ここでは当施設ご利用に際しての注意事項や 予防規定をご紹介しております。 予防規定をご覧になりたい方はこちらへ。 |
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アイソトープ実験室利用の手引き:放射性同位元素の安全取扱い
(1)はじめに
◆放射性同位元素(ラジオアイソトープ、RI)やその標識化合物質の取扱は、法令によって規制され、特別 な施設内(管理区域)のみ使用が許可されています。
◆本学で使用できるRIの種類(核種)とその量 は、本学のRI使用施設の規模 (貯蔵能力・排気能力・排水能力など)と法律に基づき算出されたもので、科学技術庁長官から本学に交付された、放射性同位 元素使用許可証に記載されているものです。従って、これらの範囲でしか使用できず、これら以外の核種も、またこれらの使用量 を超えて使用することもできません。
◆大学院・アイソトープ研究施設(第一管理区域)および難病治療研究センター・RI研究施設(第二管理区域)を利用する方は、登録が必要です。
◆放射線業務従事者(RIを用いて実験をする研究者など)には、初めて管理区域に立ち入る前(取扱い前)およびその後の、定期的な教育訓練の受講と健康診断の受診が法律的に定められています。
◆RIの使用に先だって、必ず、この手引きを読んでください。なお、学内規定の詳細については、『聖マリアンナ医科大学放射線障害予防規定』を読んでください。
(2)一般的な注意事項
i) | 研究施設の利用を希望する方は、利用に先立ち、放射線業務従事者としての登録が必要です。 | |
ii) | RIの注文は提出された購入申し込み書を審査のうえ、管理室スタッフが行います。個人では購入できません。 | |
iii) | RI研究施設内では、放射線取扱主任者および管理室スタッフの指示に従ってください。 | |
iv) | RIを研究施設以外に持ち出すことはかたく禁止いたします。 | |
v) | RIは定められたRI貯蔵室の貯蔵庫に保管してください。 | |
vi) | 実験にともなう廃棄物は、所定の方法で分別廃棄してください。 | |
vii) | RI研究施設を利用するごとに、RIの使用量、廃棄量、保管量など必要事項を必ず、記録してください。 | |
viii) | 汚染(自分自身が汚染したとき、床にこぼしたときなど)、機器の破損、故障、その他事故が生じたときには、直ちに対処し、必ず、管理室スタッフまで連絡してください。 | |
ix) | RI研究施設内の掲示を熟読してください。 |
(3)登録手続
放射線業務従事者の登録申請書に必要事項を記入し、医学部本館6階、アイソトープ研究施設へ提出してください。登録は随時受け付けています。登録申請した方には、教育訓練、健康診断の通 知を行います。規定の教育訓練の受講と健康診断の受診の後、RI使用が可能となり、管理区域における入退出時に使用する、IDカードをお渡しします。
(4)教育訓練
放射線業務従事者は、『放射性同位元素の安全取扱い』『放射線の人体に及ぼす影響』『関係法規』『放射線障害予防規定』の4項目につき、規定の時間の教育訓練を受けることが、法により定められており、これに従って、教育訓練プログラムが作られています。
◆新規登録者のための教育訓練(Aコース)は、年2回、6月と12月に行います。
◆継続登録者のための教育訓練(Rコース)は、年1回、2月に行います。
◆新規登録者であっても、他の機関でRIの使用経験があり、かつ、健康診断の記録を含めた前歴証明書が提出できる方は、新規登録者のための教育訓練の一部の受講が免除されます。詳しくは管理室へお問い合わせください。
◆外国からの留学生など、やむを得ない場合のみ、臨時に教育訓練を行うことがあります。詳しくは、管理室にお問い合わせください。
(5)健康診断
放射線業務従事者は、初めて管理区域に立ち入る前およびその後、定期的に、問診、血液・尿検査、皮膚、眼についての検査を受けることが、放射線障害予防法、労働安全衛生法などで定められており、これらの規定に従って、健康診断を実施しています。
