診療実績

文:救命救急センター医師・米国内科専門医 北野夕佳

診療実績概要

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院は総病床数518床の地域の中核を担う急性期病院として機能しています。その中で、当救命救急センターは主に2~3次救急を対象としており、かかりつけ症例の1次救急も状況により対応しています。救命救急センター対応症例は6,212件/年、うち救急搬送症例は3,666件/年、救命救急センターからの入院は3,189件/年と入院症例が5割強であり、重症症例を中心に対応していることがわかります。(数値は2021年度症例数)

また当センターはの特色としては、救急外来対応のみならず、ICUへ入院する必要のある重症症例の集中治療管理も救命救急センターが主治医として対応していることがあげられます。実は国内の医療施設において、救急外来・集中治療をどちらもバランスよく診療できる施設は意外に少ないのが現状です。また当センターではICUに隣接したHCUも救命救急センターとして管轄しており、症例によっては回復期もHCUで引き続き主治医として退院調整まで行っており、医療の連続性も得られます。この3領域 (救急・集中治療・病棟総合医) を、異なるバックグラウンドの医師が協力・相互教育しつつカバーすることにより、各医師の更なる成長につながることを実感しています。この診療形態=常に医師として吸収すべきことがある状態が、当センターで勤務することの最大の特徴であり、精神的報酬のひとつであると私自身実感しています。

①救急医として

2次~3次救急対応の救命救急センター

当センターは救命救急センターとしての認定を受けており、横浜市西部地区の救急医療の中核として機能しています。前述のように、救命救急センター対応症例は6,212件/年、うち救急搬送症例は3,666件/年、救命救急センターからの入院は3,189件/年と救急搬送症例および入院症例が5割強であり、重症症例を中心に対応していることがわかります。当院かかりつけの1次救急も可能な範囲で対応し、診療の連続性があるように務めています。

外因疾患・内因疾患両方に対応する幅広い守備範囲

上記年間6,212症例の救急外来対応症例のうちわけは、内因性疾患・外因性疾患ともに幅広い症例に対応しています。

ある1週間の症例リスト

当センターのアクティビティーを理解するうえで、実例を見てもらうことが最も助けになると考えます。下記は、平均的なある1週間に当救命救急センターで対応した症例を無作為に時系列で列挙したものです。臓器別専門科だけでは対応できない複合疾患症例も多く、総合内科能力を身につけたい方には、症例は充分にあります。

救急外来・ある1週間の無作為症例リスト(小児科・産婦人科が直接対応した症例は除く)

  • 痙攣
  • 急性虫垂炎
  • 胃腸炎
  • 犬咬傷
  • 解離性脳動脈瘤
  • 上気道炎
  • 急性心不全
  • めまい・中枢性疑い
  • CPA (糖尿病・虚血性心疾患・慢性腎機能障害の既往)
  • うっ血性心不全
  • 肺炎
  • 慢性アルコール中毒・低Mg血症・心房細動・COPD
  • 急性心不全・慢性心房細動
  • CPA
  • 下部消化管出血 (維持透析、慢性関節リウマチ、糖尿病の既往)
  • 気管支炎
  • 誤嚥性肺炎
  • 不安定狭心症
  • 発作性上室頻拍
  • 貧血・胃Ca術後
  • 急性虫垂炎
  • 尿路感染症
  • 急性心不全
  • CPA蘇生後
  • 頭部外傷(外傷性くも膜下出血、外傷性急性硬膜下血腫、頭蓋骨骨折)
  • 急性心不全
  • 肺炎
  • 慢性硬膜下血腫
  • 腰背部痛(前立腺Ca、骨転移)
  • 下血・憩室出血疑い
  • 発熱・インフルエンザ
  • 喉頭浮腫・急性喉頭蓋炎疑い
  • 急性膵炎
  • 尿路感染症
  • CPA・縊頚
  • 右頭部挫創、右第2、5指挫創
  • 逆流性食道炎・陳旧性脳梗塞
  • CPA
  • 高エネルギー外傷・外傷CPA
  • 血管迷走神経反射
  • サルコイドーシス、気管支炎
  • 胃腸炎
  • 転倒・上口唇裂創・右手背剥離創・上門歯動揺・中等度大動脈弁狭窄症
  • 左橈骨遠位端骨折、左正中神経麻痺疑い
  • 上気道炎・糖尿病
  • 交通外傷・右脛骨近位端骨折
  • 気管支喘息発作
  • 高度房室ブロック
  • 肺Ca・脳出血疑い
  • CPA・縊頚
  • 回盲部出血疑い
  • 感染性胃腸炎
  • 発作性上室性頻拍 (糖尿病、狭心症、慢性腎機能障害の既往)
  • 転落外傷・頭部割創・右肘擦過傷、右側胸部打撲
  • CPA蘇生後
  • CPA
  • 急性期脳梗塞
  • 尿閉 (神経因性膀胱・慢性炎症性脱髄性多発神経炎・大腸Ca術後)
  • 狭心症疑い
  • 心室頻拍・意識消失・転倒下顎裂創
  • CPA
  • 急性虫垂炎
  • CPA
  • 頭部・顔面外傷
  • くも膜下出血

