本教室について

研究について

診療体制 : 幅広い臨床経験から専門医へ

総合的な糖尿病診療体制を確立すべく糖尿病センターを運営し、最新の研究成果を臨床の場に生かして最適な糖尿病医療の提供を目指しています。すでに自律神経機能評価を応用したインスリンポンプ治療のアルゴリズム確立(特許取得済)、強化SMBG理論に基づく徹底的な食後管理、食品交換表に必ずしもとらわれない食事療法の指導など独自の診療を展開しています。症例は入院・外来を問わず糖尿病教育、血糖管理強化、慢性・急性合併症治療、シックデイ治療、妊娠合併症や妊娠糖尿病の管理にいたるまで豊富です。糖尿病学会専門医取得を目標に幅広い糖尿病診療の経験を積むことが可能です。
当教室は内分泌疾患の診療でも全国有数の施設です。甲状腺疾患はもとより下垂体・副腎関連疾患、性腺機能低下、副甲状腺疾患などの症例も豊富です。各種の内分泌学的な負荷試験と画像検査に加えて、他科との連携による海綿状脈洞、副腎静脈、甲状腺静脈サンプリングも積極的に施行しています。診断から治療にいたる一貫した研修により、4~5年間で内分泌学会専門医取得のための症例経験を積むことが可能です。

 

臨床研究プロジェクト : 代謝・内分泌領域の臨床研究拠点を目指す

 観察研究

<各種評価ツールを応用したサイエンス>

1) ¹H-MRSを用いた脂肪肝の定量的評価
肥満はインスリン抵抗性とメタボリックシンドロームを惹起する重要な因子ですが、肝臓に脂肪が過剰に蓄積した脂肪肝ももう一つの重要な因子と考えられています。
私たちは非侵襲的に肝細胞内の中性脂肪含量(Intra-hepatic Lipid:IHL)を測定できる、
Proton Magnetic Resonance Spectroscopy:¹H-MRSを用いて、健常人や肥満糖尿病患者における非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の病態解明と糖代謝異常との関連について研究しています。

<¹H-MRSによる肝内中性脂肪量(IHL)測定法>
1.5 TのMR機器を使用して肝S6領域に関心領域を設定し、IHLはMRS解析用ソフトLCモデルにより定量測定します。


左図. 肝臓MRI 右図. 解析用ソフトによる解析


2) 上下腹部CTを用いた体脂肪量の体積での評価
体脂肪の評価法には、CT、MRI、二重X線透過撮影法(Dual Energy X-ray Absorptiometry:DEXA),生体電気インピーダンス法などがあり、本邦では臍レベルのCTの1スライス画像における内臓脂肪面積の定量化が汎用されています。
一方、私たちは上下腹部CTの700~800スライス画像から腹部内臓脂肪総体積,腹部皮下脂肪総体積を瞬時に解析するソフトを開発し、この評価法を用いて体内の脂肪分布と生活習慣病との関わりを研究しています。

<腹部CT検査の撮像,そして脂肪体積解析法 >
肝上縁から骨盤底までの全腹腔を撮像し、脂肪体積を算出します。


左図. CT・赤は内臓脂肪、青は皮下脂肪を示す 右図. 内臓脂肪のみ抽出し、3D構成したもの



 
 


3) 頸動脈エコーを用いた動脈硬化の評価

頸動脈の動脈硬化性病変は、脳血管障害・冠動脈疾患との関連性が多くの研究で明らかにされています。最近では、血管内皮機能と血糖変動の関係について注目されており、高血糖が一時的にせよ血管内皮機能を低下させる要因の一つと考えられ、持続的な高血糖下では内皮機能低下状態が続くことにより、内皮障害が不可逆化し、永続的な動脈硬化の進展につながると推測されています。
私たちは糖尿病患者における血糖変動や体液量の変化が頸動脈の内膜・中膜複合体肥厚度やプラークにどのような影響を与えるかを研究しています。

