学協会情報化連絡会議

学会誌の姿

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翻訳論文=2次的著作物発行の積極的推進
 ある言語での原作に対し、他言語翻訳物は、二重発行物とはならず、2次的著作物として認められ、著作権法第28条で、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定されています。

 さて、学会誌を、和文誌、英文誌の2本立てで発行しているところはかなりあると思われますが、このことを利用し、翻訳論文の発行を積極的に進めようとしておられる学会があります。日本呼吸器学会は英文誌「Respirology」と和文誌「日本呼吸器学会雑誌」を発行しておりますが、この度(平成14.9.27.付)、英文誌、和文誌各々の論文の翻訳を行い、他方に掲載する旨のアナウンスを行っております。それぞれの雑誌の編集委員会が、採択決定論文について、さらに翻訳論文が適切かどうかの決定を行う、とあり、著者が論文投稿の際に、翻訳物の投稿も同時に希望できるともあります。

 このようなことを行う趣旨は以下の通りです。

「近年impact factorをもって業績を判断する傾向が圧倒的に高まり、国内誌よりも海外英文誌に投稿する意識が強まった。広く研究業績を知らしめるために英語で論文を執筆することは、医学医療の国際化の流れの中で当然のことであるが、それによって国内誌に対する論文数が減少するという、空洞化現象が現実のものとなった。
 本学会では会員の利益と更なる本誌・本学会の発展のため、最先端の研究成果を母国語で迅速に掲載する必要性が高いと判断し、本学会英文誌として指定されているRespirologyの間で、相互のsecondary publicationを提携する準備を進めてきた。」(上記日付、日本呼吸器学会雑誌編集委員会からのアナウンスより)
(文責:高井; 2003.4.26.)
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Web公開に伴う購読会員の減少・増加
 学協会誌のWeb公開に伴い、学協会誌購読のみの会員が脱会し、結果、会員が減少する、という議論があります。推測としては正しいと思われますが、実際のデータは見たことがありません。

 かなりの部分の会員は、学協会への所属の意義を、学協会誌への投稿の権利、学協会主催集会への参加の権利等に求めていると思われ、単に購読のみということから所属している個人会員はそんなに多くないと思われます。具体的なデータを得ることは難しいかも知れません。

 ここでは、図書館、機関というような団体会員が、学協会誌のWeb公開に伴い脱会する事態を想定し、それが、学会への経済的打撃となるかを考察します。

 図書館、機関のような団体会員は明らかに、購読のみの会員です。機関に常設し、所属員が自由にコピー等をとって利用します。そのため、個人会費より高い会費が設定されていることが多いと思います。個人会員の2倍から10倍位ではないでしょうか?

 ある学協会誌がWeb公開され、インターネット上で閲覧・ダウンロードできるようになった場合、機関としては、購読を止め、機関所属員が個々にその学協会誌を利用するよう求めるかも知れません。

 さて、機関が団体会員として学協会誌を常設し、所属員がコピーで利用する場合、学協会の収入は、その団体会費のみです。所属員がいくらコピー利用しても、学協会には一銭も入りません。ところが、機関が購読を止め、個々の所属員がWeb上で利用する場合、有料設定されておれば、利用する人が多ければ多いほど、学会の収入となります。利用者が多ければ、団体会費を上回る収入が得られるでしょう。

 閲覧・ダウンロードが無料で団体会員の脱会が起こると団体会費分の減収のみとなりますので、それを抑えるためには、やはり有料設定が必要かも知れません。

 一方、学会誌のWeb公開等を行うことにより、会員数の増加が図れるか、ということもしばしば議論される点です。

 利用する立場で見ると、学会誌がインターネット上で簡単に閲覧できることは便利この上なく、このことはそれだけにとどまる可能性は大いにあります。すなわち、特にこのことが会員数増加には寄与しない可能性です。

 やはり、多くの方にとって会員となる動機は、年会等での発表、学会誌への投稿の権利であり、そのようにして会員になった場合に、Web公開などで便利な点が多い、という付加的メリットの一つとして考慮されるにとどまるかも知れません。

 ただ、アメリカ昆虫学会Entomological Society of America (ESA)が行っているような、学会誌Web公開に伴って、次のような、かなり手厚い付加的メリットが会員に与えられる場合、会員数獲得あるいは会員数減少阻止の効果があるかも知れません。

・4 Journals発行。通常の冊子体購読会員より少し割高な会費で4誌すべてへのWebアクセスおよび論文ダウンロード可(会員にはID、パスワードが与えられる)。

(文責:高井;soc-inf: 2002.6.14.に加筆)
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