学協会情報化連絡会議
(更新: 2004/08/27

学会事務センター破産問題

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学会事務センター破産!
【序章】●日本学会事務センターの関連会社、前社長、5,700万円着服の疑い(朝日新聞・2004.3.3.夕刊・第2社会面)

 の記事は、学会事務センター自身が、そのグループ会社の前社長により被害を被り、前社長を刑事告訴するという記事でした。被害額5,700万円は、同センターの純資産額3,750万円を上回る、とあります。学会事務センターは71年創業で、90年、発送部門を独立させて株式会社「学会ユーティリティセンター」を設立。前社長は10年ほど前、学会事務センターから同社に出向き、まもなく社長就任。8年ほど前から会社の金を使い込むようになったとか。金の使途は不明。経理上、「仮払い」で処理され、会社の税理士はこの処理を知っていた、と。一昨年暮れ、同社に派遣された事務センター職員が経理処理に疑問を抱き、昨年3月、本人が着服の事実を認めた。6月、前社長は弁償しないままで社長辞任。同社は昨年秋、5,700万円を損失計上。そうして冒頭の刑事告訴に話がつながります。
 この段階では、学会事務センターはあくまでも被害者であり、損害額が大きい(数百万とかではない)のは少し驚かされますが、学会事務を委託している諸学会には取り立てて問題視する動きはなかったように思われます。
【第1章】●学会の預かり金流用、文科省の所管財団、債務返済に5億円(朝日新聞・2004.7.4.朝刊・第1社会面)(*1)

 務状況が悪化したため、各学会からの預かり金を借金返済に流用していたと。ドヒャー、今度は桁が違うぞ〜。今年3月末で約6億円の債務超過とか。債務超過へ至る道:センターは92年に文京区内にビル建設。その後資金繰りに行き詰まり、各学会から預かった約16億円のうち約5億円をビル建設に伴う債務の返済に充てた。各学会には事情を説明していなかったと。

 ●学会預かり金流用、文部次官「残念だ」(朝日新聞・2004.7.6.朝刊・第3社会面)(*2)

 科省の事務次官が、5日の記者会見で、学会事務センターの預かり金流用問題に触れ、「不明朗な財政管理が行われていたのは極めて残念..ただちにセンターの運営が行き詰まる状況ではない。再建が適切になされるよう指導していく」と述べた、とあります。
 上記、関連会社の前社長による着服事件は、96年からです。92年ビル建設後の資金繰りの行き詰まりが何年からかは書かれておりませんが、前社長の学会ユーティリティセンターへの出向きが94年からであり、オーバラップしますね。着服額なんか吹き飛ぶ高額流用事件と言えます。
【第2章】●学会への説明会(2004.7.10土1)、7.14水2)、於:2)東大・弥生講堂)
 会事務センターによる各学会への経過説明および再建計画の提示がなされたようです(本項、出席者からの伝聞です)。第1回目(7/10)の説明会で相当激しいやり取りがあり、センター側からの再建計画は白紙撤回されたとか。各学会の会計担当者から、以下のような質問が出されましたが、返答はすっきりしなかったようです。事業運営は今後も可能なのか? 最悪の事態になった場合、預かり金は保証されるのか? 預かり金は返してもらえるのか? 取り立てが起こった場合、一部の学会だけが利益を得ることにならないか? 文科省や科学技術庁に何らかの補助をお願いすることはできないか? 銀行の有利子の借金の利率を下げる交渉をすべきだ。

 センターは、種々再建策を進め、預かり金を利用して運営をしたい意向と見られたとのことで、1週間以内に新しい再建計画を各学会に提示とのことでした。
 上記新聞記事(*1)によれば、「センターは2日、文科省に人件費の抑制や事務所の統合などのリストラ策を盛り込んだ再建計画を提示。文科省は計画の着実な実行と関係者に早期に事態を説明するように求めた。センターは近く、各学会に経緯を説明する。」とあり(*3)、上記説明会はこれに沿ったものと分かりますが、新聞記事(*1)に、「センターは『非常に不適切な経理で、学会の理解を得ることは難しいかもしれないが、職員の整理などを実行し、再建を...』」とあるように、実際学会の理解が得られず、「再建計画白紙撤回」となりました。
【第3章】●再建計画は進むとの見通し (*4)

 上記新聞記事の(*2)、あるいは前項の(*3)と、センターによる再建計画が提示され、文科省も了承し、学会への説明会開催となりました。しかし、学会側の理解は得られず、一旦白紙撤回。その後、以下のような文書(2004.7.23.付)がセンター・理事長名で各学会に送られてきました。

