聖マリアンナ医科大学 SCHOOL GUIDEBOOK 2020
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Top runner46腫瘍センターの役割は何ですか?抗がん剤治療を外来で行える施設が増えていますね?腫瘍センターの代表的な研究にはどのようなものがありますか?が、余命を意識しながら過ごす方に、伴走するのが私たちの仕事です。 ですから薬の専門的知識だけではなく、たとえ若くても人間的に成熟していることが求められます。患者さんに私たちがどうやってアドバイスしたり、一緒に過ごしていくか考える、とても人間味のある仕事です。抗がん剤治療はどんどん進歩していますが、一方で目の前の患者さんと向きあうことは人生や死を考えるという非常に人間くさいことです。そのミックスが臨床腫瘍学、腫瘍内科の一番の面白みだと思っています。 大学病院は急性期病院としての役割がありますから、トータルケアを実践できるところはそれほど多くありません。でも本学は建学の精神にあるように、患者さんのトータルケアに対する意識が高く、臨床腫瘍学講座の立ち上げも非常にスムーズでした。とてもありがたく思っています。 がんの治療は、ひとつの診療科・ひとりの医師の判断で行うのではありません。内科、外科、放射線科などの医師および看護師、薬剤師が相談・協力して行います。そのためには、すべての職種・診療科が、がん治療について常に最新情報を共有する「キャンサーボード」、個々の患者さんに最適な治療を行うことを目指す「症例カンファレンス」などを通じて、一人ひとりの患者さんの治療方針をいろいろな意見を聞きながら決めていくことが大事です。 また、腫瘍センターでは腫瘍内科だけでなく看護師・薬剤師やがんと関わる医師たちに入っていただき、部会活動を行っています。がん患者さんは手術、抗がん剤、放射線というがんを抑える治療だけではなく、痛みや精神的なケア、ご家族のケアも大事になります。そういうところを緩和治療や連携パス、がんサロンといった部会活動で補完しています。 抗がん剤治療が進歩して、ほとんどの臓器のがんにおいては、できるだけ外来で治療するようにしています。仕事を続けたい、海外旅行に行きたい、ご家族と一緒にすごしたいなど、患者さんが希望する日常生活の中にがんの治療を入れていこうという考え方です。 そのために外来注射センターが重要な役割を果たしていますが、大学病院別館2階にある腫瘍センターを改築して、待ち時間も含めて快適に治療を受けていただける環境を整備しました。かつて入院で抗がん剤治療が行なわれてきたときと同じように、患者さんの症状を正確に把握し、少しでも楽に抗がん剤治療を受けていただけるよう、副作用などに対応しながら、安全な治療を行っています。 がん治療を進歩させるために、新しいエビデンス(科学的な証拠)の創出に力を入れています。この取り組みは大きく分けてふたつあります。 ひとつは新しい治療法を開発するために患者さんにご協力いただく治験や臨床試験です。製薬会社が開発した新薬を使い、より効果的な治療を探します。それが患者さんに新たな治療のチャンスを与えたり、新しい標準治療の開発につながります。 もうひとつは、医師の力で新しいエビデンスを出していく「医師主導治験」です。自らの臨床経験や基礎研究の中からでたアイデアの実現可能性を示す橋渡し研究や、開発早期の医師主導治験の実施を推進しています。 患者さんの数が少なく、製薬会社ではなかなか開発が進まない領域にも、医師が責任を持って新薬を開発します。そのために大学の組織や世界中の医師とのネットワークを活用しています。本学を目指す方にメッセージをお願いします。  医師という仕事はやればやるほどやりがいが出てきます。どんどん知識も深まり、経験も増えていきます。 働く医師を支えるシステムも進歩しているので、若い方は何の心配もなくこの世界に飛び込んでいただきたいと思います。私のように子どもを育てながら働いている女性の医師もたくさんいますし、イクメンの医師も心配なくこの道に進んで欲しいですね。生活基盤を守りながら新規治療のチャンスも探る医師主導治験で難治性の患者さんに光を届ける教員インタビュー

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