Q.
本学医学研究科への進学を決めた理由を教えてください。
初期研修・専門研修を経て腎臓内科医として診療するなかで、腎臓病の確定診断には腎生検という侵襲的な検査が必要であることに課題を感じ、血液・尿検査など日常診療で得られる検査結果をもっと活かして診断に近づけないかと考えるようになりました。ちょうどAI・機械学習の医療応用が広がり始めた時期であり、この疑問を研究として形にしたいと思ったことが進学のきっかけです。本学の腎臓・高血圧内科には、臨床の疑問を起点とした研究を後押ししてくださる指導体制と、診療と両立しながら研究に取り組める環境があり、医療AIという新しい領域への挑戦を歓迎していただけたことが決め手になりました。
Q.
大学院ではどのような研究に取り組み、どのようなことを学びましたか。
血液・尿検査などの日常診療データから、腎臓病の診断を機械学習で予測する研究に取り組みました。入学時点でプログラミングは未経験でしたが、学外の教育プログラムなども活用しながら解析技術を一つずつ習得し、研究計画の立案、データの前処理、モデル開発、論文執筆までを一貫して経験しました。研究成果はIgA腎症や微小変化型ネフローゼ症候群の診断予測モデルとして国際誌に論文化されました。米国腎臓学会などの国際学会で発表する機会にも恵まれ、学位論文は本学の優秀学位論文賞や前田賞に選出していただきました。何よりも、臨床で抱いた問いを検証可能な研究デザインに落とし込み、結果を論文として世に出すまでの一連の過程を学べたことが、一番の財産だと感じています。
Q.
修了後のキャリアと、現在の主な活動・仕事内容を教えてください。また、大学院での学びや経験が現在どのように活かされていますか。
修了後は本学腎臓・高血圧内科の助教として、診療と教育に携わりながら医療AI研究を続けています。大学院での研究はその後、科研費(研究活動スタート支援)による多施設共同での腎臓病診断予測モデルの開発、さらに科研費(若手研究)による深層学習を用いたIgA腎症の動的予後予測モデルの開発へと発展しました。また、最近では生成AIの医療応用に関する研究や、総説・書籍の執筆、NPO法人 日本医療AIリテラシー協会の設立・運営など、医療AIの教育と適切な活用の普及にも取り組んでいます。医局では研究統括として後輩の臨床研究の支援も担当しています。大学院で身につけた「臨床の問いを研究として形にし、その成果を再び診療や教育へ戻す」という考え方は、現在の全ての活動の土台になっています。
Q.
これから医学研究科への進学を考えている方へ、メッセージをお願いします。
大学院は研究者を目指す人だけのものではなく、臨床医にとっても、日々の診療で抱く「なぜ」を自分の手で確かめる力を得られる場です。私自身、プログラミング未経験の状態から大学院でAI研究を始めましたが、現在ではライフワークの一つになっています。研究を始める前に特別な知識や技術があるかどうかよりも、臨床現場で感じた疑問と、それを形にしたいという思いこそが大切だと実感しています。臨床と研究を往復しながら問いを育てられる環境が、本学大学院にはあります。皆さんが日々の診療で感じている疑問は、臨床研究の種の宝庫です。自分が本当に知りたいと思うことを大事にして、ぜひ第一歩を踏み出してみてください。
大学院では、腎臓内科医として日々の診療で抱いた疑問を起点に、IgA腎症の診断を血液・尿検査などの日常診療データから予測するAI研究に取り組みました。研究計画の立案、データ整備、解析、論文作成までを経験し、臨床の問いを科学的に形にする力を学びました。この研究成果は、IgA腎症診断予測モデルとして論文化できただけでなく、修了後の科研費(研究活動スタート支援)による多施設共同の腎疾患診断予測AI開発、さらに科研費(若手研究)によるIgA腎症の動的腎予後予測モデル開発へと発展しました。
大学院で得た経験と先生方のご指導は、現在も研究を進める基盤です。臨床と研究を往復しながら問いを育てられることが、本学大学院の大きな魅力だと感じています。