教授挨拶

「今こそ耳鼻咽喉科・頭頸部外科医になろう!」

主任教授 小森 学

 医学部の学生、臨床研修医の先生たちは、自分がどの科を専門とするのか悩んでいると思います。情報社会としてはすでにAIをはじめとする新技術により急速に次の次元に進もうとしています。こんな時代だからこそ、自分自身が医師として楽しみ興味を持てる診療科を選択する時代だと私は考えます。

 そのような中で耳鼻咽喉科・頭頸部外科の魅力というものがどこにあるのでしょうか?一言で表現すれば“欲張り”な診療科です。「命を救う」という点に関して頭頸部がんの治療、気道管理や嚥下のスペシャリストとして関わってきます。「人間らしい生活の豊かさを改善する」という点では嗅覚、味覚、平衡覚などの感覚器疾患、「コミュニケーションを改善する」という点では聴覚、音声、言語発達など人間の生活の根幹に関わる部分に密接に関わる診療科です。また、マイナー診療科の特性として新生児から高齢者まで連続して診ることが可能であり、外科と内科の二面性を持っていますし診断から治療、リハビリまで全てを任されます。

 現在日本には医療施設に従事する医師が約32万人おりますが、そのうち耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は約1万人です。まだまだ足りません。「人がいないと忙しいのでは?」と考えるのは早計です。人がいないからこそプロフェッショナルとして自分の価値は上昇しますし、国際的にみれば耳鼻咽喉科・頭頸部外科は非常に専門性が高く人気が高い診療科になります。「手先が器用でないから…」というのは昔の考え方です。技術は一子相伝ではなく理論的に行い、共有して伝えることが肝心です。映像技術の進歩や内視鏡などのデバイス、ロボット技術などが技術力向上に貢献してくれます。

 私たち聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教室は「ここで育って良かった、ここで治療して良かった」を目指しています。耳・鼻・頭頸部という耳鼻咽喉科・頭頸部外科の基幹部分はもちろん、日本ではまだ一般的ではない小児耳鼻咽喉科領域、今まで培ってきた平衡機能領域などを得意としています。2022年現在、私は日本で最も若い耳鼻咽喉科の主任教授であり医局員は総勢38名、平均年齢は38。3歳と非常に若さに満ちあふれています。若いパワーと優しさが溢れる教室で皆さんと一緒に働くことができることを願っています。

教室の歴史

 聖マリアンナ医科大学は1971年に神奈川県川崎市北部の多摩丘陵の地に、東洋医科大学として発足しました。2年後の1973年に現在の聖マリアンナ医科大学に改称しています。耳鼻咽喉科教室初代教授として、新潟大学から故荻野洋一先生が就任されましたが、1973年より形成外科教授を兼任され、1976年4月に形成外科学教授専任となられました。そこで、同年5月に静岡赤十字病院より故竹山勇先生が2代教授として就任されました。1987年に山形大学より加藤功先生、1989年に筑波大学より大橋徹先生が講座内教授に就かれ、当教室のメインテーマである平衡・聴覚の研究環境が整いました。1995年に加藤功先生が3代教授となられました。2000年より肥塚泉先生が4代教授となられました。23年間と長期間にわたりめまい、特に前庭動眼反射の研究、めまい疾患に対するリハビリテーション法の考案、前庭系の可塑性に関する研究の他、宇宙酔いや乗り物酔いに関する研究を行ってきました。2022年より小森学が5代教授に就任しました。

 本学の建学精神は、「キリスト教的人類愛に根ざした「生命の尊厳」を基調とする医師としての使命感を自覚し、人類社会に奉仕し得る人間の育成、ならびに専門的研究の成果を人類の福祉に活かしていく医師の養成」であり病院の理念として『生命の尊厳を重んじ、病める人を癒す、愛ある医療を提供します』と掲げております。

 2022年は丁度本学発足から51年目の年にあたり、築いてきた50年の伝統を次の50年に受け継ぐべき記念する年となっております。

  • 初代 荻野洋一教授
  • 2代 竹山勇教授
  • 3代 加藤功教授
  • 4代 肥塚泉教授