②集中治療医として

セミクローズドICU10床、集中治療専門医2名、総合内科専門医3名、循環器内科専門医1名 (重複あり)

当センターは、セミクローズドICU10床を有し、常にICU入院症例を管理しています。敗血症性ショック、多臓器不全、重症心不全、ARDSを含む重症呼吸不全、多発外傷などの症例を、救命救急センターが主治医として管理しています。多臓器にわたるプロブレムを有する症例を、上記専門医を有するスタッフを含めて日々の回診でディスカッション・アセスメントしてマネジメントしています。

③病棟総合医(ホスピタリスト)として

当センターはICU10床に隣接して20床のHCUを有し、ICU管理から回復した症例をHCUでも連続性をもって主治医として病棟管理しています。臓器別専門科に引き継げる症例は引き継いでいただいていますが、どの専門科にも引き継ぎにくい複合疾患症例などは、当センターが主治医として退院調整まで行っています。複合疾患を優先度を付けてアセスメントして方針を決めてゆく病棟総合医(米国でのホスピタリストにあたります)としての仕事は、ジェネラリストとしての力量を要します。退院調整は、かかりつけ近医との連絡、家族状況の把握、病状を合わせてソーシャルワーカー・ホームケアーナースと共に家族面談を行い在宅で必要な支援を決めてゆくなど、患者を一人の人間として生活も含めて対応するために総合医として不可欠なソーシャル調整能力も非常に身につきます。

ある1週間のICU/HCU入院症例リスト

上記救急外来同様、実例から当センターのアクティビティーが最も伝わると考え、ある一週間のICU/HCU入院症例を下記に列挙します。

ICU/HCU入院・ある1週間の無作為症例リスト

  • 高エネルギー交通外傷・頚部擦過傷・腹部擦過傷
  • 心筋梗塞
  • 低血糖発作
  • 好中球減少性発熱
  • 転倒・意識消失発作疑い・右前腕部挫創
  • 呼吸困難・間質性肺炎
  • 脱水・せん妄・認知症
  • 腰椎圧迫骨折・病的骨折疑い・卵巣Ca/直腸転移、水腎症
  • 急性心筋梗塞
  • 左大腿骨頚部骨折・左橈骨遠位端骨折
  • 肺Ca脳転移
  • 高エネルギー交通外傷・顔面骨骨折・外傷性くも膜下出血・右大腿挫創
  • 特発性間質性肺炎急性増悪
  • アルコール性肝硬変・食道静脈瘤破裂
  • 癒着性イレウス
  • 肝性昏睡
  • 意識レベル低下・尿路感染症・低Na血症(認知症、甲状腺機能低下症の既往)
  • 敗血症
  • 慢性心不全急性増悪・心房細動
  • 腰部脊柱管狭窄症・胸腰椎圧迫骨折
  • CPA・縊頚
  • 左大腿骨転子部骨折(慢性腎不全・維持透析)
  • ギラン・バレー症候群疑い
  • イレウス
  • 急性薬物中毒
  • 左慢性硬膜下血腫
  • 腹痛・S状結腸Ca術後
  • うっ血性心不全(完全房室ブロック・ペースメーカー埋め込み後、陳旧性心筋梗塞の既往)
  • CPA・窒息
  • 誤嚥性肺炎、肺Ca、食道Ca
  • 失神・脱力発作、発作性上室性頻拍
  • 胃Ca
  • 腸重積
  • 肺炎(慢性腎機能障害の既往)
  • 高エネルギー交通外傷・外傷性くも膜下出血・右肺挫傷
  • 慢性腎不全急性増悪・肺水腫、糖尿病
  • 下血・憩室出血疑い
  • 左慢性硬膜下血腫
  • めまい・中枢性めまい疑い
  • 慢性腎不全・尿毒症
  • 敗血症
  • 心筋梗塞
  • 細菌性肺炎(アミロイドーシスの既往)
  • 頭蓋咽頭腫術後・尿崩症
  • 頻脈発作
  • 虫垂炎
  • 慢性心不全急性増悪

(2020年7月現在)

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