◆健康診断は年4回実施します。
◆放射線業務従事者として登録した方には、事前に通知をします。
(6)アイソトープの購入
(i)アイソトープの注文
★アイソトープを購入する場合には、購入申し込み書に必要事項を記入し、 管理室へ提出してください。アイソトープ注文書は、管理室スタッフが日本アイソトープ協会にFAX送信します。
★実験計画に従い、十分な時間的余裕を見て、アイソトープの注文をしてください。入荷希望日の、少なくとも1週間以上前には注文書を提出するようにお願いします。
(ii)アイソトープが届いたら
★アイソトープが届いたら、管理室スタッフが注文者に電話で連絡した上、アイソトープはパッケージごと、貯蔵室内の貯蔵庫に運んでおきます。
★同封されたアイソトープ出荷案内書は、管理区域内の記帳台にありますので、管理番号を確認の上、使用者が保管してください。
★パッケージに記入されている管理番号、注文者の氏名、所属などを確認の上、アイソトープの入った容器を取り出し、管理番号などを記した後、貯蔵庫内の所定の場所に保管してください。
★汚染されていないパッケージなどは、必ず、アイソトープの表示を消すなどしてから、処分してください。
(7)施設使用時間
正規使用時間が定められています。また、いづれの管理区域においても、1人の放射線業務従事者の管理区域滞在時間数は、週40時間を超えてはなりません。
(i)第一管理区域(医学部6階RI研究施設)
★正規使用時間は平日平日9:00〜21:00、土曜日9:00〜12:00です。祝祭休日および正規使用時間外には使用できません。17:00以降に研究施設を利用する際には、管理室スタッフがおりませんので、機器の取扱いも含め、利用者個人で対処しなくてはなりません。
(ii)第二管理区域(難病治療研究センター4階RI研究施設)
★正規使用時間は平日9:00〜21:00、土曜日9:00〜12:00です。祝祭休日には使用できません。
★正規使用時間外に施設を使用する場合には、『時間外使用許可願』に必要事項記入のうえ、管理室へ提出してください。許可される時間外使用は、平日21:00〜翌朝9:00です。ただし、土曜日、祝祭休日の時間外使用はできません。17:00以降に研究施設を利用する際には、管理室 スタッフがおりませんので、機器の取扱いも含め、利用者個人で対処しな くてはなりません。
(8)入退室管理システム
◆管理区域へ出入りする時はカードキーを使用して入り口の扉を開けて下さい。第一管理区域はIDカードをカードリーダーに数秒接触させることによって、第二管理区域はカードリーダーに差し込むことによって、開錠されます。第一、第二管理区域ともに、定められた利用時間以外は、カードキーによる開錠はできません。いつでも、手動による開錠はできますので、退室のみ可能ですが、自動施錠後、再入室はできませんので十分注意してください。
◆入退室時には、ビデオモニターが作動し、入退室時間とともに、入り口の映像が録画されます。
(9)RIの使用と保管
(i)RI貯蔵室への出入り
★RIの貯蔵室は、暗証番号打ち込み式のデジタルロックで、終日鍵がかかっています。9:00〜17:00の間は、暗証番号を入力により開錠して貯蔵室に出入りしてください。RIの出し入れはこの時間帯に限ります。
使用後のRIは速やかに貯蔵室に戻し、実験室に置かないようにしてください。
★17:00以後は、デジタルロックでは開錠できません。従って、RIの出し入れはできません。すなわち、17:00以降に、RI貯蔵室から、RIの原液バイアルを取り出し、実験を始めることはできません。
(ii)使用核種とその量
管理区域ごとに、核種によって、一日最大使用量 と年間使用数量が定められています。実験計画を立てるときの参考にしてください。
核種 | 一日最大使用量 | 年間使用数量 |
3H(トリチウム、水素-3) | 18.5 MBq (500 μCi) | 3700 MBq (100 mCi) |
125I(ヨウ素-125) | 1.85 MBq (50 μCi) | 370 MBq (10 mCi) |