<頸動脈超音波検査法>
超音波検査は超音波検査士の資格を有する専任検者1名で施行し評価しています。 


左図. 当科採用の超音波機器:病棟に常備 右図. 頸動脈超音波所見:プラークが認められる


4) Genome-Wide Association Study (GWAS)を用いた糖尿病および合併症の発症に関与する遺伝子の探索

GWASはゲノム全体をほぼカバーする50万個以上の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism: SNP)の遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度(対立遺伝子や遺伝子型)と、疾患や量的形質との関連を統計的に調べる研究方法です。糖尿病やその合併症(腎症、網膜症、神経障害、動脈硬化症)の発症、進展には生活習慣による環境因子と遺伝因子の両者が関与しています。
私たちは理化学研究所と共同で、糖尿病および合併症の発症、進展に関与する遺伝子異常の解明のための研究を10年以上にわたって続けています。


5) マルチ周波数体組成計(MC-190)を用いた妊娠糖尿病におけるインスリン抵抗性と筋肉量との関連性の検討


図.マルチ周波数体組成計(MC-190) 病棟に常備

人間の筋肉量を正確に測定するにはDEXA法が用いられますが、これは放射線を使用する検査であり、放射線被ばくが問題となる場合には使用できません。
TANITA社が開発したマルチ周波数体組成計のMC-190はインピーダンス法による非侵襲的な検査機器で、妊婦の体組成も測定可能なマタニティーモード機能を有しています。
私たちはこのMC-190を使用し、妊娠糖尿病患者の体脂肪量、筋肉量とインスリン抵抗性との関係を明らかにする研究を行っています。

6) 分子生物学的手法およびデータマイニングを用いた腸内細菌叢の解析による1型糖尿病発症機構解明の試み
ヒトの大腸内には多様な腸内細菌が常在し,複雑な腸内細菌叢(そう)を形成しています。細菌叢の多様性を数値として把握する手法として、多様性解析と全自動解析を組み合わせたTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP):T-RFLP法と呼ばれる手法があります。
私たちは被験者糞便中から腸内細菌の16S-DNAを抽出し、T-RFLP法により、日本人成人発症の1型および2型の糖尿病の腸内細菌叢について研究しています。
 
 

入研究

2型糖尿病は、遺伝因子と過食・肥満・運動不足・ストレスなどの環境因子が加わって発症します。慢性的な高血糖や代謝異常により様々な合併症を発症するため、糖尿病治療の目的は血糖値を正常パターンに近づけて合併症の発症・進展を予防し、長期間にわたって良好なQOLを維持することにあります。このためには薬物療法の有無に関わらず、適切な食事と運動を行うことが重要です。しかし、日本人の食事、運動療法に関するエビデンスは必ずしも多くはありません。
私たちは日常診療で役立つ、実践的な食事と運動の在り方に関する介入研究に取り組んでいます。


 <食事療法のサイエンス>

1) 科学的根拠に基づいたダイエット法の確立
世間では種々のダイエット法がブームになることがあります。しかし、そのほとんどが科学的に検証されることなく廃れています。「ダイエットに王道なし」ではありますが、より導入しやすく、より継続しやすく、より効果的な方法があると思われます。
私たちは適切な研究デザインや統計手法により、エビデンスとして耐えうる情報を発信し、特保食品の創生につながるような研究を行っています。


2) 肥満者における体脂肪特異的な減量を実現する食事理論の確立
肥満を伴う2型糖尿病例に対して、極端な低糖質+高蛋白+高脂肪の糖質制限食が注目されていますが、様々な点からこの方法は疑問視されています。
私たちは肥満例に対し、脂肪特異的な減量と筋肉量維持のためには、筋肉内グリコーゲン蓄積に影響しない軽度の糖質制限+軽度の蛋白増加(但し、脂肪は増加させない)が最適と考え、肥満者に対する最適な栄養バランスの検証を目的とする研究を行っています。


