公開講座/イベント
【第49回】臨床研究セミナー
「ヒトT細胞白血病ウイルス1型の生存戦略と発がん機序」
演者:熊本大学大学院 生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学講座
安永 純一朗先生
要約:成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)はhuman T-cell leukemia virus type 1 (HTLV-1)感染により発症するCD4陽性T細胞の悪性腫瘍であり、HTLV-1プロウイルスのプラス鎖とマイナス鎖に各々コードされるTaxとHTLV-1 bZIP factor(HBZ)が発がん機序に関与している。Taxは強力なトランスアクチベーターであるが、免疫原性が高いことや細胞老化を誘導することから、持続的な発現は感染細胞に不利益を及ぼすため、一過性にTaxを発現することでATL細胞の生存と集団の維持に寄与している。一方、HBZは全てのATL症例で保存され持続的に発現しており、ATLの発がんと生存に必須の遺伝子である。HBZはタンパク質及びRNAとして異なる機能を有し、感染細胞、ATL細胞の増殖を亢進する。HTLV-1はTaxとHBZの多彩な機能及び発現パターンにより(Taxのオンオフによる遺伝子発現制御、HBZの異なる分子形態による機能)宿主遺伝子の発現を撹乱することで感染細胞のクローナル増殖を促進し、結果として発がんを惹起すると考えられる。また、最近我々は、臨床検体を用いた解析から、ATL患者ではHTLV-1に対する免疫が複数の機序にて抑制されていることを見出している。本発表では、HTLV-1が自身のウイルス遺伝子を用いて感染細胞の増殖を亢進し、一方で宿主免疫からの回避を促進する分子機構について、我々の研究内容を紹介する。
日時:2026年9月11日(金)17:00-18:00 Web配信(Zoomを使用)
臨床研究データセンター 内線5610