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日本写真印刷株式会社と分子病態情報研究講座を設置

患者病理検体と質量分析とを活用しPrecision medicineの実現を目指す

概要

 聖マリアンナ医科大学と日本写真印刷株式会社は2015年11月1日、肺がんをはじめとする各種疾患について、疾患分子病態情報を網羅的に解析し、新規診断・治療法を開発することを目的として、聖マリアンナ医科大学に「分子病態情報研究講座(Department of Translational Medicine Informatics)」(研究統括:聖マリアンナ医科大学 中村治彦教授)を設置し、本格的に研究活動を開始しました。

 

分子病態情報研究講座開設の背景と目的

 オバマ米大統領が2015年1月の一般教書演説で表明したPrecision medicine※のアイデアは、個別化医療(テーラーメード医療)にとどまらず、個別の疾患予防対策も視野に入れた広い意味での医療改革を意図したものでした。元来疾患は人種や個人(患者)ごとに異なりますが、これまでの多くの治療薬は「一人でも多くの患者をカバーする」ことを目的に開発されてきました。年間売上が1兆円を超えるような「スーパーブロックバスター」も複数品目上市されています。

 しかし一方で最近の創薬の現状は、Phase2.試験の成功率が20%を切り、臨床開発自体の成功確率が10%以下と言われるようになっています。このような状況のもと、個別化医療実現のニーズが急速に高まっています。

 本講座はその実現の一翼を担うことを目的として患者病理検体などを対象とし、質量分析計を用いた探索的タンパク発現解析を特長とし、Precision Medicineの実現を目指します。

※Precision Medicineとは、遺伝子情報、生活環境やライフスタイルにおける個々人の違いを考慮して疾患予防や治療を行うという新しい医療の考え方で、世界的にも注目されています。

 

研究講座における研究内容

 新薬の開発において、動物で効くがヒトで効果がなく開発から除外される薬剤がこれまで多くあり、効果的な新薬開発においてはPhase Iから奏功マーカーをモニターする必要があります。最初から患者病理検体などの臨床試料を用いた奏功マーカーを確立することで、これまでの種差を超えるスムースな開発が可能となります。

 そこで下記のようなアイデアでコンパニオン・バイオマーカーを探索するシステムを確立し、ヒト試料からの解析の情報を創薬現場に反映させて創薬やバイオマーカーの開発を促進することに着眼しました。この手法を軸に据えて、次の5テーマの実現に取り組みます。

1.疾患関連タンパク質群の質量分析に基づく発現解析

2.診断に有用なバイオマーカーの生物情報科学的解析

3.臨床応用可能な診断キットの開発

4.治療の標的分子の探索と生物情報科学的解析

5.新規治療法の開発

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担当者からのコメント

<聖マリアンナ医科大学・教授 中村治彦>

肺癌をはじめとする各種疾患について遺伝子、タンパクなどの分子情報を網羅的に解析することは、患者個々人に的確な診断法や治療法を選択するために不可欠な研究です。そのために患者病理検体をバイオマーカー探索に活用する手法は、従来に比べてより実際的な病態の把握に適用できると考えられます。参画する教官チームは、臨床プロテオミクスでは世界的に有名な株式会社バイオシス・テクノロジーズで実績を積んだ優秀な人材です。本講座から臨床の現場に直接役立つ手法や医薬品の開発が出来るように邁進したいと思います。

 

<日本写真印刷 上席執行役員 コーポレートR&D部門担当 岸 圭司>

日本写真印刷は、医療やヘルスケアなどの成長市場に向けて、技術開発を加速させるとともに新たなコア技術の獲得や新規市場への販路を求め、医療分野での研究開発に取り組んでいます。

本講座での共同研究を通して、当社が保有する精密加工技術を基盤とした機器やセンサーの開発および、情報加工技術を基盤としたインフォマティクスシステムの構築により創薬プロセスにおけるアンメットニーズへのソリューションの創出を目指します。

問い合わせ先

聖マリアンナ医科大学
教学部 学長室
T 044 977 8111(代) 内線3105

日本写真印刷株式会社
事業開発部 マーケティンググループ
T 075 823 5140

 

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