3) 糖尿病患者におけるもち米玄米の糖代謝改善効果

食事療法は糖尿病治療の基本ですが、特に主食である米の摂取は日本人を含む東アジア地域の人々にとって重要です。玄米は糖尿病の発症予防効果がありますが、特有の食感等により継続摂取が困難な場合が少なくありません。
私たちはもち米の玄米(もち米玄米)が、うるち米の玄米とは全く異なる食感で、非常に食べやすい点に注目し、血糖変動に及ぼす効果について研究を行っています。

 

<運動療法のサイエンス>

4) 自宅でできるレジスタンス運動の提案とサルコペニア予防および血糖改善効果の検討

高齢者は筋肉量と筋力が年々減少し、ADLの低下や転倒・骨折の重大なリスクとなっています。この病態はサルコペニアと呼ばれています。筋肉はインスリンの主要な標的臓器ですが、サルコペニアはインスリンの筋肉における感受性を低下させ、血糖管理にも不利に働きます。
サルコペニアの改善・予防にはレジスタンス運動が推奨されていますが、マシンを用いたジムでの筋肉トレーニング以外に、自宅で簡単に行える具体的な方法は確立されていません。
私たちは1.5~2.0 mのトレーニング用ゴムチューブを用いて自宅で行えるレジスタンス運動を開発し、当科のホームページで画像を紹介しています。
私たちはこのゴムチューブを用いた運動がサルコペニアの進行予防と血糖コントロールの改善に有用であるという仮説を立て、前向きの研究を行っています。


左図.セラバンド®:色によりゴムチューブの強度が異なる、右図.ホームページにて紹介しているレジスタンス運動



<薬物療法のサイエンス>

  糖尿病治療薬などの薬物介入試験


5) 脂肪肝を有する肥満2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬が肝内脂肪量と内臓脂肪体積におよぼす影響の検討

GLP-1には膵β細胞のインスリン分泌を促進する以外に、種々の膵外作用があります。その一つとして、肝臓に対する脂肪肝ないしはNASH(nonalcoholic steatohepatitis)の改善効果が報告されています。
私たちはこの点に着目して、肥満を伴う軽症2型糖尿病患者に対してGLP-1受容体作動薬を投与し、各種画像検査で内臓脂肪体積、肝内脂肪量、体脂肪量、除脂肪量などを測定し、多角的な評価・検討を行っています。


6) 血糖コントロール不十分な2型糖尿病症例における服薬アドヒアランスの検討
糖尿病治療薬の中には1日3回の服薬が必要な薬剤が処方されても、種々の理由により飲み忘れがあり、指示どおりの服薬が困難なために治療に難渋する場合があります。
私たちは血糖改善に関して2種類の効果を持つ配合剤を1日2回投与した場合の有用性について検討を行っています。


7) GLP-1受容体作動薬による胃排出能遅延効果の定量的評価と血糖安定化の検討
GLP-1 には中枢性食欲抑制、胃排出能遅延などの生理作用もあります。私たちは以前に13C 呼気ガス分析法を用いて、糖尿病神経障害による胃排出能遅延を定量的に評価しました。
現在はこの方法を用いて、GLP-1受容体作動薬投与による胃排出能遅延効果を定量的に評価し、血糖安定性に対する胃排泄能遅延効果の関与について検討を行っています。


    図.呼気ガス分析結果:青線はコントロール。黄線は胃排泄遅延を有した糖尿病の症例。



8) SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体 2)阻害薬の尿糖排泄閾値低下に関する定量的検討

健常人では1日あたりの尿糖排泄量は0.1g 程度にとどまります。血糖値が140~180mg/dl に上昇すると、尿中にグルコースが排泄されますが、その際の血糖値を尿糖排泄閾値と呼びます。2014年に新規糖尿病治療薬のSGLT2 阻害薬が登場しましたが、私たちは本剤が尿糖排泄閾値をどの程度までに低下させるか、低下の程度に影響する臨床因子は何かについて、連続グルコースモニタリングの機器を用いた尿糖排泄閾値の定量的評価により検討しています。
また、本剤が肝内脂肪、内臓脂肪、体筋肉、筋力にどのような影響を及ばすかについても検討を行っています。