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聖マリアンナの先進的な医療

先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注射療法の有効性・安全性に関する臨床試験

【先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド皮下注射療法】

聖マリアンナ医科大学 小児科
■はじめに

 先天性高インスリン血症は、新生児・乳児期に重篤な低血糖症をきたす稀少難治性疾患です。この時期の重症低血糖は高頻度に重篤な神経学的後遺症を残すため、適切な血糖管理が極めて重要です。現在わが国では高濃度グルコース持続輸液とジアゾキシド内服のみが保険適用となっています。
 オクトレオチドは持効性ソマトスタチンアナログで、持続皮下注射療法によるジアゾキシド不応性先天性高インスリン血症に対する有効性が国内外より報告されており、日本小児内分泌学会の診療ガイドラインにも記載されています。しかしながら、本症は緊急の対応を要する超稀少疾患であることから現在までに系統だった臨床試験が行われず、国内外で本症を適応とした保険承認がないのが現状です。
 そこで、この臨床試験は将来の保険承認を目指すことを目的に、ジアゾキシド不応性の先天性高インスリン血症の患者さんを匿名化の上で概ね1~3か月の間隔で臨床経過を追跡し、治療の有効性・安全性を評価します。登録は保護者の同意のうえで行い、また稀少難治性疾患である本症の診療を円滑に行うため、事務局から診療のための情報提供、治療に必須である遺伝子診断や18F-DOPA PET診断の無償提供も行います。
 本臨床試験はSCORCH study (Subcutaneous Continuous Octreotide for Congenital Hyperinsulinism)と呼ばれ、日本小児内分泌学会のバックアップのもと、大阪市立総合医療センター臨床研究センターを事務局として行うものです。参加施設は全国21施設(平成27年1月13日現在)からなり、聖マリアンナ医科大学小児科は参加施設となります。本治療は2013年12月5日付で厚生労働省先進医療会議を経て、先進医療Bとして保険治療との併用が認められております。

■対象患者

 生後2週以後~1歳未満のジアゾキシド不応性先天性高インスリン血症の患者さんを対象としています。
 適格規準:下記の1.~5.をともに満たす患者さん

  1. 生後2週以後~1歳未満で持続性に低血糖を示し、血糖45 mg/dL未満の時点で血中インスリン3μU/mL以上を証明できること。
  2. 血糖60 mg/dL以上を維持するためにブドウ糖静注量(GIR)6 mg/kg/分以上が必要であること。
  3. ジアゾキシド15 mg/kg/日分3内服単独で血糖60 mg/dL以上を維持できないこと。
  4. 代諾者(保護者)から書面による同意を得られること。
  5. 本人・両親の遺伝子検査に同意が得られ、検体採取が可能であること。
    (遺伝子検査については、課題名「高インスリン性低血糖症の遺伝子解析」にて生命倫理委員会 ヒトゲノム・遺伝子解析研究部会に承認されています)
■方法

 ブドウ糖輸液によって血糖値を維持しつつ、ポータブル持続インスリン注入ポンプを用いたオクトレオチド持続皮下注射を25μg/kg/日を上限として開始します。短期血糖上昇効果を持続血糖測定器を用いて評価したのち、有効な場合には、以後の血糖維持効果を必要なブドウ糖輸液のブドウ糖静注量の減少を指標にして定期的に観察します。そして、所定の観察期間に臨床経過、検査項目、有害事象を集積し、本治療の有効性・安全性などを評価します。

■おわりに

 オクトレオチドの先天性高インスリン血症による低血糖症に対する有効性が国内外より報告されております。オクトレオチド皮下注射治療は、ジアゾキシド無効の先天性高インスリン血症に対して短期・長期治療に有用である可能性があり、患者さんによっては膵亜全摘手術による医原性糖尿病の発症を回避できる可能性があります。しかしながら、現在まで系統だった臨床試験がないため、国内外で本症を適応とした保険承認はなく、その有効性・安全性の早急な評価が求められています。本疾患の包括的医療にはかかせない薬剤ですので、保険承認獲得のため皆様のご協力を期待したいと思います。