十分経験できます。感染症診療にも力を入れておりグラム染色の指導も受けられます。循環器専門医(副センター長 吉田徹医師)が当センター専属で勤務しており、平均して月に1回定期的にレクチャーを行っているので、希望すれば心エコーも習得できます。

⑦層の厚いスタッフ医師・各種標準化コースのインストラクターの在籍

スタッフ紹介にあるように、指導医それぞれが得意分野・指導医資格をもち、標準化コースのインストラクターとして活躍しています。そのことで、日々の診療での疑問点をすみやかに確認しつつ診療を進めてゆくことができ、研修医教育・スタッフの相互教育として非常に有効となっています。同時に、希望のある若手医師には、インストラクターになってゆくサポートも可能です。センター長の桝井医師はBLS、ACLSのファカルティーも務めております。

また、POCUS(Point-of-care Ultrasound)のインストラクターも在籍しており、機会を見つけて指導を行っているので、日常診療で必要なエコー技術の習得も可能です。

⑧複数の医療機関での研修・勤務可能

当センター以外にも、希望者には、関連施設である聖マリアンナ医科大学本院 救命救急センターや多摩病院での勤務・短期研修も可能です。東京ベイ浦安市川医療センターとも関連施設であり、短期研修も相談により調整可能です(藤谷茂樹医師は聖マリアンナ医科大学救急医学教授であり、平均週に1日西部病院へも指導に来ています)。外勤として急患センターへも定期的に医師を派遣していますので、1~2次救急の症例も平行して多数経験したい希望者には調整可能です。

⑨臨床留学希望者にはサポート可能

米国内科レジデンシー修了者が勤務しており、米国でのレジデンシーをめざす若手医師に対しては、英語でのプレゼンテーション指導・英語でのディスカッションも可能です。月に1日(基本的に第4土曜日午後2時から)、Dr. Joel Branch(湘南鎌倉総合病院内科スーパーバイザー)を招いて英語のみでの症例検討会(アメリカのモーニングレポートにあたるもの)やフィジカルラウンドを行っています。また、年に2度ほどDr. Gerald Steinを招いてより深いPBL(problem based learning)セッションも行っており、希望にてプレゼンテーターをしてもらう事が可能です。2014年度は当院で勤務していた楳川紗理医師が、ハワイ大学内科レジデンシーに一度目のトライで見事マッチングしました。

⑩症例検討会・レクチャー

人工呼吸器・感染症などのレクチャーも若竹医師を中心に定期的に行われています。

感染症専門医からの定期的なレクチャーにより、初療の段階からグラム染色の方法、評価の仕方、及び適切な抗菌薬の選択方法について直接学ぶことが可能です。

また、英語のみでの症例検討会も北野を中心に月に1回行っています(英語能力を問題にしたくないので、通訳ありです。医療的内容にさえついてこられれば英語力は気にしなくていいです)。

更に、後期研修医が中心となり、毎週金曜日の朝7時頃から、初期研修医を対象としたレクチャー(通称「朝カンファ」)も行っております。他にも業務の空いた時間でショートレクチャー/勉強会を行っており、常に機会を見つけて指導を行うことで、指導を行う側にとっても、良い成長の場であると実感しております(Teaching is Learning)。

病院全体としてのCPCも平均年2回行われています。ほかにも初期・後期研修医のローテーションの最後に症例報告形式にまとめて症例検討会を行っています。

⑪救急科専門医指定施設・集中治療専門医研修認定施設

救急科専門医指定施設(救急指導医1名、救急専門医3名)、集中治療専門医研修認定施設(集中治療専門医2名)であり、救急専門医および集中治療専門医に申請可能です。

(2018年7月現在)

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