 それによると、預り金の保全に向けて、外部に大きな支援を求めていたところ、民間企業からの協力が得られる見通しとなり、支援企業とは最終的な調整作業に入っている、と。来週半ば頃には支援の内容が固まる運びとなり...ご報告申し上げます。但し、秘密保持契約を結びながらの折衝であるため、最終合意、調印までは企業名を明らかに出来ない状況にありますことを悪しからずご了解下さい、とのこと。
【第4章】●民事再生法の適用棄却、学会事務センター、破綻の恐れ、負債30億円(朝日新聞・2004.8.10.朝刊・第2社会面)(*5)
 転直下、破綻に。自主再建の計画を各学会に提示したが理解を得られず、民事再生の道を選択した、とあります。8/6に東京地方裁判所に、財政状況の悪化を理由に民事再生法の適用の申立をしたが、8/9に、同地方裁判所は申立を棄却し、同日、保全管理命令が発令された(保全管理命令については、8/10付、学会事務センター・理事長名による学会へのお知らせにおいて)、とあり、本新聞記事(*5)にある、「有力な支援先がなく、東京地裁は現段階では再生が順調に進む見込みがないと判断したと見られる」という点に関し、(*4)の、特に、7/23付の連絡文書での支援企業はどうなったのかが不明です。負債総額30億円というのは何でしょうか? ここで、預かり金の5億円流用、の5億円が、負債の一部を埋めたに過ぎず、とんでもない額の負債に陥っていたことが明らかとなり、さらに、民事再生法の適用が棄却されて破産となり、最悪の事態に陥ってしまいました。
【どこまで続く泥濘ぞ】●学会事務センター、預かり金16億返還困難、東京地裁が破産宣告(読売新聞・2004.8.18.朝刊・第1面)(*6)

 京地裁は17日、同財団に対し破産を宣告した。財団は同日、都内で学会側への説明会開催、預かり金約16億円の全額が返還困難であるとの見通しを明らかにした。保全管理人らの説明によると、財団の負債総額は約30億円、債務超過は約6億3,000万円。現在の預金残高は1億数千万円。持ちビルなどの不動産には銀行の抵当がついており、残務処理で資産はほとんど残らない。債権者総数は、学会や取引業者を含め1,097団体(個人を含む)。学会からの預かり金は破産法上、労働債権のように優先されない「一般債権」に当たり、保全管理人らは「返還は難しい」と述べた、ともあります。

 さて、財団の運営に関し、本記事(*6)は、次のように説明しております。各学会の会費を財団は会員から直接、財団の口座に振り込ませてプールし、事務手数料や機関誌発行などの経費を差し引く仕組みで運営。余った金は預かり金として財団が管理し、年度末に残高を学会側に通知。預かり金が数千万円に上る学会も複数あるという。

 ●学会事務センター、チェック機能なし(読売新聞・2004.8.18.朝刊・第2面)

 説記事です。「債務超過は、約10億円を借金してビルを建設した後の1991年度以降...財団は学会からの預かり金を流用しながら経営をつなぎ止めていた...この間、経営改善への努力は全く見られず、関連会社に数億円を貸し付け、焦げ付かせた。不況期に入って事業収入が伸び悩んでも、職員給与のベースアップが続けられた。こうした経営は、財団職員から昇格した常勤の理事らによって行われ...理事は約15人いるが、...大半は大学教授などが兼ねる非常勤。理事会にチェック機能はなく、放漫経営を見逃す結果になった。文科省の指導監督も不十分...財団は毎年、財務内容を記した報告書を提出しているほか、定期検査も受けており、早い時期に問題を指摘していれば、損害は抑えられたはずだ。」
 文科省所管の財団法人である。いわば国のお墨付きの財団がこのような信頼のおけない機関であったとは、驚き以外にありません。学会関係者誰もが抱く感想ではないでしょうか? 色々経理上の問題が浮上しても、「国」が何とかしてくれるのではないかと、甘い予想を抱いていた気がします。学会への支援策を種々取られている文科省の立場からすれば、「日本学会事務センター」というのは不明朗な経理で問題のある財団なので、各学会はできるだけこの財団への業務委託をしないように、との通知を出してもよかったという気がしますが、センターの対応に見え隠れする文科省の対応には、指導監督の甚だ不十分な監督省の対応しか見えません。

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