14C(炭素-14) | 3.7 MBq (100 μCi) | 1110 MBq (30 mCi) |
32P(リン-32) | 7.4 MBq (200 μCi) | 1110 MBq (30 mCi) |
35S(硫黄-35) | 3.7 MBq (100 μCi) | 370 MBq (10 mCi) |
45Ca(カルシウム-45) | 3.7 MBq (100 μCi) | 185 MBq (5 mCi) |
51Cr(クロム-51) | 3.7 MBq (100 μCi) | 185 MBq (5 mCi) |
核種 | 一日最大使用量 | 年間使用数量 |
3H(トリチウム、水素-3) | 74.0 MBq (2 mCi) | 3700 MBq (100 mCi) |
125I(ヨウ素-125) | 14.8 MBq (400 μCi) | 1110 MBq (30 mCi) |
14C(炭素-14) | 37.0 MBq (1 mCi) | 1110 MBq (30 mCi) |
32P(リン-32) | 37.0 MBq (1 mCi) | 1850 MBq (50 mCi) |
35S(硫黄-35) | 37.0 MBq (1 mCi) | 1110 MBq (30 mCi) |
45Ca(カルシウム-45) | 37.0 MBq (1 mCi) | 370 MBq (10 mCi) |
51Cr(クロム-51) | 11.1 MBq (300 μCi) | 555 MBq (15 mCi) |
(10)RI廃棄物の処理
◆廃棄物は分別して廃棄してください。
(i) | 可燃物: | ろ紙、ティッシュペーパーなど |
(ii) | 難燃物: | プラスチックチューブ、ポリバイアル、ラテックス手袋など |
(iii) | 不燃物: | ガラスバイアル、ガラス器具、塩化ビニール手袋、シリコンチューブなど |
(iv) | 無機液体: | 実験廃液など |
◆放射性有機廃液(キシレンなどを含むシンチレーター)は、施設で焼却廃棄を行わなければなりません。できるだけ有機廃液を出さないように工夫をお願いいたします。
◆分別などで不明な点があれば、管理室までお問い合わせください。
(11)機器利用について
◆予約が必要な機器があります。機器ごとに所定の予約表(カレンダー)に氏名、所属、使用予定日時などを記入してください。使用後は、備え付けのノートに、記帳してください。
◆予約表(カレンダー)がない機器については、とくに予約は必要ありませんが、使用後は、備え付けのノートに記帳してください。
◆故障など、お気づきの点がありましたら、管理室スタッフまで連絡してください。
(12)証明書作成
本学以外の各種放射線取扱施設利用に際し、必要な場合は、放射線業務従事者として登録されており、法令に定められた必要な教育訓練および健康診断を実施している、あるいはいたことなどを記載した証明書を作成します。詳しくは、管理室までお問い合わせください。
(13)RI研究施設利用者の義務
放射線障害を防止するため、次の事項は厳守してください。
1:実験前
1) | 作業衣(黄衣)、スリッパ(黄色)などは、RI施設専用のものを使用。 |
2) | フィルムバッジなどの個人被爆線量計を所定の位置に付ける。 |
3) | RI研究施設内では、禁食、禁煙。 |
2:実験中
1) | 防護の3原則を守る。 | |||
距離:なるべく遠くに | ||||
時間:なるべく短く | ||||
遮蔽:間に放射線をさえぎるものを置く。 | ||||
2) | 実験台の上が汚染されていないことをサーベイモニターで確認し、ポリエチレンろ紙を敷く。 | |||
3) | 手に傷があるときにはRIの使用は避ける。 | |||
4) | ゴム手袋やポリエチレン製手袋を着用する。 | |||
5) | 手袋を着けたままで、測定機器、電源スイッチ、水道の蛇口、引き出しの取っ手、ドアノブ、受話器をつかまない。必要なときは、ペーパータオルを補助用具として用いるか、手袋をはずす。 | |||
6) | 強いベータ線を出すRI(32P)を使用するときにはアクリル製衝立、強いガンマ線を出すRI(125I)を使用するときには鉛ブロックなど、核種に応じて適切に遮蔽する。 | |||
7) | RIが飛散するおそれのある場合には、フード内で行う。 | |||
8) | 液体状のRIはバットの中にポリエチレンろ紙を敷いて取り扱う。 | |||
9) | ピペットは口で吸わない。安全ピペッターやオートピペッターを使う。 |
3:実験後
1) | RIは指定の貯蔵室(貯蔵庫)に保管する。絶対に机上などに放置しない。 |
2) | RI廃棄物は指定場所に区別を明確にして廃棄する。 |
3) | 使用済みの器具、容器類は、ただちに洗浄する。 |
4) | 使用した実験機器・器具、実験台、床の表面の汚染を検査する。 |
5) | 汚染などの事故の場合は、汚染範囲に目印をつける。除染が困難なときには、直ちに、管理室スタッフに連絡する。特に、測定機器は汚染しないように十分注意する。 |
6) | 所定の記録書にRIの使用・廃棄・保管などの量を含め、必要事項を記入する。 |
4:退出のとき
1) | ハンド・フット・クロス・モニターおよびサーベイモニターで、手や衣服の汚染を検査し、必要があれば、除染する。 |
2) | 退出時は必ず、手を洗う。 |
5:危険・事故時の措置
1) | 火災・地震などで緊急の事態を発見したときは、直ちに、災害の防止に努めるとともに、管理室スタッフ、放射線取扱主任者などに連絡し、その指示に従う。 |
2) | 放射線障害を受けた人を発見した場合には、直ちに、救出し、管理室スタッフおよび放射線取扱主任者などに連絡する。 |
3) | RI物質の盗取、所在不明、汚染、その他事故を発見した場合には、直ちに管理室スタッフおよび放射線取扱主任者などに連絡する。 |
6:環境への配慮
- RI研究施設に入ったRIは、放射性廃棄物にならない限り、RI研究施設外に持ち出されることはありません。この放射性廃棄物は法律に従って、日本アイソトープ協会が引き取り、保管廃棄することになっています。
- 一度RIとして入手したものは、いくら希釈されようともRIです。しかし、極めて低濃度の場合、排気中、排水中に放出してもよいことが、法的に定められています。法律に告示されている主なRIの濃度は、液体シンチレーションカウンターで検出すると、3Hで1 ml中3600 dpm、32Pで30 dmp、125Iで6 dpmで、これらは極めて低い放射能です。さらに空気中濃度にいたっては、何万倍にも濃縮しなければ検出できません。 しかし、排水・排気量全体として算出すると、その量 は無視できません。 従って、RI研究施設内の排水や空気中へのRI排出量 は最小限になるよう努力することが必要です。研究者は、環境への配慮を常に考える義務があります。
(14)おわりに
現在、医学研究に用いられている程度のRI量 は、使用法を誤らない限り、恐れる必要はありません。しかし、RIは物理的性質として崩壊する以外に、絶対に消滅せず、3Hで半減期は12.3年、14Cは半減期6000年ですから、汚染は長期間残ります。また、フィルムバッジなどの個人被爆モニターの結果 で、被爆が無くとも、内部被爆があり得ます。たとえ高濃度でも、3Hはフィルムバッジでは検出されません。核種と化合物形態によっては、内部被爆の可能性が増します。125Iは甲状腺、32Pや45Caは骨に取り込まれます。また、3Hの水やチミジン、 32Pのリン酸やdATPなどのように、化合物の種類によっても生物学的影響が異なり、放射性のDNA前駆体は、細胞死や突然変異を誘発する可能性があります。
このような観点から、RI研究施設内は、他のどの場所よりも、確実に、バックグランドが高いことを想定して利用すべきです。放射線の発ガンや遺伝的影響は、いくら微量 であっても、それに応じて確率的に起こるとされています。つまり、ある程度以下なら安全ということはありません。たとえ極めて微量 でも、RI利用者以外の人に、不安感を与えぬ ように、特に注意して取り扱う必要があります。
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